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「Guava Island」感想 ”ファンなら”見るべき、チャイルディッシュ・ガンビーノの歌謡ドラマ

このどうも。

映画評をやろうかとも考えましたが、タイミングよくこれが配信されたので、このレヴュー行きましょう。

この「Guava Island」という1時間の映画。これがアマゾン・プライムで配信されました。これは、才人ドナルド・グローヴァーが、”チャイルディッシュ・ガンビーノ”としてのコーチェラのヘッドライナー出演に合わせて発表された1時間の単発ドラマで、リアーナとの共演が話題となっていました。どんな作品なのでしょうか。

あらすじを見てみましょう。

舞台となるのは、おそらくはカリブ海にあるであろう、そこに浮かぶ小さな島、グアヴァ・アイランド。そこに

コフィ(リアーナ)という女性が住んでいました。彼女は町の小さな工場でお針子として働いていましたが、彼女の幼馴染に

デニ(ドナルド・グローヴァー)がいました。彼は幼い頃からコフィの家の窓のそばにやってきては、ギターで弾き語りをするロマンティックな生まれながらの音楽家で、働きながらミュージシャンもやっていて、小さな島ながらローカル・セレブでもありました。

そんなデニは街中の誰からも愛されていて、その人たちを誘い、街でフェスティバルを開く予定でした。

しかし、デニの働く職場のボスで街を裏で仕切っている、レッド・カーゴ(ノンソ・アノジー)は、彼のビジネスの既得権益に関わるとの理由で、デニにフェスティバルの主催を断念するように脅迫します。

しかし、デニはフェスティバルを強行しようとしますが・・。

・・と、そんな感じですね。

これですね、要は

要は、こういうドラマを背景に、合間合間でチャイツディッシュ・ガンビーノとしての歌が挿入され、彼分するデニがガンビーノの曲を数曲披露していく、というものです。昨年世界的に大ヒットした「This Is America」も流れますね。

なんかですね、見ていて



マイケル・ジャクソンの「Bad」のMVを思い出してしまいましたけどね。これは、今から考えるとすごいんですが、マーティン・スコセッシが監督の18分のドラマで、マイケルに絡む不良青年役がこの少し後にデンゼル・ワシントンと並ぶハリウッドの主演級の黒人アクターにもなったウェズリー・スナイブスだったりもしたわけですが、今回のこの「Guava Island」はそれを60分の尺にして、3、4曲を披露する形にした、いわばMVの複合ロング・ヴァージョン、という趣ですね。

このフォーマットですが、ドナルドには非常に合っているし、今後も作るべきタイプのものだと思いましたね。やっぱり彼の場合、他のアーティストにはない、「プロの俳優」、同じく「プロの脚本家」でもあるわけで。その意味では、専売特許的なことをコーチェラのヘッドライナーという、晴れの舞台に合わせてやったな、というイメージです。

ただ、ストーリーそのものは、あんまりよくない言い方をあえてしてしまえば他愛はないことはないし、ありえないタイプの設定が詳しい説明もないまま行われるので、「ドラマの質」としては正直「よくできてる」とは言い難いです。あくまで「長編MV」として見たほうがいいです。本人たちも、映画とかTVシリーズみたいなシリアスな感じのものとしてこれを作ったわけではないでしょうから、難しいことは考えずに、ただ「見て楽しんでよ」くらいの感じのものだと思います。

ただ、それでも

「ドナルドって、いい俳優だなあ、やっぱ」とは思いましたけどね。彼の演技の何がいいって、キャラクターの確立がすごくできていることですね。演技にものすごく「ディテール」があるんですよね。そのキャラクターがどういうバックグラウンドで生きてきて、どういうものの考え方をする、とか、そういう主要なことだけじゃなく、すごく些細な”癖”や”趣味”レベルの、ごくごく個人的なことまでをキャラクターの中に織り込んで演技している感じがするんですよね。そこはさすがに、彼の脚本家としての資質が生かされてる感じがするんですよね。だから、見ているこちらも、彼の演じるキャラクターに対しての好奇心が見ていて湧くんですよね。ただ演じるだけじゃなく、キャラクターがどういう人なのかをプレゼンする。それができるからこそ、彼が映画やドラマで演じるキャラって魅力的なんだろうなと思いましたね。

あと

監督はドナルドの相棒としてすでにおなじみの日本人ヒロ・ムライ。そういうこともあってか、ドラマの間合いそのものが「アトランタ」によく似てましたね。話の間合いとか、テンポが、もう、「そのまんま」な感じでもありました。

それから

チャイルディッシュ・ガンビーノとしてのニュー・アルバムのヒントのようなものが垣間見れる感じも良かったですね。彼の場合、ミュージシャンとしては一貫性はなく、そこが僕の中で彼を俳優として以上には評価できない(多分、俳優として好きすぎる)ところであったりもします。ただ、彼の場合、得なのは、世界中の多くの人が「元は俳優」であることを認知してるから、音楽は趣味の良さを披露するだけで形になっちゃうんですよね。

例えばうちのワイフにしても彼のことはシンガーとしてはよく知らなくて、テレビで見てた「ゲット・アウト」でガンビーノ最大のヒット曲「Redbone」がかかった時に「いい曲ね」と言ったんですが、「これ歌ってるの、ドナルドだよ」と教えたら「あの人、歌なんて歌うの!」って驚いたくらいですからね。僕ら夫婦もドナルドは彼の出世作となったTVコメディ「コミュニティ」の頃から知ってるので、欧米圏だとどうしてもそういうイメージなのです。そういう人が「音楽でも趣味がいい」と思われてウケてる印象です。

これまで「オルタナティヴ・ラップ」→「現代風Pファンク」と展開してきたドナルドですが、今回、「カリブ風トロピカル」なテイストが目立っているのが気になりますね。これって「This Is America」でも一部漂っていたものではありますが、それは他の曲にも感じられますね。ニュー・アルバム、こっちの方向性じゃないかな。あと、特別「うまい」というわけではないけど、やっぱり彼の場合、ヴォーカリストとしての才能の方がラッパーとしてのそれよりはあると思います。いい感じでセクシーな甘さのある、いい声なんですよね。それが、このドラマで披露されていた曲の中で生かされていたのも良かったと思います。

こんな風に、ドナルドの資質や今後を見る上では楽しみな一作ではあるんですが、それにしても

リアーナって、演技、下手だね、やっぱ・・・。

なんかねえ、硬いんですよ、彼女。確かに、ビヨンセとかアリシア・キーズとか、人のこと言えた義理では全くないんですけど、セリフが棒読みというか、感情表現がないんですよね。女優デビュー作でいきなりラジーにノミネートされ、「オーシャンズ8」でも明らかに一人足を引っ張った演技でからかわれてましたけど、ここでもそれは変わらないなあ。演技だけで精一杯で、キャラクターの紹介が見る人に対してできてないなあ、という印象なんですよね。だから、出てきても全然感情移入できないというか。おそらく、「カリブ」というイメージだけで選ばれた感じですけどね。

ちょい役で出てくるレティシア・ライトの方が断然演技うまかったですからね。彼女は「ブラックパンサー」のシュリ役で注目された人ですけど、相手役、彼女の方が良かった気もしますからねえ。

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