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おかえりフィオナ!8年ぶりの最新作に最高傑作更新の予感。

どうも。

先週のストロークスに続いて、並外れた才能を持った人の新作が出ましたね。

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はい。フィオナ・アップル、8年ぶりのアルバム「Fetch The Bolt Cutters」。もう、ここのところ、ケイト・ブッシュとかシャーデーみたいに、忘れた頃にしかアルバムを出さない、本当にたまにしか稼働しない人になってますけど

いやあ、これはすごい!

これは、本当に傑作ですよ!!

 何がすごいって、これ、

特別に凝ったアレンジも何もしてないのに、彼女の声と、ピアノと、彼女自身の体内から発せられる肉感的なグルーヴ。この三つの組み合わせだけで、聞いたことのない音楽を聴かせてくれているから!

 もう、本能というか野生というか、そういうレベルです。この即興性って、ある意味でジャズとかゴスペルとかにも通じるものがあるんですけど、「記号化された黒人音楽」とも全く違うし。とにかく「フィオナらしい」と、それだけしか言えないものです。

それって実は

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この8年前の前作の「Idler Wheel...」で、その原型ならすでにできていて、これもものすごく評判の高いアルバムなんですね。僕はこれ聞いた時の印象は「いいんだけど、ちょっとトゥー・マッチ」という感じで、本人の鬼気迫る感じは伝わるんだけど、同時に昔からの「変人フィオナちゃん」っぽさが一気に強まった感じもして、「ちょっと、やりすぎかなあ」とも思ったんですけど、今作は、そこまで気持ち悪いケイオスは抑えられ、「当人比」ではあるんですが、楽曲としてコントロールもできています。

 いやあ、でも、これ、すでに一時代を20年以上前に作った人ではあるんですけど

最高傑作、更新してるんじゃないか、これ!

そうも思いますね、これは。

フィオナといえば

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96年に出た、当時、全米で300万枚売れた、この「Tidal」。やっぱり、これが代表作になるんですけどね。いうなれな、トリップホップを、ピアノ・ジャズのフィルターを等して、およそ10代の少女とは思えない、低いドスの聞いた声で激情とともに歌うフィオナ。これ、かなりインパクトがあったし、「こんなポップじゃないものが、よく、ここまで大衆ウケしたな」とも思い、90sという、かなり刺激強いものを大衆的に受け入れる素地のあった時代に今も感謝するところがあるんですけど、これはやっぱり、そんな時代を象徴する傑作だと思うんですよね。

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こと、メロDHいやアレンジの洗練度で言えば、1stより99年発表のこのセカンド「When The Pawn」の方を推す声もあるでしょう。僕も、何も考えなければ、このアルバムがパッと聞きて一番好きです。ただ、これ、今聞くと、ちょっとプロデュース担当のジョン・ブライオンが、あまりにも自分のこのみで音、作りすぎですね。後期ビートルズっぽいコード進行から、ギターのディストーション、ストリングスのかけ方から、全部その後の、映画音楽作家になってからのパターンでよく出てくるものだし、この前に手掛けてたエイミー・マンやルーファス・ウェインライトのアルバムでのアレンジをさらに濃くして表現したものでしたからね。勢い、トッド・ラングレンがプロデュース作でやってしまいがちなことではあるんですけど、プライドの高いアーティストがそういう作品だと、対立を招いたエピソードなんかも聞くんですけど、フィオナとブライオンも結局、それで袂を分かつことになってしまったんじゃないかな、と今にして思います。

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そして05年のサード、「Extraordinary Machine」。20台後半になって、彼女が才能のある大人とともに作ったものではなく、自分自身の力で作った、ある意味、「一からのスタートに戻ったアルバム」ですけど、ここからアイデンティティを模索し、前作があり、そして今作画ある、と言った感じですね。

そういう感じで、トータルで考えても、これ、

「才能ある大人とともに作った天才少女の伝説」を、自分一人で乗り越えた最硬傑作

そんな風に言えるんじゃないかな、これ。

時代の気運的にも、これ、すごく追い風ついてるんですよね、これ。

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最近の洋楽をよく聞く人ならもうすでにご存知の人も多いことですけど、昨年、2019年って、批評的にはラナ・デル・レイとビリー・アイリッシュのアルバムが大絶賛されたじゃないですか。それを受けて、フィオナ、「ゴッドマザー・オブ・2019」という言われ方を、一部メディアでされてたんですね。僕自身もラナが2012年に「Born To Die」で出てきた時、「フィオナ・アップルみたいだな、これ。時代の流れからしたら、そういうサイクルかも」と実際に思ったし、ビリーはやっぱり「十代の早熟の天才」と言うとこで、やっぱり比較しやすい。また、この年にリリースはなかったけど、Lordeもつながるもの、あるでしょう。フィオナ自身はそう呼ばれることに、「そんなものはいやだ」と答えてたんですけど、確かに

「フォロワーを生んだサウンド」とは、もう、とっくに違う方向に進んでいます!

そこがすごいじゃないですか。「フォロワーを生んだことで本家を聞きたい」と言う心情って、生まれやすいものとは思うんだけど、このアルバムは、そういう人々の期待のさらに斜め上を行っている。時代が彼女に追いついてきてるこのタイミングで、本人はそんなことを意識もせず、次の次元にいく。いやあ、カッコいい。こういうことができるの、ポップ・ミュージックのこれまでの歴史でも、やれた人、本当に限られます!

と言うことでこれ、

2020年の年間ベストのトップクラスにはどうしてもいくでしょう。

なんか、これ聞いた直後にツイッターからピッチフォークが10点満点出した、という話も聞きました。この点数、2010年にカニエ・ウェストが「My Beautiful Dark Twisted Fantasy」出して以来の点数なんですけど、あそこがそういう点数を出していようがいまいが、そんなことには一切関係なく、このアルバム、いろんなメディアが絶賛すると思います。天才が「進化した」ことを示し、それが誰も追いつけないことを証明したアルバム作ったんだから、そりゃ、そういうことになるでしょう。

いやあ、昔からファンの身としてもこれは嬉しい。この外出自粛で家に込もらなければいけないタイミングで、素敵な愛聴盤が多くの人にできた。その意味でも嬉しいですよ。



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