アッバス・キアロスタミ『桜桃の味』

 映画評です。映画評といっても、そんなにがっつり詳しくは、語れないので、感想を載せたいと思います。

 記念すべき第1作は、アッバス・キアロスタミ監督の『桜桃の味』です。ファンの方なら、最近、Blu-rayやDVDが発売して、歓喜しているでしょう。自分も、そのうちの一人です。キアロスタミ監督は、イランの監督で、これを読んでいる方々は、あまり馴染みのない監督かと思います。自分も、名前は知っていましたが、あまりピンとこない、スルーしていた監督です。
 しかし、アマゾンでは、DVDが廃盤になり高値で取引されていたりしていました。今回のDVD再販は、僥倖といっても過言ではありません。

 キアロスタミ監督は、2016年にパリで亡くなりました。私がそのことを知ったのは、3カ月後の9月か10月あたりです。その頃私は、適応障害に悩み、身体の調子を崩してました。その時に、渋谷のユーロスペースでは、特集が組まれて、これは何が何でも行かなくては、と思い立ち、『桜桃の味』をはじめ、『友だちのうちはどこ?』『そして人生は続く』『オリーブの林をぬけて』のジグザグ道三部作、『ホームワーク』を鑑賞しました。どれも、慈愛に満ちた作品ばかりで、涙なしには見られませんでした。同時に、自分は、生きていていいんだ、と喜びました。同時に、死んでしまったら、『桜桃の味』は味わえなくなるのだと、気付きました。

 キアロスタミ監督は、この『桜桃の味』で、カンヌ国際映画祭の最高賞、パルム・ドールを受賞しています(今村昌平監督の『うなぎ』と同時受賞。こちらも名作です)。
 映画の内容は、ある中年男性が、自殺をしようと企て、崖に穴を掘った。その穴に彼を埋める手助けをしてほしく、まず最初に、クルド人の兵士に、声を掛けたが、うまくいかず、次にアフガニスタン出身の神学生に、話を持ち掛けるが、神に背く行為だとして、拒む。3人目にして、博物館にいる老人の剥製士に頼んだが、そこで彼は、自殺を目論む中年男性に、人生の喜びを説く。そして、剝製士は、あなたは自殺しない、と言い、強く信じて別れる。そして、ラストに向かうが、起承転結があり、転と結にかけていくところ、これが何といっても味わい深い。
 感想としては、言葉にできないくらい、ものすごい素晴らしい映画でした。まず、一切、音でごまかさず、BGMがほとんど皆無に近く、自然そのものを映し出そうとしている感じが良かった。一番印象に残ったのは、老人の剥製士が自殺を目論む中年男性に、人生の喜びを教えているところでした。ここのシーンは、涙なしでは見られない、そんな感じでした。ラストは、ネタバレになるのであまり言いませんが、映画史に残る終わり方をしています。これは、驚きます。

 イランの監督は、みなさん、あまり馴染みがないかと思いますが、一度観てみてください。キアロスタミ監督映画作品は、ものすごく人生が豊かになります。また、別の作品を紹介できれば、と思います。

 それでは、次回、また会う日まで。

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