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エモはとっくに超えた!パラモアはもはや、世界屈指の実力派バンド

どうも。

いやあ、今週1週間はこのアルバムを何度も聴きましたよ。


パラモアですよ!


 今回のアルバム、5年以上ぶりに出たんですけど、イギリスとオーストラリアで早速1位。ビルボードも予想、3位だと聞いています。

えっ?「それはエモ・リバイバルがあったからか」って?

あるのかもしれないですけど、あんまり関係ないと思います。

なぜなら

今回のこの「This Is Why」、批評家ウケが抜群なんですよ。レビュー総合サイト、Album Of The Year(AOTY)によりますと、24媒体がレビューした総合得点が85点、満点レビューも5つくらいあったんですよね。うるさ型のひとの多い一般ユーザーからも80点とかなりの高得点を受けています。

実際、もう、エモうんぬんが関係ないことは

前も紹介した、このシングル曲での変わりようでも十分わかると思うんですけどね。

この頃からえらく変わってますよね。これが今から14年前ですけど。

なにが違うって、まずギターですよね。まだエモブームの頃は、ポスト・グランジみたいな重低音の強い厚みのあるギター弾いてて、その時点でインディ・ロック聴く人たちからはちょっと距離置かれてたところがあったのは、あの頃の実感からしたら事実です。

ただ、この後、2010年代に出た3枚のアルバム、これがパラモアを劇的に変えてますね。


2013年に出た「Paramore」ってアルバム、ここからガラッと変わるんですよね。

ここで曲調がすごくいい意味で軽くなったんですよね。メイン・ギタリストとソングライターやってたひとがこのアルバムから代わるんですけど、その影響が如実に出てますね。いわゆるポップ・パンク、エモに顕著だった厚みのあるギターがかなり後退して、軽快になっていくんですよね。あと、ヘイリー・ウィリアムズのヴォーカルに力みがなくなって、高めのキーの方をやわらかく出す歌い方にシフトしていくんですよね。

それがさらに変わったのが

2017年に出た「After Laughter」、もう、これ、完全にインディ・ロックのアルバムだったんですよ。

このアルバムは、ギターの音はファンキーに薄い感じに変わって、トロピカルにファンクでヴァンパイア・ウィークエンドとか、2010年代の前半のブルックリンのインディ・シーンみたいな感じにかなり近くなったんですよね。

このあたりでインディ・ロック系のファンにもだいぶパラモアを気にするようになったひと、増えましたね。ただ、変わりすぎちゃったのがこたえたか、その前の「Paramore」が英米初登場1位だったところが、イギリス4位、アメリカ6位と下がって、ちょっと人気下がったように見えてたんですよね。

で、このあとパラモアとしての活動が止まりますが

そして2020年、時期としてはパンデミック真っ最中のタイミングでヘイリーはソロ・アルバム「Petal For Armor」を出します。

ここはもう、「After Laughter」からさらに変わって、ギターの音色は後期レディオヘッドみたいな歪みが表現されたり、あと、ネオソウルの要素なんかも入ってきたりして。ヘイリー自身の歌い方も、ささやくようなファルセット気味の歌い方が歌いだしに増えてきたりもします。

このソロもすごく評判良かったですね。僕自身の年間ベストでもこれ、その年の第10位に選んでいます。テイラー・スウィフトの「Folklore」を11位にしてまでもこちらを強く優先したのを覚えてます。

ただ、これ、ヘイリーのソロ名義といいつつ、もうしっかりパラモアの別名義だったんですよね。というのもこれ、プロデュースしたのが

テイラー・ヨーク。パラモアのギタリストです。彼が2013年の「Paramore」からサウンド面を完全にしきってますね。元々彼、パラモアに入った頃は、まだティーンだったヘイリーよりもさらに1歳若い子供で、活動ちゃんとできない時期もあったくらいなんですが、エモ・アイドルとして人気絶頂だった2010年に、それまでメインで曲書いてたギタリストのジョッシュ・ファロがバンド辞めちゃったんですね。その危機を救ったのが音楽的に急成長した彼だったわけです。

また、「After Laughter」からこのソロに至るまでのヘイリーは、本人の離婚の体験などもあって、精神的にかなりどん底だったんですよね。だから、この2枚はパーソナル的にすごく暗いアルバムだったりもするんですけど、テイラー、そこのところも彼女を助けることになり、

今や

公私共々のパートナーになっています。

 このソロがパラモアとはかなり違う方向に行ったので、どうなるかと思ったんですけど、このソロを出した時からヘイリーはきっぱりと「パラモアはやる!」と言っていました。それがいつになり、どんな音になるかなと思って気にしていたんですけど、

最高傑作になりました!


いやあ、これはもう本当に見事でした。収録曲10曲、捨て曲が全くないんですよね、これが!

これはパラモアが久々にやった熱いエモい曲なんですけど、ギターのアレンジは思い切りジョニー・グリーンウッド的。後期レディオヘッド的なフィルター通したエモなんですよね。

今回、こういう昔のファンが喜びそうな曲もあるにはあるんですけど、でも、いずれも「ヘイリーのソロ・アルバムでのアレンジを経た音」になってます。だから、その意味で面白いんですよね。それは、今の成熟した彼らが原点に返った面白さでもあり、加えて、こんなエモ、ポップパンク・アプローチは誰もやったことのない新鮮さでもあるわけですから。

 ただ、熱い曲ばかりが増えたわけでも全くなく、

After Laughterの系譜のキャッチーなダンス・パンク調の曲も目立ちますね。

でも、それだけじゃない。今回、メロウな曲も今回すばらしいんですよ。

スマッシング・パンプキンズでいう「1979」的なメロウさですね。特に「Crave」は人気曲になるんじゃないかな。これは本当に名曲です。この曲は、過去から逃げることなく、過去をしっかり受け止めて、それを未来の自分につなげていこうという、前2作を経た上でのヘイリー自身の答えになっている、その意味でもかなり重要な曲だと思います。

そして終盤のバラード2曲もいい。特にラストの「Thick Skull」のテイラーのギター・ソロが秀逸です。彼、ここ10年くらいのインディ・ロックからの、たとえばジョニー・グリーンウッドだったりヤーヤーヤーズのニック・ジナーだったり、そういう人からの吸収、すごく巧みなんですけど、メロディックなフレーズ弾かせてもかなりの腕前です。

・・という10曲なんですけどね。文句ないです。

 これですね、何がいいって、たとえばレディオヘッドだったり、アークティック・モンキーズって作品ごとの成熟ぶりが尊敬されるじゃないですか。でも、その代りに、それが求道的すぎてストイックになるがあまり、ロックンロールとしては必ずしも体が乗れる音楽でなかったりもしますよね。今回のパラモアのアルバム、そこもうまいことついてるんですよね。バンドとしての表現の成熟もありながらも、ちゃんとロックンロールとしてのわかりやすさ、肉感的な前ノリの躍動感が捨てられてない。しかも、かなり実験してるのに、アルバムそのものは36分とすごく端的。その意味で、ものすごくロックのアルバムとして理想的なんですよ!もう、すべてにおいてちょうどいい。ハードさも、気鋭の実験精神も、簡潔さも。こういうのが作れそうでなかなか作れない。そういうことがわかるひとが世には多いんでしょうね。それが、そのまま大絶賛につながっていると思います。

 もう、「過去のエモブームが」なんてことに関係なく、今のそのままの姿でパラモア、立派にシーンのトップバンドです。まだね、ネットの反応見てると、エモブームの頃の姿に彼らの最高の日を見出そうとする、ノスタルジーから抜け出せない人、結構見かけるんですけど、パラモアの三人は、そういう人たちのこともしっかり意識して、今回アルバム作ってますよ。そこもすごいんですよ、本来。そこもわかってあげてほしいし、理解できれば今後、もっと好きになれる可能性だってあるはずなのでね。

あと、ヘイリーで言えば



今のインディ・ロック・ガールズにとっての、頼れる先輩というか、姉貴分ですよ。去年のコーチェラでビリー・アイリッシュとの共演もかなり話題になりましたが、フィービー・ブリッジャーズ、アーロ・パークス、Wet Legと交遊あってですね。それこそ彼女らからしたら、憧れて育った存在ですからね。まだ、ヘイリー34歳ではあるんですけどね。同世代のテイラー・スウィフトもパラモアに一部ツアーの前座頼むのに成功して、「やっと同じステージに立てる」と喜んでもいましたね。

これが出た今となっては楽しみなのが、僕にとっては、とっても嬉しいことに3週間後のサンパウロでのライブです。もう、今の感じなら、世界のどこでも、ちゃんと目立つ形でやってほしい。日本にもフェスや単独で是非やってほしいと思うんですけどね。

この、ここ最近のライブ、映像で見てすごいかっこいいんですよね。サポート加えた7人編成でやってるんですけど、肉厚でかっこいいですね。名前触れられなかったザック・ファロのドラムもこうしてみたらかなりタイトでうまいし、そこをWパーカッション。リズムの強度がすごく強いです。ギターも3人編成。やはり、今、もっとも聴いて、見るべき存在の一つだと思いますね。

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