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沢田太陽の2023年間ベストアルバム. 20~11位

どうも。

では年間ベストいきましょう。

今回は20位から11位。このような感じです!

もうパッと見ですごい女性上位な感じが濃厚ですが(笑)、20位からいきましょう。

20.Tension/Kylie Minogue

20位はカイリー・ミノーグ。今年、カイリー大復活イヤーでしたね!実に13年ぶりの全英トップ10シングルになった「Padam Padam」にグイグイ引っ張られて、世界各国で売れまくりました。僕としては2020年の前作「Disco」も年間ベストの20位台に入れてたくらいですから、このアルバムだけが特別に良かったとは思わないんですけど、やっぱりキャッチーなキラー・チューンでヒット出ると違いますよね。でも、たしかにこのアルバムでカイリー、頼もしかったのは確かなんですよ。ここ10年くらいなんかパットしないマドンナ先輩に替わってエレクトロ・クイーンしっかり務めてくれて。そんなカイリーのこのアルバムは、デビューから35年を迎えたカイリーの総決算。最盛期の00sの頃からの王道エレクトロを中心に90sのハウス・リバイバルからブリットポップ調のロック、さらにはかすかにデビュー当時のユーロビートを思わせるアイドルポップまで、やってきたことすべて網羅してる、さながらベスト盤のようなオリジナル作。かつての、すぐにでも消えそうだと揶揄さえされていた彼女が55歳で貫禄のピークに達するとは思いもしませんでした。鼻にかかった高い歌声もスレンダーでキュートな容姿も何一つ変わらないのも本当にすごいです。今年はリック・アストリーがグラストンベリーで大人気になったり、ペットショップ・ボーイズのツアーも好評だったし、サイクル的に大ユーロビート・リバイバルにもなってますね。

19.My Soft Machine/Arlo Parks

19位はアーロ・パークス。これは僕にとっての今年の「過小評価擁護枠」ですね。アーロ、2021年のデビュー作の時にはその年の年間ベスト総合の上位争うくらい世界中のみんなが褒めた作品だったのに、このアルバムはその意味ではさっぱりでいくつかの媒体が評価してるだけ。これ、おそらく、彼女のことを「R&B」と解釈していた故の肩透かしなような気がするんですけど、僕にとってみれば最初から「カーディガンズにそっくり」と思ってたし、共演の範囲から見てもインディ・ロック畑だとその頃から思ってました。だから今回の、エレクトロ、そしてロックなアプローチは「やりたい方向性に寄って来たじゃない!」と思って、嬉しくもあったんですよね。おそらくは清らかな声で優しくオーガニックな質感のポップ・ソングを歌って欲しかったと願われたんでしょうね。そこは彼女の天性の良さでもあったから僕も先行シングル聞く分には残念で不安もあったんですけど、方向性が違うだけで、歌い方はさらにデリケートで生々しくなり、メロディに関してはアレンジ変わっただけで全然生きてますよ。「Devotion」とか、デビュー時からずっとアーロを可愛い後輩としてかわいがってるフィービー・ブリッジャーズとの「Pegasus」、そしてこのアルバム内で最大のキラー・チューンの「Blades」とかもう1回ちゃんと聞いて欲しいんですよね。芯を通っているものが変わったわけでは全くないので。そして、今回試したことが必ずや次作以降に生きると、僕は踏んでいますよ。

18.Jaguar II/Victoria  Monét 

18位はヴィクトリア・モネ。今年サプライズがあったとするならば、その一つは彼女ですね。正直なところ、彼女のこと、全く知らなかったんですが、リリースされる頃にSpotifyいじってたら結構いろんなところに出てくるし、レビュー・サイトでも評判良かったので聞いてみたらビックリ。しょっぱなの「Smoke」からいきなりR&B黄金期の90sを強烈に彷彿させるヴァイヴ。メアリー・J・ブライジとかエリカ・バドゥのアルバム聴いている時のような低いうねるベースのグルーヴに洗練されたアーバンなメロディやホーン・セクションのオカズが。リズムをタメればためるほど濃厚にセクシーで、レゲエの心得もあって。ヴォーカル物のR&Bそのものが売れなくなってヒップホップばかりに業界の比重が傾くのを寂しく感じていただけに、これは嬉しかったですね。このヴィクトリア・モネ、年齢は32歳で、元はソングライターとして活動してたみたいですね。書いた曲の中にはアリアナ・グランデのあの「thank u,next」もあるので、やはり只者ではなかったようですね。まだチャートの60位くらいの状況ではあったんですけど、こういうサウンドは今のグラミー会員の大のお気に入りのようでして、SZAだ、ラナだ、オリヴィアだ、ボーイジーニアスだと居並ぶグラミーでいきなり5部門にノミネートされました。 グラミー会員の趣味のごり押し、散々批判してきてるので言いにくくはありますが(笑)、これは素直に応援したいです。

17.Unreal Unearth/Hozier

17位はホージア。僕の年間ベストでは初登場となります。ロックの世界は2015年とか16年にまるで大恐慌でも起きたかのように大不況に陥ったんですけど、その時に直前に登場してた人たちに今、かなり助けられています。The 1975、Lorde、HAIM、こうしたところがいなかったら今頃ぞっとするんですけど、このホージアもそうですね。2014年にシングル「Take Me To Church」が世界的にヒット。アイルランドから登場したこの身長2メートルの大男の若者はこの1曲で大きく救われます。その後、2019年の次のアルバムはパッと見ではそれほど受けず。僕としても彼のイメージはシンガーソングライターだと思っていたのでそれほど気にしてなかったんですね。ただ、その裏で実はデビュー・アルバムがストリーム界隈で一大ロングセラーとなっていて、その後の作品もストリームの数字がこっちが思っている以上に高い。このアルバムからの先行シングルもSpotifyのグローバル・チャートに入ってるし、各国のフェスでもよく見ると後半の出番にデンと座っている。「こりゃ、ちゃんと向き合った方がいいぞ」と思ってこれ聴いたらドンピシャでしたね。元々シンガーソングライターといってもゴスペルやソウルの影響が強いマイケル・キワヌーカみたいなタイプで、ハイトーンをグッと伸ばせる強みはあったんですけど、今回のサード・アルバム、自分のロック的な適正がわかってきたのか、ハードロック的な重いリフを使ってかなりロック的に攻めてるんですよね。迷うことなくロックと呼べるクオリティです。本人もその気あるんじゃないかな。このアルバムではブランディ・カーライル、部外コラボではノア・カーンとデュエット出したりもして。ルーツ系のところからのロック・アプローチの人たちってことですけど、ひとつの勢力作れそうな感じになってきてますよ。しかも今作、世界のチャートのほとんどでトップ3入るくらいの大ヒットになって、フェスでも準トリくらいになってきてるし。ちょっとこの人は本気になって見ておいた方がいいですよ。

16.Bewitched/Laufay

16位はレイヴェイ。この人も今年、気がつかない間に静かにスターになっていた人ですね。なんか、こういうパターン増えてきてる気がしてます。僕が彼女のことを気にし始めたのは夏頃ですね。Spotifyのチャートに「From The Start」ってボサノバの曲が突然入ってきたので誰だろうと思って調べたら24歳のアイスランド人の女の子で、ローフェイと読むのかと思ったらレイヴェイで「なんか変わってるな」と思ったら、この彼女が素で熱狂的なミツキ・ファンであることが判明し、tik tokの動画でミツキの新作、自分のアルバムそっちのけで宣伝してるような、今どきの人でしたね。それで興味もって聴いたら、当初触れ込みの「ジャズ」というよりはもっとストレートに、それこそミツキやビリー・アイリッシュ、ラナ・デル・レイと同じような歌いかたで、アコースティックやオーケストラ・アレンジの上品な歌を歌ってる感じですね。ジャズと言ってもフォーマルな感じは全くなく、渋谷系的なカジュアルな洒落っけをそれこそ今のサッドガール・インディ的な解釈で歌った感じですね。このアルバムの後にビーバドゥービーと共作シングル出してるんですけど、そういうライトなサブカル感覚がハマる感じですね。ノーマークなところからtik tokや口コミで人気出た感じなので牽制してる人もいるのかなと思いますが、高い順応力とセンスの良さに関してはかなり非凡なものを感じます。次作で真価が問われることになると思います。


15.But Here We Are/Foo Fighters

15位はフー・ファイターズ。これ、出た時から思ってるんですけど、「ジャケ写、これ、ちゃんと写ってるか?」って不安になるんですよね。これは以前も記事で取り上げた通り、昨年に亡くなったバンドにとって不可欠だったドラマー、テイラー・ホーキンス、そしてデイヴ・グロールのお母さんであるヴァージニア、2人の死に捧げたアルバムです。アルバム全編でこの2つの死に関してだからかなり重たい作品なのは確かです。そこから見て取れるのは「Rescued」や「Under You」でも赤裸々に語られているように、突然、前触れもなく死を告げられて、どうして良いかわからなくなってるデイヴの率直きわまりない気持ちですね。特に後者での「もう俺がおまえに会えないって、人が言うんだ。残念ながら事実らしい」というフレーズをすごく明るいメロディで歌われるのがかえって痛々しいというかね。あと、「Show Me How」では亡き母に対し、最近歌い始めた長女ヴァイオレットと共に、切ないシューゲイザー風という新局面を見せながら「あとは俺たちが守っていくからさ」と強く誓うのもね。デイヴってただでさえニルヴァーナ時代のカートをはじめグランジの戦友たちに若くして先立たれることが多いんですけど、自分がしっかり強く生きて継承していく立場を自認しながら前を向いて立ち向かうことを受け止めてるようなそんな感じがするんですよね。そして、このアルバムをもって、ここ数作でちょっと迷い気味だった方向性も吹っ切れて、考えすぎずに自分らしい楽曲に立ち戻ることにもなって、それが故に好評にもつながってると思います。

14.Portals/Melanie Martinez

14位はメラニー・マルティネス。これも今年、個人的にかなり愛聴したアルバムですね。リリースがラナ・デル・レイの翌週、そしてボーイジーニアスと同じ週だったにもかかわらず、リリース当初の人気はその2枚にも勝るとも劣らないものでした。コアファンの熱狂、ものすごいですからね、彼女。このアルバムは2015年のデビューの時から続いている「クライ・ベイビー3部作」の完結編。前作「K-12」で学校生活での世知辛さから最後は死んでしまったクライ・ベイビーが死後の世界で生を取り戻すお話。そうしたこともあってこれまでのコンセプト上、最も生に対してポジティヴな作品ではあるんですけど、基本、ユーレイなため、今回は終始素顔を見せずモンスターのままプロモーションもライブも行っている状態。元来「ホラー、オカルト色濃厚な俗悪ロリータ趣味」で聞く人選んでるのにこの戦略ですから、聞かない人はより聞かない方向を選んだとは思うんですけど、サウンド的には一足飛びに成長しましたね。これまでの彼女で圧倒的にいわゆる大衆的なポップ要素が少なく、インディ寄りにかなり洗練され、ギターも全面に出してロック色が濃くなりました。このアートワーク見せずに音だけ聞けばロックファン、息引いて声裏がえす彼女独自の癖の強い歌唱法さえ気にしなければ普通に好きだと思うんですけどねえ。ただ、これで彼女もカルト・ステイタスの足場固めたと思うので、今後のために今からでも遅くないです、注目した方がいいと思います。絶対、後から評価されると思うし、それに値するだけの個性とヴィジョンがある人だと思うので。


13.Izora(異空)/BUCK-TICK

13位はBUCK-TICK。これはもう、書く前からため息をつくというか、「そんなバカな」と今も思わずにはいられないですね。櫻井敦司氏が急死してしまったから盛ってこの順位、というわけでもないんですよね。4月にこのアルバムの特集をここで書いた時から、1曲1曲をまるで舞台俳優のように歌い分け、ある時期からヴォーカリストとして完全に覚醒した圧倒的なビブラート唱法を最高潮に自在に操れる櫻井氏のシンガーとして辿り着いた境地。そしてゴシック・ロック、インダストリアル、エレクトロと行き来した歴史の上にドゥワップやサンバ、純和風テイストまで組み込むことが可能な音楽的可動域。世界にゴス・バンドは数多くあれど、ここまで到達したバンドなんてちょっと思いつかない。しかもそれが80年代からずっと活動しているバンドでならなおさら。これ、もっと世界に誇っていいんじゃないか、なんて考えていた矢先の逝去でしたからね。彼が元気に活動しているうちにこういうことがもっと世界に届いて欲しかった。いや、悲報が伝えられた直後、ネット上で世界のいろんな言語で追悼の声が上がったのも実際にこの目で見てます。浸透しつつあったんですよね。ということもあって、やはりゴスのバンドということで、この順位の数字は悲劇の後でさえも大事な数字ではないかなとも考えたし、実際問題、今回の僕のランキングは上位11枚が圧倒的に強い以外はそこまで優先的に推したいものもなかったので、自信もってここです。実際、こないだも言いましたけど、特集やったこともあって、僕がSpotifyで今年いちばん聴いたアーティストでもありましたからね。。

12.12 hugs (like butterflies)/羊文学

12位は羊文学。これで彼女たちは3作連続の年間ベストアルバム入り。にほんのアーティストでそんなアーティストは他にいません。前2作は20位台だったので今回一気に伸びてきたことにもなります。僕もこれは待ってたアルバムで、リリース12月に入ってたんですけど、6日まで待ってすべてを決定しましたからね。今年はとりわけ彼女たちの名前、欲しかったんですよ。というのも、今度出るトップ10見ていただければすぐにわかると思うんですけど、今年は過去空前の女性ロック・イヤー。女性がこんなにロックで盛り上がった年もちょっっと記憶にないんですけど、だからこそ、その日本代表たる羊文学を入れたかったんですよね。しかもちゃんとバンドでシューゲーザーやってるわけでしょ。シューゲーザーって、その音楽が発生した当初から女性の参加率のとりわけ高い存在で、その影響で今、世界的にすごくガールズバンドの多いジャンルで今後もステディに残っていくと思うんですけど、羊文学は今後、その気にさえなればその存在が国際的にも注目されていくことにもなると思うし、来るべきその日に向けて音楽的にも力強く進化しているのも心強いです。今回なんて、これまでの儚げにおしゃれなイメージに一石投じるようにかなり挑戦的にロックンロールしてるし、曲の構成もすごく複雑に凝ったりもして。モエカのヴォーカルも一段と高いキーに挑んでスケール感をすごく増していて。もう、今のその姿こそを世界の人に見てもらいたい。僕としては、今年1年ずっと騒がせてもらった、The Last Dinner Party、いよいよ来年2月にアルバム出ますけども、共演して欲しいんですよね。それだけの力なら、もうあるので。世界のガールロッカーに対抗する期待を込めて、さっき言った11の強いアルバムについでのこの位置。アルバム名を覚える前にこの順位に偶然してました(笑)。


11.Did You Know That There's A Tunnel Over Ocean Blvd/Lana Del Rey

そして11位にラナ・デル・レイ。これは11月からこの順位であることを予告してましたね。今回、トップ10に入れたいアルバムが11枚あって、どれもどうしてもはずしたくなかったんですよね。どうしたら良いか、となったときに、「すでにトップ10でお馴染みになってる存在」と考えたら、もうラナしかいなかったんですよ。過去、1位と3位ありますからね。今回我慢してもらいました。ただ、世界の年間ベスト総合見てると、このアルバム、3~5番手位の位置で争ってますね。世間的にはそれだけの作品であるのに11位は少し惜しかったのかもしれません。ただ、ラナ・ファンの間では特に「最高傑作」と呼ばれている類いのアルバムではなくてですね、さしずめ「歴代4番目の評価」くらいな感じではあるんですよね。それで年間ベストのトップ争いというのはすごいですけど。今回評判良いのって、これまでで一番多様性に富んでて実験的だからでしょうね。一番大きいのは黒人の女性コーラス3人加えて通常よりもソウル、ゴスペル・テイストをあげたことがあるんですけど、今年のベストソングにもいろんな所であげられてる「A&W」みたいにヒップホップに挑んだ曲もあれば、売れっ子映画音楽作家でもあるジョン・バティスティとの60~70年代ロマンス映画の主題歌みたいな「Candy Necklace」、ここ数作で強めていたフォーク路線はファーザー・ジョン・ミスティとの「Let The Light In」でアピールしたりと、歴代のアルバムでも一番の降り幅の作品だとは思います。彼女、これが今回、1年半ぶりのアルバムとまたしてもペースが早く、ここ5年で4枚目のペースなんですが、そこでアイデアがつきずに一番挑戦的なアルバムだしてくるあたり創造が尽きないんですね。そこはいつも感心するし、驚くところではあります。

では、1日挟んで、いよいよ今年のトップ10です!

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