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全オリジナル・アルバム FromワーストToベスト(第23回)イギー・ポップ/ザ・ストゥージズ (その1)24位〜11位

どうも。

今日と明日は久々に、当ブログ恒例、全オリジナル・アルバムFromワーストToベスト、行きましょう。

今回の対象アーティストはこの人です!

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つい先日、ニュー・アルバムも出たばかりですね。イギー・ポップ。彼でやってみたいと思います。

イギーといえば、伝説的ガレージ・ロックンロール・バンド、ストゥージズのフロントマンとして「パンクのゴッドファーザー」として讃えられることが多い人ですが、デヴィッド・ボウイとの重要な局面での意欲的な共演でも知られていますし、さらにいえば、ロック・ヴォーカリスト史上、屈指の美声の持ち主でもあります。今回はそんな彼の半世紀にも及ぶ活動の中から、ストゥージズ、ソロ合わせて全24枚に順位をつけて紹介したいと思います。今回24位から11位までを紹介したいと思います。

ではワーストから

24.BeatÉM Up(2001)

ワーストは2001年作の「BeatÉm Up」。イギーは確かに上半身裸の筋骨隆々な体を見せて壮絶にロックンロールを歌っている姿がカッコいいです。でも、この人はそれだけじゃないし、むしろ、それだけをやろうとすると。案外滑っちゃうことも少なくありません。それが特に悪い方向に出たのが2000年代ですね。なんかこの時代は「みんなの期待に応えよう」と無理したのか、、なんかパンクが空回ってしまってます。その中で、これが一番ツラいですね。この1作前にキャリア史上もっともスローなアルバム作って不評だったが故に、反動かこれ、かなり激しいアルバムなんですけど、きもちが空回ったか、とにかく曲が雑で、フレーズが全然頭に残りません。これをイギーだと思われたくない。そういう気さえ、当時したアルバムですね。おまけにこれ、ジャケ写までワーストです。

23.The Weirdness/The Stooges(2007 US#130, UK#81)

ワースト2は、2007年に発表されたストゥージズ、34年ぶりの復活アルバム。僕、「再結成する」と聞いた時は本当に嬉しくて興奮して2005年だったか、幕張のイベントで出演した時、見に行ったんですけど、もう失望があまりに大きかったですね。現役感あったのイギーだけで、残りのメンバー、全然精彩なくて、ただ「伴奏」してるだけなんですよね。「なんだ。そんなんなら、普段のイギーのバックバンドの方が全然いいじゃん」と悲しくさえなってしまったんですが、その悪いムードがこのアルバムにまで至っちゃいましたね。これも正直、なかったことにしてほしい一作です。

22.Skull Ring(2003)

ワースト3も2000年代ですね。この時は、ストゥージズとイギーのバンドの両方に演奏させて、曲によって若いアーティストの競演もやり、「パンクのゴッドファーザー」としてのイギーへのトリビュート作的な意味合いがありました。でもなあ。これは人選ミスですね。イギーって、グリーン・デイとかサム41みたいな、ギターの音色そのものに厚みがある音って、合わないんですよね。やはりストゥージズの時からそうですけど、もう少し鋭角的なエッジがあってドロドロしてないと。あの当時、ホワイト・ストライプスもハイヴスも時のロックンロール・バンドだったのに、そっち選んで欲しかったなあ。ただ、お下劣で孤高の、この当時のアンダーグラウンド・エレクトロ女王、ピーチズとの相性は良くて、彼女のアルバムでもイギー、共演しましたけどね。

21.Party(1981 US#166)

ボウイの友情もあり、70s後半に復活し注目されたイギーでしたが、そのあとにヒットが出ず、生活的にも非常に荒れていた時代の作品ですね。この時、モンキーズのソングライターとして有名だったトミー・ボイスを迎えてヒット狙いのアルバムを作ったはずだったのに、そういうポップな曲もうまく書けなかった感じですね。とにかく良い悪いの前に「印象に残らないアルバム」という感じですね。誰かの助けが必要な時期だったかもしれません。

20.Soldier(1980 US#125 UK#62)

「Party」の前のアルバムですね。これはセックス・ピストルズのシド・ヴィシャスの前任ベーシストのグレン・マトロックを共作者に迎えて作った、本来ならかなりパンクっぽさを狙ったアルバムです。確かに、聞けば、それ以前のアルバムよりハードエッジな感じになってはいるんですけど、ただ、ちょっとそこに徹しきれてない甘さを感じるし、70sから保っていた曲のクオリティがこの時期、ガクッと落ちてきてますね。スランプな感じは否めないかなあ。

19.Avenue B(1999)

ここから徐々に好きなアルバムに入っていきます。これは1999年に発表された、当時、「異色作」として捉えられた一作ですね。日本人にとっては、この前年にフジロックでの壮絶ロックンロール・ライブを見ていたから、このジャジーかつフォーキーなサウンドは面食らったというか。ちょうどグランジの後にイギーが元祖的にもてはやされていた余韻があった時期なので、特に反発は強かったですよね。僕も、タンゴっぽい曲まで聴かされた時にはどうしようかとも思いましたけど(笑)、でも、今聞き返すとこれ、全然悪くないというか、むしろ、イギーの持つ渋い低音の魅力を活かした「初のスタンダード・アルバム」とまで言っちゃっていい気がします。これの受けが悪かったことで、しばらくまたパンク的なアルバムを作り続けるんですけど、それらが上に記したようにことごとく良くなかったのは、彼の中のどこかに「本当にやりたいのはAvenue B みたいな作品なのに」と後ろ髪を引かれる思いがあったからなのではないかと僕は思っています。そして、今から振り返ると、このアルバムでも、この”ダンディ路線”は手加減してた方なのではないかと思います。

18.Instinct(1988 US#110 UK#61)

実を言うと、これが僕がイギーで最初に聞いたアルバムです。この当時、「イギーがロッカーとして復活」みたいな宣伝のされ方もされてましたね。僕は、その当時多くいたメタル好きの友人から勧められて聞いてみたんですけど、「えっ、この人って、そんな人だったんだっけ?」と、ニュー・ウェイヴのイメージしか漠然と持っていなかったこともあって素直に「カッコいい!」と思いましたね。イメージとしては、ガンズ&ローゼズとかザ・カルトみたいというか。「飾り気のないストレートなハードロック」という感じですね。昔はこれ、お気に入りだったんですけど、この企画やるに際して聞きなおすと、ちょっと・・でした(苦笑)。う〜ん、いくらロックンロールでも、ここで聞かれる、「いかにも80s末のメタルブームの時みたいな、コンプレッサーで膨らませた分厚いギター」ってイギーには似合わないというか。やっぱり、イギーがロックするなら、ギターはビリビリしてないとダメです。後年振り返られる機会が少ないのは、こうした理由からだと思われます。

17.Apres(2012)

2000年代末に、突如としておフレンチ路線に走ったイギーの、その系では第2弾のアルバムです。その前のやつより、よりシャンソン色が強くなって、ナチュラル・エコーのかかったイギーの深い低音の揺れが、古き良きジャン・ギャバンが出てた時のようなフランス映画みたいでなかなかカッコいいです。収録時28分と短いので、なんかEPみたいな雰囲気もあるのでこの順位にしましたが、かなり好きなアルバムでもあります。

16.Kill City/With James Williamson(1977)

これはイギーが、ボウイの手によってソロ。キャリアを積み上げ初めた時期の、ストゥージズの未発表曲集ですね。ジェイムス・ウイリアムソンというのは、グラムロック期の、ストゥージズ第2期のギタリストです。録音は1975年頃。曲のクオリティとしては、黄金期のストゥージズに劣らぬできでいいとは思います。ただ、聞いててどこかに「レア曲集」の意識が消えませんが。個人的には、この時期の音源より、イギーのライブ・レパートリーになりながらアルバムとして発表されることのなかった「I Got A Right」「I'm Sick Of You」あたりの、1971年くらいの編集盤が出て欲しいんですけどね。

15.Naughty Little Doggie(1996 UK#77)

「我が愛しきグランジ・デイズ」って感じですね。この96年当時といえば、まだニルヴァーナやパール・ジャム、サウンドガーデンと一緒に、ニール・ヤングとストゥージズの過去カタログを一緒に愛聴していた時代です。だから、このアルバム、ドンピシャだったんですよね。すごく統一感のあるグランジ的なロックンロール・アルバムというか。この当時、Rawなギターと内面で沸々と煮えたぎる情念を持った音に憧れていたものです。そう思って、もっと上位に行くかなと自分でも思ってたんですけど、今、冷静に聞くと、「全体としてはまとまってるけど、突出した曲がないよね」という印象になって、ここになりました(苦笑)。その意味で、この前作の方が出来はやっぱり上なのかな、と思います。

14.Free(2019)

これが出たばかりの最新作です。「イギー、72歳にして、やりたいこと、やる宣言」したアルバムです。その宣言通り、とにかく好き放題やってますね。前半こそ、前作に雰囲気近いギター・ロックをやったりしてるんですけど、途中からかなりジャズ色が強まって、後半、ポエトリー・リーディングですからね。途中からの展開はボウイの遺作「ブラックスター」に雰囲気が似ていますね。欲を言わさせてもらうならば、途中からのジャズ色の強いとこだけに特化して1枚一貫性のあるアルバムを聴いてみたかったんですけどね。もしかしたら今後、ポエトリー・リーディングだけのアルバムとか、作ってくるかもしれないですけど。

13.Zombie Birdhouse(1982)

これ、世間一般では「駄作」扱いですけど、僕はこれ、「今の視点から別の評価が可能」な作品に位置付けてます。この当時、イギーは商業的に売れない底をついた状況である上に私生活も乱れていた時期。このアルバムでのシンセ・ポップ路線も、上から命令された末での対処だったりするのかもしれない。ただ、怪我の功名というか、そこで施された異色のアレンジが故に、他のアルバムでは聞けない、「ここだけのイギー」が聞けるのは確かで「80sシンセ・ポップのカルトな良作」としては聞き応えあります。統一感もすごくある。作品によっては、寝かせることで味が染みてくるものがあるものです。そして、微妙にこの次にリリースするアルバムにもつながります。

12.Ready To Die(2013 US#96)

これはストゥージズとしては最後のアルバムですね。この前に、初代ギタリストのロン・アシュトンがなくなってるんですが、その穴を二代目ギタリストのジェイムス・ウィリアムソンが埋めています。それが功を奏したか、ジェイムスのギターに現役感が強いこともあり、キレの点で2007年の「Weirdness」とは全然違います。あと、イギーの方も、無理にストゥージズ・サウンドを再現させることにこだわらずに、「今の自分にできるロックンロール」をストゥージズのメンバーとやればいいだけ、と割り切ったみたいな感じが曲の端々から感じられて、すごく自然に聴けるんですよね。これ、「ストゥージズとしてのファイナル・アルバム」という言われ方もされてるようですが、いい締めくくりだったと思います。

11.Preliminaires(2009 US#187)

この企画では11位に「個人的に推したい裏名盤」を置くのが習慣化してるんですが、イギーだと僕はこれですね。2009年、還暦を超えてイギーが本当にやりたいことをやり始めたアルバムですね。いきなり、あの魅惑の低音で囁くようにフランス語を繰り出し、シャンソンの名曲「枯葉」を歌い始めるのでビックリするんですけど、そうしたシャンソンもありながらも、同時にジャズのスタンダードっぽいものからソウル、そしてブルーズ・ロックまで、彼の本来持つバリトン・シンガーとしての力量をフルに発揮したアダルトな歌のアルバムですね。イギーの場合、もう昔からフランク・シナトラへの敬愛を隠さない人だし、それに価する魅惑の美声も持っているわけですから、こういう路線、どんどんトライさせて欲しいんですけどね。攻撃性が表現できながらも、こんな優雅な気品に富んだ歌を聴かせられるパンクロッカー、半世紀たっても他に出てきてないんだから。





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