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「ロックが(精神的な意味でなく、人が聴かなくなるという意味で)死にはじめた」のはいつ頃からなのか

どうも。

昨日の「洋楽派VS邦楽派」、多くの人に読んでもらったようで嬉しいです。

では、今度は、これも最近、僕の周囲のSNSで話題になったこのネタ、行きましょう。

先日、プライマル・スクリームのボビー・ギレスピーが「今のロックはラテン語みたいなものだ。終わっている」という発言をしました。

別に、「ボビーが言ったから」ということで、これを取り上げようとしたわけでは決してありません。同様の発言をする人は少なくないし、僕も「そう見えても仕方がない」とは思っているので。

まあ、慣れてもいるんですけどね。古くはセックス・ピストルズ時代のジョニー・ロットンが1978年くらいに言ったところから始まり、80年代にも90年代にもそういうことを言ってる人はいたから。

ただ、それまでのソレが、どちらかというと、スピリチュアルな意味合いでの発言だったのに対して、今回のは

社会一般に、本当に流行らなくなっている意味で言われている

これまでの同様の発言とは違うこと。それはしっかり認識しないといけないと思います。

では、それがいつ頃から始まったか。少なくとも僕の中ではハッキリしてます。それは

2010年代なかば

まちがいないです。少なくとも2010年代前半までは、ロックのヒットは出てましたから。

2010年代前半がどんな時期だったか、思い出してみましょう。例えば、うちの長男が生まれた2012年くらいだとゴティエの「Somebody That I Used To Know」だったりfunの「We Are Young」とかルーミニアーズの「Ho Hey」とかの、当時のフツーの人が知ってるようなヒットがまだありました。2013年にはLordeの「Royals」、あれもアメリカではロック系の局が人気に火をつけたものです。このあたりはグラミー賞でも、賞たくさん取ってましたからね。

「ヒット曲」という観点でなくとも、たとえばアルバムが売れてフェスのヘッドライナー格につながるという意味でも、ブラック・キーズ、テイム・インパーラ、マムフォード&サンズ、アラバマ・シェイクスあたりはかなり売れてましたしね。イギリスでも、THE 1975、ロイヤル・ブラッド、そして2015年のウルフ・アリスあたりまでは大きなヒットがありました

だが!

それが22015、2016年くらいから、途端にヒットが出なくなってしまった!

それがなぜ起こってしまったのか。その大元は、

いつの間にか、若年層が気軽に聴く音楽でなってしまっていたから!

ここがすごく大きかったんだと思います。

ただ、僕的に、なんとなくの嫌な予感は2000年代の後半からありました。

昔から僕のこのブログを読まれている人だったら、2010年代の前半、僕がインディ・ロックの現状に関して結構ボヤいていたのを覚えている人がいるかもしれません。正直な話、2000年代前半のあの時期、どっちかというとブログ始める直前の2000年代末のほうがもっと悪かったかな、ロックに関して気乗りできなくなっていた時期がありましたから。

その時期というのは、ピッチフォークの時代になって、地味なルックスのインディ・バンドが注目されるようになった頃ですね。僕はHard To Explainでストロークスとかホワイト・ストライプスのブーム以降の、2000年年代前半のインディ・バンド、押してましたけど、その頃のバンドって、まだ見た目に華あったんですよね。それが、NME主導のあのブームが去った後、ネット・ベースでピッチフォークが支持集めるようになると、途端に地味な人たちが注目を集めるようになってしまった。社会的に見て、スター性あるとは思えないようなタイプね。一番華があってMGMTで、後はヴァンパイア・ウィークエンド、ボン・イヴェール、フリート・フォクシーズくらいだと図抜けた才能もあったけど、それ以外の、あの当時しか話題にならなかったような、イメージあえて言っちゃうとサーフ・ブームってあったじゃないですか?あのテのバンドが一時的に脚光浴びた時あたりは「勘弁してくれよ」と思ってました(苦笑)。

だって、とにかく「学生サークルのバンド」みたいな感じでつまんなかったんだもん。まあ、彼らだけの問題ではなかったんですけどね。ちょうどあの2000s末から2010s前半のあの時期って、エモ・ブームが終わって、ラウド・ロックが冬の時代に突入してしまった頃と重なるでしょ?不良っけの強いやんちゃな人がロック聴く時代が終わっちゃっていたんですよ。あれは僕も全くの計算外でしたね。あのテのロックって、「どうやったって需要なんて永遠になくならない」と思ってたから、「インディ・ロックに対抗するもの」として遠慮なく叩かせてもらっていたのに(苦笑)。今なんて、狭くなってしまったロック界で、そういうの叩く意味なんて全くなくなってしまってますからね。

これ、いみじくもボビーが、「今、ロックやってるヤツって、家の修理に来るような格好のやつがやってるだろ?」「ヒップホップにはクレイジーな髪型したヤツがいるだろ」って言ってるのと、なんとなくリンクするんですよね。これ、わかりやすく言うなら、「不良願望の強いキッズが飛びつきたい要素がロックで亡くなってしまった」。ここが大きいんだと思います。例えば、あの当時のエモ・キッズがどこに流れ着いたかといえばEDMのブームで、その後がトラップですよね。そこに流れちゃってますよね。

ボビーの場合の指摘は

①ロックに不良願望の強いキッズが求める要素が無くなった

このパターンだと思います。これと同じ指摘は、実は、僕の長年のネット越しの同い年のN君って親友がいるんですけど、彼が数年前から全く同じ指摘をしてたんですね。だから、「ああ、本当にそういうことになったんだなあ」と、個人的にしみじみ感じていたところでもあります。

そして、2010年代後半からは、僕は以下の要素が加わってきたのも大きいと思います。

②ロック黄金期のスターが70代を迎えた
③ポリティカル・コレクトが厳しくなり、白人男性が不利になった
④チャートがストリーミング換算の時代になった

この3つが本当に大きいと思うんですよね。

②は、ロックを商業的に最も盛り上げた1970年代に最盛期を迎えたアーティスト、これがことごとく70代に突入したんですよね。これはベイビー・ブーマーという、いわゆる第二次世界大戦直後に生まれた、日本で言うところの「団塊の世代」に当たるもので1940年代後半生まれの人を指します。クイーンがまさにその生まれだし、有名なアーティスト、大概、そこの生まれなんですけど、彼らが70代になってしまった。

これ、大きいんですよ。だって、今のキッズからしてみたら「じいちゃん、ばあちゃんと同世代」のわけですから!

子供の自然な感情として、自分たちのカルチャーが親、もしくは祖父母と同じって嫌なものです。しかも、エスタブリッシュされたものを嫌うじゃないですか。そうなった場合に、「違うもの」を求めるのって自然じゃないですか。だから、この観点ではしょうがなくなってるところはあると思います。

③に関しては、ちょうどトランプ政権ができ始めた前後から特にうるさくなりましたね。この頃から、「黒人」「女性」の主張が強くなり始めた。僕自身もそれは歓迎はしてるつもりなんですが、困ったのはロックを「白人の中産階級の男性がやる音楽」と一方的に解釈されているところがあることなんですよね。ロックだって、大いにリベラルな音楽(だいたいカントリーじゃないんだから)だし、アジア人で南米在住の僕に言わさせてもらうと「もはや白人だけじゃなくて、世界中で愛されてプレーもされてるよ」とも思うんだけれど、それがなかなか通用しない。困ったものです。

そして

①②③があった上での④ですよ!

これが最大の打撃でしたね。チャート改正が2016年くらいにあって、ここから先は売り上げじゃなくて、「人が聞いた回数」がチャート上で有利になってしまった。つまり、「音楽聞く回数なんて、大人より子供の方が圧倒的に多いに決まっている」、その状態でチャートがつけられるようになってしまった。

これが本当に大きな打撃でしたね。これで「ロックが子供に聞かれていない現状」があらわになってしまったから。ここから、ロックは売れないわ、フェスをポップやヒップホップのアーティストに奪われてしまうわで、ロックが大変な目にあって、ついには「死んだ」説が言われるようにもなりましたからね。

・・・と、これらがだいたいの「ロックが現状で苦境に追われている要因」でしょう。確かにこれらが重なると、ロックには痛いと思います

が!

その一方で

「ロックが死んでる」と言ってる人の中で、「ロックの現状」を本当に知ってる人って、どれくらいいるの?

という疑問も僕にはあります。

だって、相変わらずロック関係でいいリリース、ありますよ。今年入って一番批評的評価がよかったアーティストって、フォンテーンズDCとかビッグ・シーフですよ。僕だけが言ってるわけじゃありません。証拠なら簡単に出てきますから。あとヴァンパイア・ウィークエンドだって面目示したし、昨年あたりから女性のインディ・ロック、女性SSWだって良いのたくさん出てるじゃないですか。ビリー・アイリッシュの、屈折した人たちのカリスマになる要素や、お兄ちゃんとのDIYの感じも、本来ロック・ファンみたいな人たちの心理をかなりくすぐるものだしね。

あと、「危機」が迫ると、人は「種の保存」に走る性格があります。その象徴がわかりやすく言うとグレタ・ヴァン・フリートだし、あと、ラウド・ロック系でも、限られたもので大きなヒット、出てるんですよね。去年のゴーストがそうだし、一昨日の全米チャートでのラムシュタインがタイラー・ザ・クリエイターやザ・ナショナルより国際的なチャート結果が良かった驚くべき事実だってそう。意外としぶといものなんですよ。

「トラシショナルなものを残す」のでもいいし、女性や黒人、人種的マイニオリティを取り込んだ新しい形でのロックでもいいし。そういう形で、ロックなんていくらでも生き残る可能性があると少なくとも僕は思ってます。「不良願望が強い要素の子」が戻ってくるかどうかはわからないけど、でも、今のキッズが「ロックの高齢イメージの払拭」「ポリコレのポジティヴな是正」「ストリーミングではやり音楽じゃなく、古い音楽をディグし始めたタイミング」あたりで「戻ってくるかな」という予感はあります。何年かかかるでしょうけどね。



























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