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沢田太陽の2019年4月から6月のアルバム10選

どうも。

では、お待たせしました。今日はこれです!

当ブログ、3ヶ月に1度恒例のアルバム10選、これを行きたいと思います。今回対象となったのは2019年4月から6月までの3ヶ月間。この間はすごく豊作で、涙を飲んだ作品も少なくないのですが、そんな中で僕が選んだ作品はどんな感じになったでしょうか。

早速、紹介してきたいと思います。まずは、写真の小さい方のものからランダムに行きましょう。

Designer/Aldous Harding

まず最初に紹介するのがアルダス・ハーディングのこのアルバムですね。今年は、去年が女性ロッカー、シンガーソングライターの大当たり年だったこともあって、勢い今年もそれを期待されている感がありますね。その影響で、頻繁にそのテのアーティストの絶賛レビューは続いています。だけどなあ、僕に言わせてもらうと、いいんですけど、「じゃあ、去年のミツキとかジャネール・モネエ、クリスティーン&ザ・クイーンズほどアイコニックな作品はあったのか?」となると、僕はそこまですごい感じがしないんですよねえ。だから、その路線のものに今回、勢い厳しかったかもしれません。

そんな今期の女性ロッカー、SSWの中で一番気に入ったのはアルダスでしたね。理由はやっぱり、曲の骨格がスケルトンで透けて見えそうなまでにむき出しのシンプルなアレンジ、ほとんどアコースティック・ギターと生ドラムでの表現の中でしっかり曲が書けていること。曲によっては「ハンキー・ドリー」とか、あのあたりの初期ボウイの匂いもあったり。あと、彼女自身の声がか細いながらもかなりのセクシーさがあること。曲にヴァリエーションがちゃんとあって、聞き飽きしないこと。この辺りが決め手だったかな。

Legacy! Legacy!/Jamila Woods

これも素敵だったなあ。シカゴの女性R&Bアーティスト、ジャミラ・ウッズのセカンド・アルバム。このジャミラなんですが、ソランジュやSZAといった、2010年型の最新のネオ・ソウルの実践者であありますが、彼女の場合は、それをライヴ・パフォーマンスでどう発展させるかの青写真までしっかり提示してくれている感じで頼もしいです。その意味ではエリカ・バド(特に歌声)の後継者とも言えるし、生きてたらプリンスがペイズリー・パークに招待してたんじゃないかと思わせる「自分で曲作って、演奏出来てナンボ」な高いアーティストリーを感じさせます。

加えて、この人、ソングライターとして本当にいいメロディ書くんだよね。このアルバムだと「Zora」なんてアンセムになっててしかるべき曲なんですけどね。ただ、悲しいかな、このアルバム、売れてない。所属レーベルのジャグジャグワーはモーゼズ・サムニーの2017年の大名盤も売れてないんですけど、こういうオリタナティヴな優れた黒人アーティストを売るためのノウハウがもう少しほしいところですね。

IGOR/Tyler The Creator

続いては、タイラー・ザ・クリエイター。これは「評価逆転」でインしたアルバムですね。最初、というか、結構長いこと、違和感あったんですよ。「これ、すごい作品かもしれないけど、ラッパーのアルバムにしてはインスト部分長すぎだし、ラップ、あまりにもしてないだろ」と。オーラとしては、アウトキャストの最後のアルバムのアンドレのサイドに近い感じもあったんですけど、でも、あれほどすごいとも思えない。でも、「なんか気になrなあ、これ」と気にさせた時点で「そう思わせたことで、すでに勝ちなのかなあ」と思い始めて、最終的には気に入ってしまいました(笑)。

これが仮に、単なるラッパーの作品としてだったらナシだったと思います。ただ、彼の場合、自分自身がプロデュースも全曲行っているマルチ型のアーティストゆえに、「自分でイチから責任持って作ってるんだから、これは彼自身のアートとして評価すべきなんだろう」と思うようにもなって。実際、今回、圏外にしてしまったラッパーたちのアルバムよりスケールが大きいことは事実だし、タイラー自身のアルバムでも、最も溢れ出るものを感じるのも確か。ただ、「最高傑作」が出そうなのは、この先な気がしてますけどね。

Atras/Alem/O Terno

続いて、これはこのブログで何度も激賞させていただいた、ブラジルの3人組バンド、オ・テルノの、4枚目にして最高傑作ですね。年間ベストをブログでトップ50まで公表するようになって今年で3年目ですが、もう予告しておくと、ブラジルのア−ティストで始めてトップ50入りする最初のアルバムがこれになります。

このアルバムですが、久しぶりに聞いた真正面な「ペット。サウンズ・フォロワー」によるアルバムで、それだけでもセンスの良さを感じさせるんですが、このバンドの場合、それがセンスだけに終わらず、ストリングスやホーンのアレンジが細かくかつものすごく丁寧だは、歌はソウルフルで抜群にうまいは、リズムがタイトだは、すごく骨太なんですよね。この才能なら十分に世界を相手に勝負できるし、実際、そういうことに将来的になっていくと思います。当ブログ読者の皆さんにこそ是非聞いて欲しいです。

Rammstein/Rammstein

続いては、これが一番のサプライズに感じた人もいるんじゃないかな。ラムシュタインです。僕の場合、「毎年、最低1枚はメタル関係」を意識してるんですけど、これはそんな配慮をしなくても、素直にスーッと入ってきて、何度も聞きましたね。去年の今頃のゴーストと同じ効果でした。

今年の音楽界の隠れたトピックとして、このアルバムがヨーロッパの10数カ国で1位を記録して英米でもトップ10入りした、というのがあるんですけど、そこも考慮してます。やっぱ、ロックが下火の印象がある中、それは快挙なわけで。そして、これはそれに値する作品ですね。「メタルとエレクトロ」に、極端な巻き舌と「ch」のハーッを強調してに発音したドイツ語と、ここまでわかりやすく「ドイツ」をデフォルメした音楽も他にないんですけど、今回はメロディのキレがすごく良くて、全曲全て覚えやすいんですよ、11年ぶりのアルバムなんですけど、もう、ここからの曲がライブのセットリストの中心として機能できる。それだけの曲の力があるし、知らない人はここから入っていける。その意味で、2002年の「Mutter」に並ぶ傑作と言っていい気がしますよ。

Schlagenheim/Black Midi

続いても、これも非常に熱いバンドですね。ロンドンを拠点の、これがデビュー作となる若い4人組ですけど、カリスマになりそうな予感がしてます。

彼ら、そのベースやギターのカッティングの手法などから「マス・ロック」に分類する人、少なくないです。でも、もし本当にそうなら、本来、そういうのが好きじゃない僕が好きになるはずがない(笑)。彼らの場合、そうしたマス・ロック的な要素は単なる「手法」に過ぎず、根本はもっと激しい、直情的なハードコアなロックンロールにあると思ってます。ジャズでいうと、ハードバップというか、エモーションのタケをぶつけた、精神的な意味で激しい音楽。これを彼らは実践していると思います。音楽的な記号の意味じゃなく、本来の言葉の意味通りでの「プログレッシヴ」であり、「様式にはまることを否定する」という本来の意味での”ポスト”ロックだと僕はこれを聞いて思いましたね。しかもインストじゃなくて、ちゃんとヴォーカルがあって、それをやってるところも高感度大です。

・・という風に、下の小枠の6枚もすごく素敵なアルバムだと思うんですが、上の大枠の4枚、これはいずれも年間トップ10候補ですが、これはさらにいい!行きましょう。

Gold & Grey/Baroness

まず最初はバロネスのアルバム。「Gold & Grey」。これはすっごいアルバムでしたね!かねてからメタル関係のバンドとしては、ピッチフォークをはじめとしたメディアでの評価がすごく高いバンドでしたけど、この3年半ぶり5枚目のアルバムは、さらにもうひと覚醒した、グレードアップしたアルバムになっています。

これ、何がすごいかって、「対位法」なんですよね。各楽器のパートが、一聴した場合に「ん!??」と違和感抱くような、噛み合っていないと思われるような印象的なフレーズを同時に弾いてるんですよね。2本のギターのリフが同時に違うの弾いてたり、手数の多いドラムが遅れて入ったり。だからメタルファンの一部で、「このアルバム、ミックスがおかしいじゃないか」って文句言う人が結構いたんです(笑)。でも、これがちゃんと調和してて、刹那的にカッコいいハードロックをちゃんと聞かせているからすごいんですよね。でも、この路線を主体としながらも、それだけで終わってないのもこのアルバムのすごさです。合間合間に挟まるアコースティック、スロー系の曲は本当に美しくもあったり。しかも、1曲あたりのメロディの完成度が高いから、どれも代表曲になりうるクオリティでもあり。これ、ハードロックの今後の流れのゲームチェンジャーになりえそうな、そんなアルバムです。メディア露出も増えてますしね。


Father Of The Bride/Vampire Weekend

続いて、このブログですでにすごく褒めました。ヴァンパイア・ウィークエンドの6年ぶり4枚目のアルバムですね。僕、このアルバム、このバンド史上で一番好きです!やっぱり、僕の場合、「方向性」というのがハッキリ見えるタイプのバンドの方が好きなんですけど、このアルバムは彼らが「エズラ・コーニッグを絶対的な中心人物としたバンド」に移行したおかげで、サウンド的に外部の者入れたりなんでもアリになったのがいいです。トーキング・ヘッズのデヴィッド・バーン、ブラーのデーモン・アルバーン、そしてくるりの岸田繁がそうですけど、彼もこのタイプのアーティストなんだと思います。4人くらいで「セーの」でジャムって勝負するタイプのバンドとしては演奏力とかバンドの一体感が致命的にひ弱でしたからね。

そうしたターニング・ポイントに当たるアルバムって、どんなアーティストでも傑作になりやすいんですよね。やっぱり、そうなった環境が本人のソングライティング能力ををおのずと高めるし、方向性的にも冒険させるしね。エズラの場合、今回、それが音楽面だけはなく、歌詞の面でもハッキリそれが見て取れるのがいいです。子持ちになり、家族愛が生まれた私生活を反映するように、「愛」というものに強い責任感を持った前向きで、しかもユーモラスなストーリー。一人のキャラクターとして無視できない存在になりました。

Dogrel/Fontaines DC

そして、ここでフォンテーンズDCですよ!アイルランドのダブリンが生んだ、現状のロックの状況がもっと元気な状態なら、とっくに「時代の寵児」になっていておかしくない、最高の素材ですよ!

「ロックに元気がない」と言われれば言われるほど、「ならば原点に戻って」とロックンロールに回帰するのは世の常で、その流れはもう去年から出始めています。シェイム、アイドルズ、そしてこのフォンテーンズが「三羽ガラス」の扱いになってますけど、彼らが真打ですね。ストロークスとジョイ・ディヴィジョンとポーグスとラモーンズの4つを足してザ・フォール風に味付けした、20代前半の若者の感性としてはかなりマニアックな音楽性を、すべての楽器のパートで趣味の良さを確実な技量で表現する各メンバー。そして、「熱いロックンロール」を覚めたトーキング調のヴォーカルでコントロールするグリアン・チャッテンのカリスマ性。どれをとっても隙がありません。こういう時だからこそ、もっともっと盛り上げるべきバンドだと思うのですが、まあ、時が解決してくれると思います。絶対、大物になる!

UFOF/Big Thief

そしてそして、数ある、すごく充実したこの4月から6月のアルバムの中でも、やっぱり僕はこれがナンバーワンで大好きでしたね。ビッグ・シーフのアルバム「UFOF」。これ、ここでもすでに激賞してますけど、何がすごいかって、「レディオヘッドじゃないアーティストが、これまで最もレディオヘッドに接近したアルバム」だからですよ。まず、そんな高度なことが可能な時点で尊敬に値します。しかも、この人たちの場合、それが「あらゆる時期のレディオヘッド」であり、しかもそれが単なるモノマネなんかじゃなくて、あくまで「自分たちの個性」として、フォークロックをフューチャリスティック的に発展させるところにフォーカスしてやってますからね。

で、彼らの場合、そのサウンドの作り方がレディオヘッドのソレに近くて、その偶然性により、そうなってる感じがします。レディオヘッドがトム・ヨークという絶対的なシンガーソングライターが中心にいて、ジョニー・グリーンウッドを始め周囲の類稀な4人の才人たちが協力してアレンジすることでケミストリーが生まれるように、ビッグ・シーフにもエイドリアン・レンカーという絶対的な女性シンガーソングライターがまず存在し、それをバック・ミークを中心とした3人の才人たちとのケミストリーで自身の世界を生み出す。それをアメリカ人でやってて、エイドリアンのそもそものルーツであるフォークが下地にあるからレディオヘッドでは出ない乾いた土臭さがあるのもいいし、それが女性主体というのも現代的。加えて、エイドリアンの声の表現域が広く、吐息交じりのシューゲイジングな曲から、ハーDおなギター・ナンバーまで幅も多彩。突っ込む隙がほとんど無い圧倒的なアルバムですね。

他にもいいの沢山あったんで、ここにこうして紹介しておきましょう。

左上からザッといくと

Shepherd in a Sheepskin Vest Bill Callahan
No Geography/The Chemical Brothers
Zuu/Denzel Curry
Keepsake/Hatchie
A Bath Of Ecstacy/Hot Chip
Help Us Stranger/The Raconteurs
Injury Reserve/Injury Reserve
Amyl And The Sniffers/Amyl And The Sniffers
Titanic Rising/Weyes Blood
Nothing Great About Britain/Slowthai

この辺りだと、年間トップ50には十分に入ってくる可能性があります。

これでもザ・ナショナルとか、リゾとか、カーリー・レイ・ジェプセンとかケイト・ルボンとか外してしまったんだから、かなり充実した3ヶ月だったんだと思います。










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