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沢田太陽の2022年上半期ベスト・シングルズ Top10

どうも。

今週は、3ヶ月に1度恒例の「10枚のアルバム」、これをやるんですけど、その前にこれをいきたいと思います。

はい。上半期ベスト・シングルズです。去年からやりはじめた企画ですね。僕の場合、上半期のベスト・アルバムに関しては、年間ベストの楽しみを損ねてしまいそうなので基本的には今後もやらない方針なんですが、シングルだとアルバムとは必ずしも重ならないし、それでもなんとなくの年間ベスト・アルバムの軽いヒントにはなるんじゃないかな、という気もするのでやってます。去年やってみて意外と楽しくもあったので。

選んだのはトップ10のみ。早速10位から行きましょう。

10.About Damn Time/Lizzo

https://www.youtube.com/watch?v=IXXxciRUMzE

10位はリゾの「About Damn Time」。2019年に出た前のアルバムのときは、R&Bの中において個性はものすごくハッキリとはわかったんですけど、あまりにも突飛すぎたんで一過性で終わる可能性もあって若干判断に躊躇したところがあったんですけど、この曲聴いてそれが前作のときよりもより磨かれてて同じように受け入れられたのを見て「これはいける」と判断したのでここにも入ってます。1980年前後のチャカ・カーンそのまんまのど直球なシティ・ポップをアメリカのR&Bでやってくる人いないし、そこに乗せる陽気でポジティヴなメッセージも、彼女自身が苦労してきたであろうことが込められてるからストレートに届いてくるし。アルバムが来月の彼女ですけど、近い時期に出るビヨンセの待望の新作と並んでチャート賑わすような気がします。

9.These Are The Days/Inhaler

9位はインヘイラーの最新シングル。若いバンドから1曲選ぼうと思ってて、マネスキンの最近の曲とかスポーツチームのアルバムの先行曲もいいなと思ったんですが、「サプライズ」も込めてこの曲でしたね。このバンドって、「ボノの息子」というネタばかり先行してて楽曲的には何の変哲もない感じの印象だったんですけど、その「何の変哲もない」ながらにこの曲はかなり耳をぐいぐい引っ張ってくるなと思って気になった次第です。おもしろいことにこれ、若き日のU2がエコー&ザ・バニーメンの曲歌ったような不思議さもあるんですよね。その両バンド、1983年くらいはよく比較もされてたのでなんか不思議な気分にもなったりして。そんなこんなで「当初思ってたより出世するかもな」と感じて次のアルバムが楽しみになってきたりしています。

8.Silk Chiffon/MUNA feat Phoebe Bridgers

https://www.youtube.com/watch?v=fhyk9rchC2c

続いて8位はMUNA。まだなじみが薄いガールズ・バンドですが、フィービー・ブリッジャーズのレーベル「サッデスト・ファクトリー」からの、いわば出直しアルバムの中からの先行シングルで、フィービー自身が共演しています。この曲は、たとえば最近だったらペイル・ウェイヴスとかビーバドゥービーがやってるタイプのアヴリル・ラヴィーンをちょっとインディよりにした感じというか、そういういわば「Y2Kリバイバル」とも言われてるタイプの曲を一番うまく決めた感じですね。初期アヴリルのソングライターのThe matrixのアコースティック・サイドをうまく研究した感じがあるというか。フィービーもMUNAの3人も小学生の頃にそういうサウンドがはやってたのでドンピシャなんでしょうね。これの入った出たばかりのアルバムも素晴らしいですよ。明後日あたりに話しましょう。


7.Glimpse Of Us/Joji

7位。これは今まさに現在最大のサプライズ・ヒットですね。Jojiの「Glimpse Of Us」。日本は関西出身でオーストラリアでキャリア築いて、今国際的な存在になろうとしている日本人のR&B系のシンガーソングライターですけどね。彼のことは以前から「フランク・オーシャンとエモ・ラップの中間みたいなことやろうとしている、でも7:3でエモラップに近い人だな」みたいな印象持ってたんですけど、この曲で一気に三皮くらい向けた感じですね。エルトン・ジョンの名曲「悲しみのバラード(Sorry Seems To Be The Hardest Word)」あたりを思わせるどストレートなバラードで。最近のパターンにないタイプのヒットだったんですけど、これがいきなりSpotifyのグローバル・チャートで1位にまでなって。彼が今後出すアルバム次第でもあると思うんですけど、もしかしたらR&Bとかエモ・ラップの潮流、変えうるものになるかもしれません。

6.Break The Man/Tears For Fears

https://www.youtube.com/watch?v=zAwFd1wz_-Y

続いて6位はティアーズ・フォー・フィアーズ。ここのところ立て続いてる「数10年ぶりの全米、全英トップ10返り咲き」、今年にそれをやったといえばケイト・ブッシュ(新曲じゃないけど)、デフ・レパード、そしてティアーズ・フォー・フィアーズ。僕的にはTFFが一番刺さりましたね。やっぱ世代的にMTVニュー・ウェイヴ・バンドの硬派なシンセポップと、ソフィスティ・ポップの中間点的存在の彼ら、かなり貴重な存在で、そのセンスはThe 1975などが頻繁に名前を挙げることで再評価されていたんですけど、その波を本人たち自身が露骨に意識した名曲がこれですね。もう、かのウィーケンドもサンピリングした初期の名曲「Pale Shelter」そのまんま。間を貯めたカッティング・ギターでのイントロといい、今のこの時代に狙ったようなリンドラムの入り方といい、そして何より彼ららしいメランコリックな中にほのかな光が当てられたようなメロディの独特の陰影。もう、これぞTFFですね。この伝家の宝刀を今見せることができたのは本当に嬉しかったです。

5.Stay Soft/Mitski

トップ5に行きまして5位はミツキ。1〜3月の10枚のアルバムにも彼女の最新作選んだんですけど、あのときの10枚で、当時よりも印象むしろ上がってるのがミツキの「Laurel Hell」で、中でもこれが僕のお気に入りですね。このアルバムは大胆にシンセポップの方向性に舵とってる彼女なんですが、彼女の場合、声とメロディの組み合わせの個性がきわめてハッキリしてるので、どんなアレンジにしようが全く崩れない。また、メロディが強いので耳にずっと残るんですよね。サビメロ書く力は天性のものがあります。メロそのものに物語性があって、やけに洗練されているというか。彼女は孤独や疎外感を歌ったリリックでもカリスマ的人気があるんですけど、「ソフトなままでいて」、つまり「強がっても心は弱いままでいい」というのも一貫した彼女らしいメッセージが込められてて代表曲として愛されそうです。

4.King/Florence + The Machine

https://www.youtube.com/watch?v=L62LtChAwww

続いて4位はフローレンス&ザ・マシーンの「King」。フローレンスって、よくよく考えれば、今の世界で女性アーティストでロック方面からフェスのヘッドライナーとれる貴重な人材なんだから今のシーンの頂点に立っておかしくない人なんですけど、なんか悪い意味で欲がないというか、自分の心地よい表現で寸止めしちゃうところが僕的には歯がゆかったりもしたんですけど、これは力強いアンセム来ましたね。彼女らしいハープの鳴り響く神秘性を保ちながらも力いっぱい叩いたスネアの連打の盛り上げとともに「私は母でも嫁でもない。キングだ!」。あえてクイーンでなく男の名称でいいきってしまうところがノン・バイナルな強いメッセージになって万人に響く。すごくうまい歌詞だと思います。MVでのケープが大仰なのも「そうこなくっちゃ!」って感じでグッと来ます(笑)。この曲に関しては、「Heat Waves」の国際的ヒットで一躍注目されたグラス・アニマルズのデイヴ・ベイリーが共作者で貢献しているのも見逃せないです。

3.Chicken Teriyaki/Rosalia

3位はロザリアの「Chicken Teriyaki」。今年の上半期でも、世界的に見て圧倒的な怪作だった「Motomami」からのカットですね。あのアルバム自体、「Saoko」「La Fama」「Hentai」と代表曲になりそうな曲、ぎっしり詰まってますけど、彼女の問答無用の勢いを一番よく捉えた曲で言えば、僕はやっぱりこれかな。ぐいぐいと押してくるオールド・スクール・ヒップホップのアッパーなビートに乗りながら、スペイン語と日本語がちゃんぽんになった言葉を本能の思いつくままにきっぷよくフローさせるその姿が問答無用にかっこいいです。なんか、ロックンロール初頭の頃のリトル・リチャードの「バッバラブーバラ、ブンパンプン」っていうシャウトみたいな、「意味わかんないけど、そのフレーズに込めた理屈を超えた爆発的、衝動的パワーがかっこいい」とかの例ってありましたけど、そういうものを今のロザリアの動物的直感と声の力強さに感じますね。

2.Chaise Longue/Wet Leg

https://www.youtube.com/watch?v=Zd9jeJk2UHQ

そして2位にWet Legの「Chaise Longue」。これも、2022年を代表する大アンセムですね。彼女たちの場合、「曲がストロークスみたいでかっこい」というパッと聞きの評価がありますけど、MVとか歌詞までしっかり見ないと本当の良さわかりません。もう、自虐的、「あるある」系のユーモア炸裂なんですよね。この曲でも「学校通ったけど結局、成績はビッグなDだった」とか、「あなたのマフィン、バター塗ってる?」っていう青春映画の傑作「ミーン・ガールズ」の中の有名な、女の子たちのあいだでのかなりきわどい言葉(まあ、かなり卑猥なことですよ、笑)が出てきたり。「サエない文化系女子」の本音ジョーク連発でね。

そのウケ方は

先日のグラスとでの、この曲の際のバカウケぶりでもわかります。もう、1フレーズずつ大合唱でしょ。これは今年のグラストでも最も象徴的な瞬間に数えられてますね。実際、このあと、またアルバムの売上、すごく上がってるんですってよ。

 あと、「Wet Dream」っていう、もう一曲のアンセムも、女の子が車の中で欲情する話なんですけど、その歌をBBCのスタジオ・ライブで嬉々としてカバーしたのがハリー・スタイルズでした。

では1位に行きましょう。

1.As It Was/Harry Styles

https://www.youtube.com/watch?v=H5v3kku4y6Q

ということで、1位はハリー・スタイルズの「As It Was」です。

いつ以来なんでしょうね。その年のもっともクールな曲のひとつが、その年で一番世界的に売れた曲になる経験というのは。アウトキャストの「Hey Ya!」とか、それくらいかな?だとしたら20年くらいぶりか。それくらい、ポップとクールのバランスが絶妙に取れた名曲だったと思います。

 タイミングも絶妙だったんですよね。ワン・ダイレクションからソロをロックにこだわる形で異例の成功を収めて、「次で成功したらシーンの頂点に立てるよ」というタイミングで、いきなり、かのahaの「テイク・オン・ミー」みたいなどキャッチーな曲を、ハリー自身がずとこだわっている生演奏スタイルにこだわって簡潔に分かりやすく表現した。ちょうど今年が、前から記事に書き続けている「1986年くらいのリバイバル」に気分的に合致するタイプの曲(「テイク・オン・ミー」の世界ヒットは1985年の後半)と、ハリー自身のぶれないアーティスティックなこだわりが絶妙なバランスで結晶化した。そのケミストリーの大きさがとにかく光るこの上半期だと思いましたね。

 あんまり書きすぎると、「アルバム10選」で書くことなくなるのでこの辺りでやめときますが(笑)、音楽界の上半期MVPがハリーであったことは間違いないと思います。

では、全米チャートはさんで、明後日頃、「4〜6月のアルバム10選」、いきます!








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