映画「女王陛下のお気に入り」感想 現在世界最高の奇才監督、オスカー作品賞なるか?!

どうも。

オスカー作品賞ノミネート作品の映画、残りあと2本に迫ってますが、今日と明日でレビューやってしまいます。今日はこちらです!

今年のオスカーで最多タイ10部門でノミネートされたイギリス映画「女王陛下のお気に入り」、こちらのレヴュー、行きましょう。これも昨年9月に賞レースに加わって以来、ずっと評判の高い映画でしたけど、一体どんな映画なのでしょう。

まずはあらすじから行きましょう。

18世紀の初頭、イギリスがフランスと長期の戦争を行っている最中、アン女王(オリヴィア・コールマン)はそれとは無縁の優雅な生活を送っていました。

女王は兼ねてから浮世離れした子供っぽい人でしたが、それが体調不良も重なって悪化もしていました。そんな彼女は政治的な意思決定はすごく苦手で、それが下院議長のロバート・ハーリー(ニコラス・ホルト)らをイラつかせてもいました。

そんな女王を実質操っていたのは、彼女の幼馴染でもあった第一側近のサラ・チャーチル(レイチェル・ワイズ)でした。女王に対して唯一単刀直入に物が言え、指図もできた彼女は宮廷内での影響力を強めていました。

そんな中、一人の若い女性が宮廷入りしました。

彼女はアビゲイル・ヒル(エマ・ストーン)。サラの親戚の娘ですが、一族が没落したのに伴い、宮廷に侍女として使えることになりました。彼女は新入りとしていじめを受ける日も過ごしますが、ある日、足の痛みに苦しむアン女王にハーブを塗って看病したことを女王に気に入られ、昇格します。

そんなアビゲイルはある夜、女王とサラがただならぬ関係にあることを突目撃してしまいます。

これを見てアビゲイルは、「どうやったら女王の心を惹きつけられるか」ということを狡猾に考えるようになります。

アビゲイルの行動はだんだんと大胆になる、それをサラは快く思わなくなりますが、女王の気持ちはサラからアビゲイルへと映っていきます。

そして、アビゲイルとサラの立場関係が逆転する日が近づいてきて・・・。

・・と、ここまでにしておきましょう。

これはですね

1702年から1707年まで、5年という短い在任期間でしたが英国女王だったアン女王の話をモチーフにしています。彼女は、貴族の歴史においてはおそらくその先駆けだったんじゃないかな、レズビアンだったことでその筋ではかなり有名だったようですが、その話を元にしての今回の映画です。

それを

この現在の世界の映画界随一の奇才、ヨルゴス・ランティモスが監督することになったわけですが

「大丈夫なの、それ(笑)??」

と、僕は最初その話を聞いた時、やっぱり思いましたもんね。だって、この人

台頭してきた時から変な映画ばっかり撮ってきてますからね。僕が彼を知ったのは、2009年のこの映画「籠の中の乙女(Dogtooth)」ですね。これは、親に外界との生活を一切遮断させて監禁されて育った子供達の話なんですが、気持ち悪いの、なんの。長男の性的欲求を満たすためにそれ専用の女性を雇う父親も怖いんですけど、監禁された結果に動物みたいに育っちゃった女の子がとにかく怖くてですね。これはまだギリシャ撮った映画だったんですけど、この奇作がその年のオスカーの外国語映画賞にノミネートされたことで国際的に注目を浴びます。

そして、イギリスに移住して、ハリウッドでも有名な役者と英語で作品を作るようになった第1弾映画がこの「ロブスター」ですよ。これはいわゆるディストピアで、「期限内に愛する人を見つけないと動物にされてしまう」という異常な設定の中、恋人が見つからないとロブスターにされてしまうコリン・ファレル扮する男が数々の奇妙で恐ろしい体験をしながらも本当の愛を見つけていく、まあ、かなりグロいんですが(笑)、この監督なりの、かなりひねくれた純愛ロマンスになっています。

そして、これが前作「聖なる鹿殺し」。これは、この写真の青年が、コリン・ファレル扮する医師一家にストーキングし、ファレルの医療ミスで殺された父の恨みを晴らそうとするサスペンスなんですが、この青年が気持ち悪くてねえ。娘と息子を謎の力で半身不随の病にするんですけど、これに慌てふためくファレルが狂人と化す様も怖くてね。血生臭さがある上に、精神的にヒタヒタ迫る怖さがあります。

・・ね、どう考えてもまともじゃないでしょ?だから、彼が英国王室描くと聞いて「本当に大丈夫なの?」と思ったんですけど

まあ、容赦なかったですね(笑)。

レズビアンの性的描写に関して言えばこれ以上のものは見たことはあるんですけど、「英国王室」の名の下に、許される限界までやった、という感じですね。これ、日本の皇室だと、まず絶対アウトだったでしょうね。

で、僕的にさらに驚いたのが

このアン女王の描写ですね。ここまで、見るからに、精神不安定に描いちゃって大丈夫だったのかな、と。これ、ちょっと「表に出しちゃいけない人」なレベルで心配させられるタイプですね。この役をオリヴィア・コールマンが絶妙に演じてましたね。いつ見ても目がうつろで、何かを怖がってるような目つきなんですよね。それで次第に余裕がなくなって錯乱してみんなを困らせるという、理性働かないタイプです。「まあ、その昔、王国の王室で過保護に育てられた人にこういう人、いたんだろうな」とは思いましたけど、「こういう人に統治される中世、近世ってどんなよ?」と少し不安になりましたね。

それから

このレイチェル・ワイズとエマ・ストーンの確執の演技も素晴らしかったですね。エマは、おそらくキャリア史上、初めての汚れ役ですね。こんな底意地の悪い彼女をスクリーンの中で見たのは初めてです。いつも、明朗で楽しい、性格のいい人を演じてましたからね。これは彼女のキャリアのステップアップにつながりましたね。

そして、レイチェル・ワイズは、まずはとにかく美しい!造形的な美貌で言えば、40代後半になっても僕は未だにハリウッドのトップクラスだと思っているんですが、彼女の鼻につくくらい気高くエラそうな演技が最初イラッと来させつつ、後でだんだんひどい目にあっていく時の哀れさ。この両極を巧みに演じてましたね。僕は、今回、この映画からオスカーが出るんだったら、彼女の助演女優賞でもいいのにな、と思いながら見てました。

あと、あんまり触れられないんですけど、ニコラス・ホルトが演じた、この意地悪な政治家もかなりの好演でしたね。彼も、この手のイヤな役を演じたのって記憶にないから今後のキャリアには繋がったんじゃないかな。

 この映画、このように演技のアンサンブルが見事です。正直な話、なぜにスクリーン・アクターズ・ギルド(SAG)でこの映画がベスト・アンサブルを受賞しなかったのかが不思議です。

 そしてランティモスで言えば

またしても出てきました。猟銃!もう、この人の映画、何を見ても必ずこれが出てくるんですよ。この人の映画のアイデンティティですね。このアイテムが、この人の映画にまとわりついてる狂気を生み出す原動力になっているような気さえします。

 まあ、基本的に「性格のいい人」は誰も出てこない、血生臭さとジワッとくる怖さのある、まともとは言えない作品を作り続けるランティモスですけど、ただそれでも僕としては同じ奇才でもラース・フォン・トリアーあたりよりは圧倒的に見やすいですけどね。なんでかと言われると、まだちゃんとした論理的な説明がうまくできないんですけど、奇妙な話でも、あそこまでSM的でないというか、どこかまだ救いを感じるんですよね。そこがまた良いのかなとも思いますけどね。

 この作品ですが、オスカーに関して言えば、正直な話、難しいでしょう。それは、この映画のせいじゃなく、審査員が「Roma」とか「グリーン・ブック」のような映画の方を好んでいることはもうわかられているので。特に年配の投票者には、これはちょっと刺激強すぎでしょう(笑)。

 ただ、本国の英国アカデミー賞(BAFTA)は大勝するでしょうね。イギリスの方が、この映画で描かれるようなブラック・ユーモアは好みでしょうからね。地元贔屓というのもありますし。

で、僕的な評価でいうと

今回のオスカー作品賞ノミネートで一番好きなのがこの映画でした!

いやあ、監督のカリスマ的な作家性を感じさせた見事な映画だったと思いますよ。「これまでで一番わかりやすくてポップな映画にしてコレなのかよ!」とツッコミを入れたくなる感じとか(笑)。スパイク・リーの「ブラック・クランズマン」も大好きな作品ですけど、エンディングの処理のところだけ、こっちがわずかに上回りましたね。

 あと、最後に、この映画に興味を持ったら、ぜひ、この映画に出てくる人たちをウィキペディアで調べてみてください。日本語版にちゃんと出てくるくらいに有名です。さらに言うと、この映画の結末からすれば、ちょっと意外な後生も知ることができますよ。














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やった〜
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THE MAINSTREAM(沢田太陽)

音楽ジャーナリスト。90年代にNHK-FMで番組を制作した後、99年よりフリー。2004年にインディ・ロック・マガジン「Hard To Explain」を立ち上げる。2010年よりサンパウロに移住。同年に洋楽・洋画・海外ドラマ専門ブログ「THE MAINSTREAM」をはじめる。
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