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漁業の利益の守り方1(SDGs14.b その7~海の豊かさの守り方b-3)ブランド魚と漁業の6次産業化

漁業の強制労働を取り締まったからといって、魚自体の単価が上がるわけではもちろんありません。でも海外から入ってくる安い魚が減って日本で獲れた魚が正しい価格で売れる状況には近づくことができるはずです。では「正しい価格」とは何でしょう?価格とは、売りたいものを持っている人とそれを欲しいと思っている人がお互いに折り合いをつけて、これならいいねと納得できた金額のことを言います。つまりその商品の価値をどのようにとらえるかによって価格というのは決まります。例えばいつも行く店では500mlの水が100円で売っているとします。あなたは1滴の水も飲まず3日間ずっと砂漠を彷徨うことになりました。するとようやく自販機を見つけました。その自販機にはいつも見かける500mlの水が1000円で売っていました。あなたは払いますか?それとも我慢しますか?この状況であれば高くても買ってしまうかもしれません。そんなのずるいというかもしれません。でもこれが資本主義経済ってものです。誰がどこでどのように商品を求めているのかというだけの違いで価格というのは変動します。価格というのは単なる価値を測ったもので、いうなれば価格なんてないようなものです。その商品に追加のストーリーや価値をつけることができれば価格を上げることができるのです。それを付加価値といいます。

では具体的にどのようにすれば負荷価値を付けられるのか。もっとも昔からある手法は魚のブランド化です。実際アンケート結果を見ても海の現場の漁師さんにとっても消費者にとっても納得できる値上げです。

水産庁 漁業・漁村に求められるもの 
http://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/h21/pdf/h_1_1_3.pdf

例えば同じサバはサバでも、石巻で獲れる金華サバと佐賀関で獲れる関サバは有名です。金華サバは通常出回るゴマサバではなく、マサバです。しかも身が大きく、水をはじくくらい脂がのったサバです。高い時には1Kg2万円で取引されることもあるほどです。(※1)一方関サバは一本釣りに徹して、魚にストレスを与えず釣ることによって活〆で取引されるサバです。こちらも1匹6000円でも取引されることがあります。(※2)通常のサバであれば200~300円のところが破格になります。それでも魚としては1匹は1匹です。そして今最もホットなブランド激戦区が日本海を中心としたのズワイガニです。越前ガニ、加能ガニ、松葉ガニ、最近では輝といったブランドカニが出てきました。それぞれ細かな規定がありそのすべてにクリアしたものがブランドカニの特別なタグが付けることが許されるのです。(※3)

とはいえ、どこでも名前を付ければ済むわけではありません。ブランドは一朝一夕にはいきません。ちゃんと普通に流通している魚とはわけが違うことが一般人にもわからないといけないのです。そして何より長年の実績と安定した信頼を一般人に築いていかなければいけないのです。それさえクリアできれば日本はその可能性に満ちているかもしれません。日本には3700種類の魚がいて、地域に特色のある海域を持ち、四季によって変わる旬の魚がいます。やりようによっては地域色を出したブランド魚でいっぱいになるかもしれません。

でもブランド化には相当な根気と辛抱と労力が必要になります。そこで最近では違う形で付加価値をつける水産関係者が増えてきました。それが漁業の6次産業化です。生産の1次産業、加工の2次産業、流通や販売といったサービスの3次産業。これをすべて行うことで、合計6次産業と言います。漁業でいうと、釣ってきた魚を自分たちで加工して、一般のお客さんへ売るという全工程を一手に担う形になります。(※4)とはいえ簡単なことではありません。例えば、漁業権を管理する漁業組合です。漁業組合は本来必要だから組み合ったわけで、みんなが組んで少しづつ負担していくからこそ大掛かりな網や漁業に必要な製氷機といった高額な設備を持つことができるのです。その漁業組合をないがしろにしておいて、1人だけ儲けるけど設備は使わせてねといった都合のいい話はたとえおてんとさんが許しても周りは許さないでしょう。でもそれ以上に大きな障害があります。それがマーケティングです。今まで魚しか取ったことない人が地元飯でおいしいと評判の魚料理を一般向けに販売したとします。でも世の中にはうまいモノなんてゴマンとあります。今やSNSやネットなど情報の拡散はしやすくはなったもののその分、情報がありすぎて埋もれてしまい一般消費者に届かないことがほとんどです。今の時代は検索しても1ページ目に出てこなければほとんど見られない状況になっています。それどころか検索順位10番目でも1.32%の人しか見ないといわれています。(※5)この検索順位だけを毎日寝ずに考えて販売にあたっている強者がそれこそゴマンといるのです。そんな中で魚も取って、加工もして、検索を1位にヒットさせるというのは至難の業です。でもこの至難の業さえクリアすれば売り上げは確実に伸ばすことができます。その鍵を握っているのが新たな仲間です。今までと同じ仲間で同じ問題を同じように話し合っているのでは何にも変わりはしません。1人で考えるのはさらにアイデアの幅を狭めてしまうだけです。今まで接点のなかった人とつながるからこそ様々なアイデアが生まれてくるのです。新たな取り組みというのはだれしも躊躇するものです。体力も精神力も使いますし、失敗もするかもしれません。でも何もせずに指をくわえてすたれていくか、果敢に可能性を広げていくかのどちらを選ぶかというだけです。怖いのは最初の1歩です。その1歩さえ踏み込むことができれば可能性は無限に広がっていくのです。

※1、金華鯖ずし専門店 華ずし そもそも金華鯖ってどんな鯖?
https://www.hanazushi.com/blogs/contents/kinkasaba#:~:text=%E9%87%91%E8%8F%AF%E9%AF%96%E3%81%AF%E3%80%81%E3%81%9D%E3%81%AE%E5%B8%8C%E5%B0%91,%E6%BC%81%E7%8D%B2%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%9B%E3%82%93%E3%80%82
※2、ちいきごと たった200円のサバが10倍に!流通改革で起こした「関鯖」ブランド化への道
http://chiikigoto.com/2014/01/29/sekisaba/#:~:text=%E3%81%82%E3%81%AA%E3%81%9F%E3%81%AF%E3%80%8C%E9%96%A2%E3%81%95%E3%81%B0%E3%80%8D%E3%82%92,%E3%81%8C%E3%81%A4%E3%81%8F%E9%AB%98%E7%B4%9A%E9%AD%9A%E3%81%A0%E3%80%82
※3、YOKOTABI  ブランド蟹はなぜ美味しい?知られざる高級ガニの世界!
https://xn--yukoyuko-3u4g4k.net/yukotabi/archive/b00366
※4、農林水産省 6次産業化の取組事例集(令和3年3月)
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/renkei/6jika/torikumi_jirei/jireisyu.html
※5、SEOラボ 【2021年最新】検索順位別クリック率!1位~10位のCTRは?
https://seolaboratory.jp/99281/

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