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Vol.3 木更津 牛込のヒーロー

何かと話題になっているアサリ。いよいよ潮干狩りのシーズンが到来した。2022年3月19日は、牛込漁港の潮干狩り解禁日。東京湾で最もアクセスのよい潮干狩り場としても有名な牛込海岸。今年もたくさんの思い出を作りに千葉の海へと足を運ぶことになるだろう。

牛込海岸は東京湾の自然の干潟、盤洲干潟の最北端に位置する。盤洲干潟は東京湾の数少ない現存する干潟の中でも最大の干潟である。牛込漁港ではこの豊かな干潟を利用した海苔漁やアサリ漁が現在でも行われている。しかし、これほど大きな干潟とは言えども、気候変動の影響などでアサリや海苔の採取量が年を追うごとに減ってきており、漁師の高齢化なども相まっているのは全国の例に違わない。そうして昨年、2021年4月1日、木更津の漁業復興に向けて、木更津の5漁協が合併し新木更津漁協が新たに設立された。

アサリは昨年はあまりとれなかったようだが、今年の海苔の生産は例年並み。3月になれば海苔漁も最後の収穫時期。例年であれば4月10日まで行う海苔漁だが、東京湾の温度が高いためか、3月に入ってから海苔の育ちがいまいちの様子。

そんな牛込海岸で春の風物詩として昔から賑わいをもたらしてくれるイベントこそが『潮干狩り』である。先週には地元の漁師さんが大きな漁港のゴミ拾いをしてくれたり、アサリの外敵のイボキサゴの駆除をしてくれた甲斐もあって大盛況。小さな子供を連れた親子連れやツーリングの目的地としてやってきているライダーなど開始早々長蛇の列。初日限定のアサリの味噌汁や生海苔の手土産までもらえる賑わいぶり。当初の雨予報も覆し、春の陽気に包まれた潮干狩り解禁日となった。

海苔、アサリの漁獲量が低下している中、新たな名産物として注目されているのが牡蠣である。通常の牡蠣いかだの垂下式やシングルシードとは一味違う育成方法を使っている。そのアイデアを持ち出してきたのが牛込漁協(旧)の千手さん。ヒントになったのは海苔養殖で欠かせない「海苔ひび」。ひびとは海苔をくっつけるために使う木や網など漁具のこと。そのひびに専用の籠を使って牡蠣を育てている手法を試みた。盤洲干潟という立地をフルに活用して潮の満ち引きという自然の力と今までのノリ養殖の経験が見事にマッチング。見た目はそれほど大きくないが丸い形の牡蠣で身がぎっしり入っていて、中身はぶりっぶりのしっかりした歯ごたえがあるのが特徴の牡蠣が生まれた。味は濃厚で甘いのだが、妙にクリーミーで甘い牡蠣というのではなく、これぞ牡蠣の甘さと言わんばかりの味が口に広がる。まだ非売品だが、早くブランド牡蠣として商品化してほしい一品。この牛込産の牡蠣は木更津市内の一部のお店やふるさと納税でも手に入る。是非、ご賞味あれ。

牛込漁港には気のいい漁師さんが多い。挨拶してもちゃんと返してくれる人も多く、海苔やアサリのことも詳しく教えてくれる。先日もビーチクリーンをしていると「悪いね、本当は(海をきれいにするのは)漁師の仕事なのに、ありがとうね」と声をかけてくれる漁師さんもいる。そんな心温まる漁港だ。

このように海や浜をきれいにしてくれる漁師さんたちの思いの詰まったアサリや海苔をたべれば、おいしさはさらに倍増するに違いない。本当に感謝しかない。そんなきれいな心と海をもちながら、未来に向かって突き進む漁港、それが牛込漁港にいるヒーローたちの姿だった。

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