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これが新しいメタル体験かどうかわからないけど、ゴースト@サンパウロ公演をエンジヨイ!

どうも。

では、このライブ評、行きましょう。

はい。先日も言ったようにゴースト、彼らのライブに行ってまいりました。

 このゴーストに関して言うと、知ったのは2011年だったか13年だったかのロック・イン・リオですね。呼ばれて出ててテレビで見て、ガイコツのメイクして宗教装束に身を包んでるから「?」と思ったのが最初でした。

で、2015年に出世作となったアルバム「Meliora」を聞いた時に、この別段ハードでもないのにヌメッとした気持ち悪さが心地よいなと思って好感触を得まして、その次の2018年かな「Prequel」というアルバムが出た時に「なんかブルー・オイスター・カルトみたいなサイケデリック・ハードロックみたいだな」と思って聞いてたら、去年出た「Impera」聞いて「えっ、ボン・ジョヴィ?」と思えるほどサウンドがいい意味歌謡曲調に進化しまして、これがすごくツボだったんですよね。そんなわけで、ここ2作のアルバム、僕の年間ベスト・アルバム50に連続してエントリーするくらいには好きだったんですよね。

そこに加えて去年はtik tok経由で、2019年にシングルの形でリリースしていた「Mary On A Cross」が大ヒット。一躍知名度を上げました。

そんなことがなくても、コアなメタル人気があるブラジルです。チケットは発売初日に数時間で9000人の大型ライブハウスを即完させています。僕のは追加公演のチケットで今回のライブに参加しています。

で、僕自身、ゴースト気に入ったは良かったものの、普段メタルのライブにはいかないので「どんな客層なんだろう?どういう風に振る舞えな良いのだろう」と正直なところ迷いがなかったといえば嘘になります。何せメタルに特化したライブは、2013年のブラック・サバスのオジー・オズボーンでの復活ツアーに行って以来でしたからね。

会場となったエスパッソ・ウニメッドには開演1時間前の午後8時に着いたんですけど、長い列ができていました。見てみると、男も女も95%が黒服でした。間が悪い僕は、そこにグリーンのTシャツをきてしまって浮いています(笑)。ただ、そこで並んでいるときに気がついたんですけど、「今のメタルの客層って、こんななの?」と思ってすごくびっくりしたんですよ。なんかですね、メタルとかゴスっていうより、「ビッグバン・セオリー??」って感じだったんですよね。

ビッグバン・セオリーというのはオタクが主人公のアメリカのコメディなんですけど、すごくナード臭全開だったんですよ!黒いTシャツっこそ着てるものの、もう見た目は普通の大学生みたいな人が圧倒的に多く、3〜4人の一人は黒縁眼鏡なんですよ!しかも、体つきも痩せ型でひょろっとしてて髪型もいたって普通か、髪長い野郎いることはいたんですけどこれもオタクっぽそうな奴がマレットにしてたりとかですね。女の子も黒ドレス着てたんですけど、セクシーな子がほとんどいなくてコスプレ・ファンの女の子っぽかったんですよね。サンパウロには、コミックとかスーパーヒーロー・グッズを取り扱ったナード専用の店みたいなものがあるんですけど、そこにいそうな人たちが大集合してるような感じでしたね。

 前だったらメタルのコンサートって言ったら、前だったら強面でイキがった怖そうな奴、絶対いたんですよ。日本で言うところの神田小川町あたりウロウロしてそうな革ジャン、ジージャン着たタイプのロン毛の人。ああいう人がまだ日本にいるかどうかは僕は全く知らないんですけど、少なくともサンパウロのゴーストのライブにはいませんでした。ブラック・サバスに行った時はちょっと怖くてうるさそうな年配メタルファンって確実にいたんですけど、今回、見事にいなかった。これが「今時のメタル・ライブ」なのか、あるいはゴーストが例外、あるいはゴーストから変わるのかはわかりません。ただ、その昔みたいにラウドなロックにバッドボーイが憧れるようなことがもうないのかな、という感じですね。その意味で僕は今回、居心地は悪くなかったです。

ライブは9時に電気が消え、そこでゴーストの登場を待つばかりとなりましたが、そこからグレゴリア聖歌みたいな曲が流れます。ただこれがおわんない(笑)。これが3往復して延々と続きます。「ちょっと長すぎだろ」と思ったところで最新作「Impera」の冒頭の「Imperium」に。この曲をオーヴァーチュアにして立て続けにアルバムの流れどおりに「Kaisarion」に。ミトローフのロックオペラを彷彿とさせる雄大にしてポップなこの曲に乗りながらメンバーが登場。ライブが幕を開けます。

そこからライブは別名「エメリトゥス法王」でも知られるフロントマン、トバイアス(トビアス表記ありますが間違ってます)・フォージの独壇場です。ゴーストの場合、彼のカリスマ性というのももちろんあるのですが、同時にですね、メタルにしては異質の、演奏音量がヴォーカルに対して抑えられてるんですね。だからどんなにギターでメタル的なプレイしても妙に聴きやすいんですよね。それがゆえか、すごく彼の歌謡ショウ的な様相にどうしてもなるんですよね。そこはライブの前からそう感じていたんですけど、ライブだとそれが如実に感じられます。

続いて前作「Prequel」からの「Rats」に「Faith」。この辺の曲はソロ初期のオジー・オズボーン的なんですけど、オジーよりはやはり演奏が派手じゃなく、トバイアスの書く、60年代のベンチャーズとかシャドウズみたいな東洋音階使ういなたいギター・インスト(初期のガレージロックにこのパターン多い)みたいなメロディがすごく独特な風味を出します。そしてオジーも歌謡ショウ的なんですけど、ここにある種の後継者的姿も垣間みます。

そして最新作からの人気曲「Spillways」。思い切り全盛時のボン・ジョヴィなんですが、ピアノの刻みにゴーストの祖国スウェーデンのレジェンド、ABBAからの影響を強く感じさせもします。そして出世作「Meliora」から「Cirice 」「Absolution」と定番曲が続きます。

 MCになるとトバイアスはダミ声で客を煽ります。特にうまいヴォーカリストではなく、地声も割とそのままなんですけど、こういうタイプの人がカリスマ性と意外性ある楽曲、そしてこの日のデッカい教会のセットでもそうなんですけどコンセプト作りで自分を魅力的に見せる演出で英米トップ10アルバムを出すレベルまで人気押し上げたのは素直にすごいと思います。ただ、ブラジル人の英語でのコミュニケーションはそこまでうまくいってたとは思わなかったですが。

そして最新作からの人気曲「Call Me Little Sunshine」を間に挟んで2010年のデビューアルバム「Opus Eponymous」から「Ritual」「Con Clacve Con DIo」。「Ritual」あたりは彼らのキャリアにずっと通底する60年代ガレージ・サイケの流れを改めて強く感じさせます。

そして「Impera」からの「Watcher In The Sky」、彼らの中では不人気作の2012年のセカンド「Infestissumam」からの「Year Zero」、そして人気曲ですね、「Meliora」からのバラード、「He Is」と流れます。「He Is」での流麗なピアノ、80年代に流行ったリチャード・クレイダーマンとかジョージ・ウィンストンみたいなイージー・リスニング感があるんですけど、鍵盤の表現力の多彩さも彼らの武器ですね。

続いて「Prequel」からのインスト「Miasma」なんですけど、これ好きなんですよね。70sの、特にスティクスとかのアメリカン・プログレみたいな、ムーグ・シンセからのプログレ的演奏なんですけど、後半クライマックスでマイケル・ジャクソンの「Beat It」みたいなギターリフが入り、最後が「あんたら普段、そのメンバーいないやんけ!」のところから謎のサックス・ソロで、80sのスポ根映画みたいな熱さで終わるという(笑)。

 そして終盤のクライマックスへ。その初っ端は、やはりというか「Mary On A Cross」。tik tokで大ヒットして、うちの7歳の娘まで口ずさむ曲ですけど、当然合唱にはなりました。サビの「メリオーナー」のとこですね。ただ、ビリー・アイリッシュ、ラナ・デル・レイ、マネスキンでの狂信的なファンの大合唱、それこそ耳元で叫ばれた経験もつ身からしたら歌声、だいぶ小さかったですね。やっぱこのあたりの新興メタル、ファンダムがまだおとなしいのかな。今、ブラジルだと女性アーティストのファンがやたらホッとなんですけど、勢いで負けてる気はしましたね。

そこから「」の彼らの曲では最もハードな部類の「Mummy Dust」でつないで「Impera」のクロージング・ナンバー、壮大な「Respite On The Spitalfields」で一旦幕を閉じました。

アンコールでトバイアスが出てきて、「アンコールやりたいけど、早くユーバーでホテル帰りたいんだ。1曲でどうだ?」と聞きますが、ツアー情報で何やるか知ってる客は「3!」と煽り、トバイアスはお約束で「じゃあ2曲だ」「いや3曲やるか?」「4曲?そりゃ無理だ」と駆け引きします。

そして10年前に初めてブラジル公演行ったことを話し出し、「あの時からブラジルのファンは強くサポートしてくれている。本当にありがとう」と言ってアンコールに。

アンコール1曲めは「Kiss The Go-Goat」。「Mary On A Cross」のシングル・カップリングで60年代のオルガン系のブリティッシュ・ビートの曲みたいで僕も兼ねてからお気に入りの曲。続いて「Prequel」からの「Dance Macabre」。彼らの中で3番めに人気の曲で、その後のボン・ジョヴィ路線に先鞭つけた曲ですね。そしてラストは「Mary〜」の前まではこれが最大人気曲でした「Square Hammer」。60年代前半から半ばにもっとも使われたオルガンの名器ファーフィサ・オルガンのチープで不穏な響きに引っ張られるサイケデリックなロックンロールで大団円で終幕となりました。

 音楽性が特殊ゆえ、この日の客層を見て「これが今、そしてこれからのメタル」と言えるのかどうかはわからなかったのですが、ただ確実に以前のメタルとは違う何かを感じさせるものではありましたね。





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