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沢田太陽の2021年上半期ベスト・シングルズ Top10

どうも。

 巷を見てると上半期のベスト・アルバムを選んでいる方もいらっしゃいますね。

 僕は年間ベスト・アルバムを1年の大きなイベントにしている手前、あまりそれを事前に予想させるような上半期のアルバムのランク付けはやらない主義で、その代わりに3ヶ月に1度の「10枚のアルバム」というのをランキングづけなしで発表する形式をとっています。それは今年も変わりません。来週には4〜6月のアルバム10選の発表もします。

が!

 今年はちょっと違うやり方で上半期企画を考えました。

それは

上半期ベスト・ソングス・ランキング!

 これなら、アルバムとは必ずしも重ならないし、ぶっちゃけ、収録アルバムが別の年でもそんなに問題がない。その意味でより自由に選べて面白いなと思ったんですね。

で、ちょうどよく、脳裏に浮かんだのも10曲くらいあって。だったら、やってみようと思った次第です。

で、その10曲、ミュージック・ビデオからの写真でピックアップするとこんな感じです。

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はい。こういう感じですけど、パッとみてどのくらいおわかりになったでしょうか。

ではカウントダウンで10位から発表しましょう。

10.Solar Power/Lorde

10位は先日解禁されたばかりのLordeのニュー・シングルの「Solar Power」。これ、いわゆるストーンズの「悪魔を憐れむ歌」だったりジョージ・マイケルの「フリーダム90」とか、あの系統のアコースティックとサイケデリックとゴスペルが渾然一体とした肉感的なミニマル・グルーヴを彼女流に解釈した曲ですけど、本人いわくプライマル・スクリームの「Loaded」を下敷きにしたようですね。

 このグルーヴにコロナ禍後のポジティヴに解放されていく前向きな希望を託してるのもいいですね。アルバムは下半期重要リリースだと見てますよ。

9.Caroline/Arlo Parks

9位はアーロ・パークスの「Caroline」。

彼女も僕にとってはこの半年で外せない人ですね。R&Bと捉える人もいるし、間違いではないとは思うんですけど、だけど他に彼女のようなR&Bアーティストは誰もいない。このオーガニックな生のグルーヴなんてむしろ彼女が敬愛する後期レディオヘッドだし、やさしさと温かみのあるハイトーンのささやき声にはビリー・アイリッシュに通じるものを感じるし。そうした彼女の良さがわかりやすく端的に出たのがこの曲かな。型にはまらずに独創的な表現を期待したいですね。

8.Heat Waves/Glass Animals

8位はグラス・アニマルズの「Heat Waves」。

これ、アルバム自体は去年の夏くらいなんですけど、今年に入って、イギリスの外で大ヒット中です。オーストラリアでは1ヶ月くらい1位だった上に、もうUKロックなんて見向きもされなくなって久しかったアメリカのシングル・チャートで、なんとこれ、21位まで上がってきてるんですよ!これはもう、大健闘というかね。

 もともとイギリスのバンドの中では「R&B対応型」のイメージ、出してましたけど、この曲はそれだけじゃなく、彼らが本来持ってるメランコリックな美メロ・センスが最大限に生きた、耳にしっかり残る好チューンだと思います。これ一発に終わらず、大きく育ってほしいですけどね。

7.Heartbreak Anniversary/Giveon

7位はギヴオンの「Heartbreak Anniversary」。ここのところ、トラップやエモの画一化だったり、ラップ調の歌ものがこれも流行りで早くも使い古されつつあったりで、なんかR&B/ヒップホップにモヤモヤ感を感じていたところにこれを聞いてすごく安堵を覚えましたね。これはすごくいい曲です。

 ソウルフルな黒人ヴォーカルというのは、ブラック・エンターテイメントの最も誇るべきもののひとつなのに、なんでそれを生かそうとする人がでないのかなあ、と僕はそこがすごく不思議で残念な気がしてたんですけど、このギヴオンは声もしっかり出せる上に、オートチューンをのどに埋め込んだような、すごくモダンな歌い方もこなせて。すごく新しい形の生身のヴォーカルだと思ったんですよね。その声でトラディショナルなタイプのソウル・ラヴ・バラードを切々と歌うのがまた新鮮で。中途半端なヘタウマなラップ調じゃなく、こういう文句なしにうまい「新しい正統派」の歌がもっと聞きたいですね。

6.Telepatia/Kali Uchis

6位はカリ・ウチスの「Telepatia」。

ここ数年、全米シングル・チャートが全然楽しめなかった僕ですが、今年、「ちょっと希望、芽生えたかな」と思えたのが、まさに今回の8位から6位、「Heat Waves」「Heartbreak Anniversary」、そしてこの「Telepatia」の3曲がビルボードやSpotifyのグローバル・チャートで、ずっと30〜40位くらいでロングセラーを記録して、ついには10位台、20位台にあがってきていることですね。いずれも、全くマーケッティングとか流行りに関係ない曲なのに、音楽ファンが口コミで温めた曲がこうやってまとめてヒットするのっていいことだと思ってですね。

 この「Telepatia」はラテン・チャートから火がついた曲なんですけど、カリ・ウチス自体がラテンというよりは元々が「オルタナティヴR&B」の人なのでその感性が強く出た曲になってますね。70sのピロー・トーク系のセクシーな女性ソウル・バラードをエレクトロで浄化させ、そこにスペイン語で独自のスパイスを効かせたみたいな絶妙な巧さがあります。

5.The Angel Of 8th Avenue/Gang Of Youths

5位は、これは最近出たばかりの曲です。オーストラリアのバンド、ギャング・オブ・ユースの「The Angel Of 8th Avenue」。このバンド、まだオーストラリア以外の国では知られてませんが、もう、かの国では屈指の2017年に出したアルバムの大ヒットで最大のロックスターですね。しかも、やってること、すごくかっこいい。例えるなら、ザ・ナショナルがストロークスみたいなバンド・アンサンブルとU2みたいなアンセミックさを持ちながらスプリングスティーンの曲を歌ったみたいな、とでもいうか。久々に登場した、「正統派アリーナロック・スター」な感じですね。これは4年ぶりの新作からの先行曲なんですが、今いったまんまのイメージの曲で、本国のSpotifyでは20位台にいきなり入ってて、もうアルバムのヒット間違いない感じですね。英米メディアもとりあげはじめてるので、今回で世界的な名前になると思いますよ。魅惑の低音で歌うデヴィッド・ローペペもすごくカリスマ性あってセクシーですしね。注目しておいてください。

4.Smile/Wolf Alice

4位はウルフ・アリスの「Smile」。このバンドも、もともとカリスマ性、ありましたけど、最新作の「Blue Weekend」で孤高の存在を強め、絶対的なバンドになってますよね。

攻撃性も、神秘性も器用に備えたバンドだと思うんですけど、新作だと僕はこれですね。ハードロック的なグルーヴの上に、元来、エリー・ロウゼルがいかにも彼女らしい細くてキュートな声で、舌足らずのささやきラップをする様がゾクッとするほどセクシーです。シューゲイザーも、パンクも両方表現できたこのアルバムの中での中心的なポイントにある曲です。これは今後の彼らのライブにおいても、クライマックスの盛り上げどころでキーになる曲になっていくような気がしてます。

3.Deja Vu/Olivia Rodrigo

そして3位にオリヴィア・ロドリゴ。

オリヴィアといえば、文句なしに2021年のセンセーションだと思います。選ぶ曲としては、「Driver's License」も「good 4 U」もあったんですけど、僕はセカンド・シングルのこれですね。やっぱ、インディ・ロックファンなので(笑)。バラードで大ヒットした「Driver's〜」のあとに、彼女のいろんなインタビューで音楽の趣味知ったあとにこれが来たから、僕は彼女を信じるようになったわけで。しかも、それが彼女とたったもうひとりのソングライターだけが作った曲と聞いてなおさら安心もして。それがあって「good 4 U」みたいな振り切ったロック・アンセムがあるから、なお面白くて。でも、彼女の資質の根本探るなら、この「Deja Vu」が今後もひとつの基準になっていくんじゃないかな。その意味でもこれ、今よりも今後に意味を持っていく曲になるような気がしてます。

 あと、オリヴィアといえば、好きだった男の子と今つき合ってる女の子への笑えちゃうまでの嫉妬心がひとつの売りなんですけど、この曲では「ビリー・ジョエルのアップタウン・ガール、一緒に歌ってたりしてるけど、その曲、誰が教えたと思ってんのよ」ってとこがエイティーズに青春すごしたオジさんにはツボでした(笑)。

2.Black Hole/Griff

そして2位にグリフのこの「Black Hole」ですね。

今年、アーロも好きだし、オリヴィアも好きなんですけど、彼女たちほど目立ってはいないものの、「すごく胸をわしづかみするメロディ書けるなあ」と思うのがこの子ですね。曲の構成がとにかく良いというか、フレーズのひとつひとつがすごく立っていて展開にメリハリがあるんですよね。サビもすごく哀愁味があって綺麗なんですけど、そこを彼女自身のかすれ気味な声が、出せる精一杯のキーで少し苦しそうに歌うとこがセクシーで。すごく自分のスタイルを計算できた表現のできる子だなと思いましたね。この曲は共作ですけど、基本、ひとりで作れるスタイルなのも納得です。ファッション・センスも、自分の型にこだわった彼女にしかないもの、持ってますしね。

 すごくプロっぽい曲の作り方をする人なので、今、21歳と若いですけど、今後にむしろ伸びしろある人のような気もしてます。

そしていよいよ1位ですけど、もう、やっぱ、これですよ!

1.Zitti E Buoni/Maneskin

はい(笑)。もう、マネスキンしかないですね。

やっぱり、彗星のごとく世界の音楽シーンに登場して、この曲を歌った、たった一夜のパフォーマンスで、もうほぼ全世界の音楽リスナーをたちまち虜にしたわけですからね。今や、Spotifyのマンスリー・リスナーが2200万人だの、インスタグラムにバンドで400万人だけじゃなくメンバー4人各自のアカウントにも100万人のフォロワーがついてるだの、tik tokに200万人のフォロワーがいるだの、ツイッターで毎分、世界の誰かが話題にしてるだの、信じられない現象が起きましたからね。

 それだけじゃないですよ。この曲で話題になったあとに、英語で歌った曲がファンによって発掘されて、それが2曲、今、全世界的にヒットチャート上昇中で全英チャートのトップ10入ったりしてるわけですからね。でも、それもこれも、イタリア語で歌ったこれが先にあって、注目されたことがきっかけです。これがあったからこそ、ドアが蹴破られたのであり、それが世界の母国語が英語じゃない国でロックやってる人たちにとってどれだけ勇気を与えたか。その意味でこの曲は、マネスキンにとっての「Smells Like Teen Spirit」みたいな重要な位置付けであり続ける曲になると思うし、間違いなく2020年代を代表するロックンロール・アンセムとして聞かれ続けることになると思いますね。






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