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GEZANにヒョゴに・・・。アジアのロック、衝撃の1週間

どうも。

今年も早くも1ヶ月がすぎました。

今年も新作チェックは毎週の金曜に必ずやってて、結構いいペースで素敵なアルバムが出ているなと思っていたんですけど、

今週、思わぬところから衝撃が現れました!

いやあ、これは全く僕も予測できなかったことです。それは

アジアから、優れたロックのアルバムが2枚出た!

こんなことが起きるとは、僕も全く考えもしなかったことです。

その2枚がこれです!

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はい。この2枚なんですけど、まずは左側の

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こちらは、おそらくは僕よりはこれを読んでいる方の方が詳しいんじゃないかな。これ、本当に4日くらい前まで僕は全く知らなかったバンドです。日本のバンド、GEZANの5枚目のアルバム「KLUE」です。

これ、なんで気になったかと言うとですね、これがサブスクで解禁になったタイミングで、僕のツイッターのTLが尋常じゃない、熱い盛り上がりを見せたんですね。しかも、このジャケ写がなんかこう、ただならぬオーラを出していたので、「これ、ちょっと聴いてみたいな」と思ったのがキッカケでした。

そして、こっちの時間の水曜にSpotifyに入ったので満を持して聴いたんですけど、

もう、衝撃でしたね!

いやあ、日本人のバンドのアルバム聞いて、こんなに衝撃受けるのって、20年はなかったようは気がします。2000年代以降、確実になかったですからね。自分の中でもどこか、あきらめているところがありました。やっぱり、いわゆる”ロキノン系”と言われるバンドが主流になって以降、90sの日本のロックを築いた優れたバンドたちの模倣の域を出なかったり、歌謡曲みたいになっちゃったバンドたちが、サウンドの工夫もないままいくつも出てきて、それが長いことずっと続いてたじゃないですか。洋楽のロックとの乖離もその間、激しくなって、全く聴く気起きなかったんですよね。

 ただ、この3,4年くらい、また「サウンドと歌、良くなってきたかな」とは思ってたんですね。ちょうどceroとかサチモスとか出てきたあたりかな。あのあたりが、「悪くないよね」と思い出して、去年の終わりから今年にかけてKING GNU出てきたときに、僕、アルバムも聴いてみて、「これで、アルバムが日本で1位になるんだったら、だいぶ健全になったんじゃない?」と思ったんですね。髭男の方はまだ聴いてないんですけど。そういうことで好感は、持ってました。

が!

GEZANはそんなレベルの問題では全くありませんでした!

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もう、とにかく、これは突然、日本のロックで確変起こったレベルでしたね。急に時計の針が、90sの後半〜末に戻ったかのような。あの、いろんなバンドが競うように、これまで日本で聴いたことのなかったようなサウンドを続々生み出していた頃ですね。

前置きが長くなりましたが、このアルバム、まず、何がすごいかって

日本のバンドがあまり得意としてこなかった、トータルな、作品一塊で聞かせるタイプのアルバムをつくることができている。

これがまずびっくりしましたね。一番かっこよかったのは、曲間のエディットですね。うまい具合に、絶妙にシームレスになってて。僕、最近のロックに関しては、洋楽のそれも含めて、アルバム聴いてて、曲間がかったるく感じてですね、そういうとこにも最近のロックの倦怠期を感じていたりもしたんですけど、そこを退屈させずに、短い曲でどんどん攻め込んで聞かせに入るんですよ。まず、そこに「おやっ」と思ったんですね。

そして、曲がはじまっていくと、そこに膨大な音楽量が加わっていくんですよね。ベースラインとギターの低音がダブやインダストリアルを基調とした感じで、ギターがハードコアとシューゲイザーとポストパンクが降り混ざった感じで。そこで、これが一番驚いたんですけど、デス声というか呪文というか、そういう声がループになってグルーヴになるんですね。こんな工夫ある、層になったサウンド・メイキング、ちょっと今の海外でも聞かないですね。これ聴いてですね、僕はピンク・フロイドの「狂気」とか、U2の「アクトン・ベイビー」とか、そういうの思い出しましたね。前者を思い出したのはシームレスな曲展開にSEを巧みに使って、そこにこれから言及するところの狂気じみた現在の日本を生き抜く決意が描かれている感じがしたから。後者は、このバンドのギターの人が、時折、「もしかして、U2、好き?」みたいなフレージングを見せて、かつ、電気処理的なサウンドを見せるからです。

で、短い曲でつないでいくといいましたが、メインの歌もの楽曲が4曲、しっかり時間をとって存在するんですけど、これのレベルが極めて高い!フロントマンのマヒトゥ・ザ・ピーポーの歌い方がボーカロイドと、フィッシュマンズの佐藤伸治とか中村一義とかの間くらいの、かなり癖のある歌い方をするんですけど、それがすごくある時期の日本的で面白いなと思ったのと、ディストピア的な詩世界を朗読するようなラップのフロウ。これをかなりじっくりきかせるべく、かなりメロディックに情緒的に聞かせるんですね。加えて、曲によってですけど、最近のフランク・オーシャンとかあのあたりのネオ・ソウルから影響を受けたのかなと思われるメロディとアレンジが入る曲もあって。ちょうど最近、The 1975もそのテのやりますけど、取り入れ方は1975のこないだのアルバムに似たやり方してますね。

で、リリックの世界観も、インターネットが神のようになった世の中で、世の中が2分して、人が互いを傷つけ合う世界への悲しみと平和を願う気持が描かれていたりして。最後の曲で、「平和がかなうなら僕は死んでもいい」みたいなことも言っててですね。このフレーズ、電車で聴いてて本当に涙出そうになってヤバかったんですけどね(笑)。

・・・と、こんなふうにとにかく驚くしかなかったアルバムですね。日本だと、今、「アンダーグラウンドのトップ」くらいのバンドだと聴いたんですけど、僕に言わせればこれ、「世界のフェスのメインステージの後半くらいやっていいレベル」ですね、これ。時間かけて、それくらい行ってほしいです。過去の話も聞きましたけど、もうキャリアの初期に海外ツアーもはじめてて、2018年の前作のときには、かのスティーヴ・アルビニがプロデュースしたりもしてます。そんな実績があったのに、僕の日本の音楽友達は、なぜ誰ひとりとして僕にこのバンドの存在を教えなかったのか。今考えても本当に不思議ですけどね。少なくとも、前作(2018)のみならず、前々作(2016)にあたるアルバムも大好きなので、そのときに教えてほしかったんですけどね。まあ、それだけ長い時間をかけて、今作での大化けの準備が整えられていたんだと思うんですけど、小さくまとまらずに大きく育ってほしいものです、

続いては右側

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この「Through Love」というアルバム。こちらは

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韓国を代表するバンドになってますね。ヒョゴのアルバムです。

日本のフェスにも出てて、知名度的にはだいぶ知られたバンドで、僕も出てきたときから注目してましたね。やっぱ、BTSはじめ、あれだけ世界の人が話題にしているK-POPがある中で、あえてバンドやってる感じが珍しくて。2018年に「非英語圏の101枚のロック・アルバム」という企画を組んだんですけど、そのときのラストに選んだ1枚が彼らのアルバムでした。

ただ、そのときに関しては、「期待込み」という感じでしたね。あの頃の彼らのサウンドは、それこそシティ・ポップと言うか、R&Bに影響を受けた、ファンクっぽい感じでしたけど、「このレベルだったら、まだ日本にこれ以上の、いるよね」と思ってました

が!

彼らも今作で大きく成長しています!

今回のアルバム、彼らいきなり、ブラジル音楽に接近しています!それも、しっかりボサノバになってて「どこでそんな技を」と思っていたら、急にサイケデリックでケイオティックな雰囲気になって。

それが後半になると、60s後半のサイケデリック・ロックみたいになって。ギターにジェット飛ばしたりとか、もたつくスネアに深いエコーかけたりとか、後期ビートルズみたいな感じですね。最後のナンバーがそれの局地で、8分超えのサイケデリック・ジャムもあって。

もう、ここまでのレベルに到達すりゃ、最近、いいバンド出てきている韓国においてでさえも、もう文句なしにナンバーワンだろうし、日本のバンドでも、ここまでできたのは、振り返ってみてもそうはいません。これ、いうなれば

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1968年に、カエターノ・ヴェローゾやジルべルト・ジル、ムタンチスなどが参加した、ブラジリアン・サイケの世界的な名盤「トロピカリア」、これを50年たった今から再解釈したような、そんなかんじですね。

これ、奇しくも

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かのベックが、1998年に、同じく「トロピカリア」を30年後に再解釈したようなアルバム「Mutations」を出しています。いわば、韓国からの再々解釈といったところでしょうか。

いやあ、こんな強烈に、音楽的な気鋭の実験精神のあふれるロックのアルバムが、アジアから同時に2枚も出たのは驚異ですよ!

そして、偶然って重なるもんですね。この2枚が出たのと同じ週に。

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フィリピンのバンド、IV Of Spadesの日本公演がすごく好評だったというじゃないですか!

この人達、調べたところ、twitterで25万人、facebookで35万人、インスタで17万人フォロワーがいて、母国の音楽賞も受賞しているような感じなので、地元ではかなりナンバーワンに近いバンドなんじゃないかと思われます。

で、実際、Spotifyに去年出たアルバムあったので聴いてみたら、これがテイム・インパーラの初期とフェニックスの中間みたいですごく良いんですよ!

申し訳ないですけど、フィリピンって、「非英語圏の〜」のときにリサーチ入れてるんですけど、申し訳ないけどレベル、高いとは思えなかったんですね。それがたった2年後に、こんなバンドが突然出てきてて。本当にわからないものです。

それこそ今、英米圏でロック、行き詰まってるなら、アジアのバンド、チャンスですよ!ちょうどKPopとか、日本のシティ・ポップ再評価で世界の目がアジアに向き始めているタイミングですしね。なんか、いいきっかけになるんじゃないか、という予感がしています。







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