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沢田太陽の2019年間ベスト・アルバム 50〜41位

どうも。

では、今日からはじめましょう。今年はちょっとおくれましたが、沢田太陽の年間ベスト・アルバム。

今年は上位はすんなり決まったんですけど、21位以下は非常に迷いました。ちょっと上位と下位に差がありすぎかな、今回は。

惜しくもトップ50入を逃したのは、このあたりですね。

Charlie/Charli XCX
The Talkies/Girl Band
Purple Mountains/Purple Mountains
Shepherd In A Sheepskin Vest/Bill Callahan
Hollywood''s Bleeding/Post Malone
Cuz I Love You/Lizzo
Kirk/DaBaby
Over It/Summer Walker
Assume Form/James Blake
Nothing Great About Britain/Slowthai


実際、このあたりは検討しましたね。チャーリーは僕、かんちがいしてて、「Pop 2」ってアルバム、あれ、2017年12月でしたね。あれ、今年対象とばかり思ってました。そっちのほうが今年出たものより良かったですね。

あと、自分でも衝撃だったんですけど、ポスティ、今年、もう少しでベストの50以内に入るところでした(笑)。僕の場合、以前に酷評してワーストの上位で選んでいても、その後に「内容が良い」と判断すればウェルカムです。ライブでカラオケやめたら、トップ50、考えてあげてもいいです(笑)。

では、トップ50の50位から41位行きましょう。こんな感じです。

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では、早速50位から行きましょう。

50. ii/Bon Iver

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50位はボニー・ベア。ちょっと低すぎるんじゃないか、という声が聞こえてきそうですが、これなあ〜。やってることがテクニカルに複雑ですごいことやってるのはわかるんですよ。エレクトロと、他の多様な楽器をうまく混ぜ合わせて”うた”のアルバム作る技術で言うなら、レディオヘッドの切り開いた道に続くことのできる数少ない存在だとも思います。でもなあ〜、その細密画のような細かな音のタペストリーから漏れ出る肝心なメロディと歌詞、これが正直、今までで一番ピンとこなかったんですよねえ。特に歌詞かな。初期の彼にあった、旅情のようなセンチメンタリズム、あれが胸を掴むとこだったのに、前作くらいからそれが希薄になり、メロディもソウル、ゴスペルを意識しているのはわかるんだけど、「ああ、そういう仕事、コラボでやってたもんね」とは思ったものの予測のできる範囲というか、それが感動にまではつながらなかったというか。どんなにテクニカルになろうが、レディオヘッドでこういう芯の部分での物足りなさって感じたことないんですよね。すごいものを打ち出してきたのはわかるし、ここまでアヴァンギャルドなものがグラミー賞の最優秀アルバムにノミネートされたことも衝撃ではあるんですけどね。

49.Serf's Up/Fat White Family

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49位はファット・ホワイト・ファミリー。彼らは現在、サウス・ロンドンのロックシーンのリーダー格みたいな存在で、すごく信頼されているバンドです。ちょうど去年、シェイムが出てきたときに、彼らがそう語ってたことで僕も気になってたバンドです。7人組で、いうなればヴェルヴェット・アンダーグラウンドが厚いベース入れてポスト・パンク調にファンクやったようなサウンドですけど、これが一見、すごくマニアックな感じも雰囲気なんですけど、案外ポップで中毒性がある感じが気に入ってます。なんとなくですけど、聞いていて、ブリットポップの時代に耳に聞こえていたセンスのいい部分だけを足したような感じも聞いててしましたね。ちょっとトリップホップっぽいベースとか、シューゲイザー経由のヴェルヴェッツとか、ときにバロック・ポップ的なストリングスとかまで入ったりして。なんとなく90sのリバイバルの兆しも感じてはいるので、今後、時代にうまくはまってくるかもしれません。

48.Hypersonic Missiles/Sam Fender

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48位はサム・フェンダーのデビュー・アルバム。これは前にも書きましたけど、「キラーズ経由でブルース・スプリングスティーンに目覚めた若者」な感じがして、いまどきのイギリス青年っぽい、わかりやすい音楽的影響が感じられたのが個人的には興味深かったですね。ちょっと勢いあまりにも歌い方やサックスの使い方までが露骨に本家過ぎるんですけど、それもご愛嬌というか。それから、今、イギリスで旬な「男性ソロシンガー」のカテゴリーに、正統派インディ・ロック代表として参戦した感じも、それがポップのど真ん中でどう受け入れられるか、見ものです。あと、ニュー・キャッスルみたいな、イギリス中部の昔からの冴えない工業都市の現在を、スプリングスティーンの音楽的手法を引用して、リアリティを表現しようとするやり方も意外性あるミックス感覚でおもしろいと思います。

47.No Geography/Chemical Brothers

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47位はケミカル・ブラザーズ。彼らのアルバムを年間ベストに入れたいくらい気に入ったのって、かなり久しぶりです。おそらくこれ、21世紀になってからはじめてなんじゃないかな。最後に本当に気に入ったアルバム、サード・アルバムだったから。このアルバムに関して言えば、90sのエレクトロ・ミュージックの非常に豊作の時代を築き上げた実力者である彼らが、2010年代前半のEDMの時代もめげずにセル・アウトすることなく自分にとって素直なビートを負い続けた結果、逆に時代が彼らを再び評価するようになった、という感じじゃないかな。やってる事自体、黄金期とそんなに変化ないんですけど、やっぱり、調子の必ずしも良くなかった時期を乗り越えたか、曲そのものにリフレッシュしたひらめきのようなものを感じるし、明快にわかりやすいんですよね、今回。ゲスト選びのセンスも昔からいいんですけど、今回の「Eve Of Destruction」でのAuroraとゆるふわギャングのneneはこれ、久々に大成功した例じゃないかな。

46Amyl & The Sniffers/Amyl & The Sniffers

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46位はアミル&ザ・スニッファーズ。オーストラリアのメルボルンで結成されたロックンロール・バンドです。「ロックが不振」と言われている時期っていうのは「新しいアイデアが出しにくい時期」でもあるので、そういうときにはむしろ、「新しさはないけど職人的にいいバンド」が地味に育って言ってほしい時期なんですけど、現在世界でも屈指のオーストラリアはそういうバンドを時間かけて育てる土壌がまだ残ってますね。彼らは結成こそ、2016年とまだ若いバンドなんですけど、地元の英雄、AC/DCはもちろんのこと、ギンギンな飛ばしっぷりからはモーターヘッドの影響なんかも感じさせますね。切れ味鋭いロックンロールを聴かせてくれます。加えて紅一点フロントガールのエイミーが、ヤー・ヤー・ヤーズのカレンOにも通じる、よく通るキンキン声で、きっぷと端切れのいいヴォーカルを聞かせてくれているのもいいです。挫折せず、ずっとやり続けていけば、かなり出世しそうな雰囲気ありますよ。

45.No Home Records/Kim Gordon

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45位はキム・ゴードン。あのソニック・ユースのキム姐さんですけど、齢65にして本格ソロ・デビューです。それだけでも十分ニュース・ヴァリューはあったんですけど、本作の内容は、これまでそれほど熱心なソニック・ユース・ファンとは呼べない僕でも惹きつけられましたね。このアルバムでキムさん、なんとトラップやってます!その太いベースラインとプリセットされたリズムに乗りながら、そこにソニック・ユースのときからの必殺の武器だった鋭角的なエレキギターが自在に暴れまわる、いわば、「更新版ソニック・ユース」の趣があります。元旦那がやってることより面白い上に斬新かな。これ、僕、思うに彼女、「当たり前」のこととしてやったんじゃないかと思うんですね。「私らの若い頃は、他の音楽で面白いものが出てきたら、それに飛びついてロックに取り入れるなんて当たり前だったわよ」、みたいな感じで。たしかに今の若いバンドから、こういうアイデアが本来は出るべきであって、それを還暦超えたアーティストに見本を示されるべきでは本来ないんですけどね。でも、こういうことがサラリと貫禄持ってできるのはやはり流石だし、今後も刺激的なアルバム、お願いしたいですけどね。

44.Quiet Signs/Jessica Pratt

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44位はジェシカ・プラット。LAを拠点に活動する女性フォークシンガーです。彼女、今回に限ったことでなく毎度なんですけど、「こえは一体、いつの時代に作ったの?」って不思議になるくらい、かなりマニアックなアシッド・フォークの作品を作ります。それはまるでニック・ドレイクの女性版的な雰囲気を持つ、憂いを持ったサイケデリックなトラッド・フォークで、「実はこれ、1969年にリリースされたフォークの隠れ名盤なんだ」といってだましたら、信じる人、本当に多そうな感じです。もう、アレンジとか、マイクの音の拾い方から、その当時のやり方の完全再現でもしてるんじゃないかというくらい、60sの雰囲気に忠実です。それゆえ、ときに「ジェシカ自身の生身の歌と言葉が聞きたい」ってなったときにオリジナリティは果たしてどこにあるのかな、という疑問はやや残ります。ただ、それでも、この巧みに構築された世界観への陶酔感覚を妨げることはありませんが。

43.Help Us Stranger/The Raconteurs

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43位はザ・ラカンターズ。このアルバムで思い知ったのは、現在のロック・シーンにおけるジャック・ホワイトの浸透力、及び影響力ですね。だって、サイド・プロジェクトで、しかも10数年ぶりに出したアルバムで全米1位とってしまうわけですから。このロック不況の折にですよ。彼の2010年代が、音楽界全体での寵児だった2000年代と比べて地味だったことは明らかですけど、さすがに実力と底力はあったというかね。さらにこのアルバム、内容がすごく良かった。これまでこのバンドにおいてジャックって、どこか遠慮したところがあったと思うんですよね。ただ、それがファンにとっては非常に食い足りなさと欲求不満を残してしまっていた。そこに周囲も気づいたのかな。ここでは、ジャックが思い切り目立つ環境を作ってます。自分がヴォーカルの曲は当然のこと、ブレンダン・ベンソンがヴォーカルの曲でもハモリで目立ち、思いっきり派手なギター・ソロもキメる。で、それでワンマンになるか・・と言ったら、案外そうでもなく、ブレンダンも、「ビッグ・バン・セオリー」のエイミーに似てるジャック・ローレンスも「バンド内ジョージ・ハリスン」というかNo3としてしっかり目立ってますしね。これで、このバンドの運営指針が見えたと思うので、活動、活発化するといいですけどね。

42.Fear Inocolum/Tool

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42位はTOOL。こと、ラウド・ロックのファンにとっては、今年はTOOL復活の年として記憶に残った1年だったでしょう。ここ数年、ラウドロック系のサイトの書き込みとか、メディアによっては記事にもなってましたけど「TOOLのアルバムはいつ出るのでしょうか・・・」というのは、「いつストリーミング解禁されるのでしょうか・・」というのはネタになってましたからね。その沈黙が今年、13年ぶりに遂に破られ、過去作もストリーミング化されたわけですから、そりゃ興奮しますよ。僕にしてみれば、ラウドロック以前に「グランジの時代の優れたオルタナティヴ・ロック」のバンドでもあり、それこそ四半世紀前から好きできいてたバンドですから、そりゃ楽しみでしたよ。で、結果ですけど、13年ブランクがあった割に摩耗も劣化もなく、ただ単に「10 000 Days」も次に出たアルバムとしてすんなり受け止められたのが良かったです。あのアルバムからの違和感も時間の経過も、時代遅れな感じも全くなかったですからね。ただ、クオリティと彼ららしさは保ったものの、「歴代最高傑作にならなかった」、そこだけは残念でしたけどね。「アニマ」(96年)「ラテララス」(2000年)をはじめて聴いたときのプログレッシヴな進化と展開力の拡大に対しての驚き。それがなかった。それさえあれば、復活の嬉しさとともに本作が伝説化してたと思うんですけどね。

41.Titanic Rising/The Weyse Blood

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41位はザ・ワイズ・ブラッド。前々から非常に評判の良かった女性シンガーソングライターですよね。ナタリー・メリングという女性で、これで4作目になるんですけど、サブ・ポップ移籍の話題性と、ラナ・デル・レイをはじめとして本作を絶賛する人が相次いだことから、本作は全米で34位まであがる、これまでの彼女のキャリアからは桁違いのヒットとなりました。僕はこれの前作から聞いてますけど、それまでの作品はもっと浮遊感ある実験的なサイケで多少エレクトロの要素なんかも感じさせていたものでしたけど、今回は芯の部分となる、ジョニ・ミッチェルやキャロル・キングみたいなトラディショナルな女性SSWのスタイルを全面に出して勝負してます。もともとスケールの大きなメロディを書ける人だし、その才能がさらに大きく進化したのは認めます。ただ、この人、歌い方が朗々としすぎで、リズムの要素が少ない人があるゆえに、何曲か聴くとアダルト・コンテンポラリーとかヒーリング・ミュージック聴いてるような錯覚に陥るんですよねえ。僕が聴くにはちょっとコンサバ・テイストが過ぎるというか。悪い意味でエンヤに近づく瞬間があるというかね。そっちに行ったほうが大衆的な人気は出るとは思うんですけどね。






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