うなり

 音現象の「うなり」。テルミンの発音原理でもあるので、この単語には反応してしまいます。2つの振動の周波数が一致していれば何も起こらない。少しでも両者の振動周波数の違いがあると「第三」の音(現象)が、どこからともなく現れる。
 片方が440Hz(ヘルツ)、もう片方が441Hzで振動していると、1秒に1回の周期の振幅変調「1Hzのうなり」が生じる。誰もそのリズムを奏でていないのに、二つの振動数の相違から、まるで幽霊かだれか第三者が奏でている様にリズムが聞こえてくるなんて不思議です。

 先日飛行機に乗っていると、これから離陸で滑走路を走っている頃から機内で高い「ミ」の音(E5あたり)を中心にうなりが聞こえてきます。それは離陸してからも続き、あるときはうなりの周波数が遅くなり、いよいよ二つの振動が一致したかと思えばどんどん離れていくなど、二つの振動が生み出すうなりの振る舞いに、しばらくは聞き入っていました。

 テルミン演奏に取り組んでいると音の高さの制御のに注意が向くのはいうまでもないですが、私はリズムや緩急など「時間制御」にも同様に強い関心があります。例えば、憂いや悲哀を感じさせる場面にそのビブラート速さは違和感があるとか、無念さや、絶望の先にある希望を表したいので一呼吸ビブラートのかけ始めを遅らせるなど。すべて独りよがりだと言われてしまえばそれまでですが、こういう緩急もその人なりに奏でられるのがテルミンの魅力だと考えています。

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