竹村響 Hibiki Takemura

読んだり書いたり飲んだり食べたり。自由なマンガの仕事の冒険仲間は 秋田書店/Amazi…

竹村響 Hibiki Takemura

読んだり書いたり飲んだり食べたり。自由なマンガの仕事の冒険仲間は 秋田書店/Amazia/DADAN/Melonbooks/MTI/日本文芸社(NEW!)/Roaster/Shucream/Whomor(敬称略) (2024年1月時点)

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竹書房退職エントリその後

ぼくが竹書房を退職して半年が経った。そしてどうなったかというと。 退職エントリをすごくたくさんの人が読んでくれて、皆さん一様に「面白いけど長い」と。確かにあれは長かった。一生懸命読んでくれてありがとうございます。今回も長いので結論だけ欲しい人は最後の方だけ読んでいってください。ただし前半の方が面白いとは思うけれど。 そのなかで何人かの方が野武士たちの会社だったんだね、と感想をくれました。 そうか先輩たちは野武士だったか、なんて思いだしてみると確かになんだかみんなボロボロの

    • アナログマンガにあってデジタルマンガにないもの、それは『帯』

      「webtoonの宣伝についてしゃべってください」 ということでtwitterあらためXのspaceでお喋りしました。 しばらくアーカイブで聴けると思うんで良かったら聞いてみてください、なのですが今日はそこから抜粋しつつちょっと補足したり感想戦をやっておきたいと思います。 トーク相手がデジタル発の漫画から始めて今ではwebtoonを一生懸命作っているナンバーナインの取締役コロクさんで、そのナンバーナインといえば最近話題になったのが縦長というwebtoonの特性を活かしたエ

      • 芥川賞「ハンチバック」それは紙の本への呪詛

        市川沙央さんが「ハンチバック」で芥川賞を取りました。 その上で話題になっているのが受賞時インタビューで出た「重度障害者の受賞は初でしょうが、どうしてそれが2023年にもなって初めてなのか。それをみんなに考えてもらいたい」という市川さんの問いかけ。 ↓ ↓ ↓ ↓ 市川さんの問いかけをそれだけで受け取ればいろんな答えが考えられます。僕もこのニュースを見た時は作品自体未読で、市川さんとその作品についても詳しかったわけではないので「市川さんが頑張ったからじゃないかなあ」なんて呑気

        • さくらももこ先生の高速ステップアップがわかる原画展を観てきたよ

          聖地静岡に巡回してきた「さくらももこ展」鑑賞。 東京は激混みだった様子だけど静岡は余裕。 撮影はほぼ不可。 原画とかバンバン世の中に見せて行った方が良い影響かと思うのだけども。 1巻1話の原稿の綺麗さがすごい。全然修正の跡がない。 上手…なのはもちろん迷いがないんだろうなあ。 しかし、デビューの早い漫画家さんならではの1巻時点ではトーンワークがゼロ。 カケアミだらけ。 スクリーントーンが導入されるのは4年くらい経った頃。 描きながらアップデートされていくんだなあ。 そし

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          日本のマンガがいま世界でどうなっているのか アニメイト@タイから見てみよう

          日本には100店舗ほどある漫画専門店アニメイト。 海外は何ヶ国に展開してるかご存知でしょうか。 正解は4ヶ国。 韓国、台湾、タイ、中国です。 その中で中国は表現規制がかなり厳しいので、漫画本そのものよりもグッズ中心に展開されています。表現規制に引っかかるような作品でもキャラのアクキーとかは問題なく販売できるので。またビジネス上の外資規制で直営にもできづらいということで今日は本題から除きます(中国はホント色々特殊すぎるのです)。 アニメイトが今積極的に店舗展開しているの

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          マンガの原稿料、超高いですよいま!

          ちょっと前の記事なのですがどうしても気になったもので……。 レジェンド漫画家・遊人氏が原画を大量ヤフオク出品!背景に漫画界への憂い「安い原稿料で質の低い作品が溢れる」 というタイトルで「ANGEL」の遊人先生が生原稿をヤフオクで売った話から、漫画の原稿料が安いという話などにつなげてるのですが…… いやいやいやいやいやいや 漫画の原稿料、今めちゃくちゃ高くなってますよ???? というわけで本日はそういった原稿料など作家さんへ支払うお金のお話を。 まず、遊人先生には前職

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          「kotoba」という雑誌の「マンガの現在」特集に寄稿しました

          集英社インターナショナルさんからお話を頂きまして「kotoba」という季刊誌に少しページをいただきました。 記念の50号はマンガ特集、しかも「今の」という枕詞がついた「マンガの現在」。 そんな企画にお呼びいただきまして大変嬉しくもありがたいです。 まあ僕のことなんていいんですが、そもそも「マンガの現在」っていう特集の表紙がアイヌを描いた歴史漫画!歴史漫画なのになぜ今っぽいのかは読んでる人なら知っている歴史に被せた現代的パロディや、何よりこの少女アシリパがこれまでのマンガの

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          書店と家賃

          地方の書店が苦境で続々と閉店しているというニュースが↓↓ かつては日本中の町や駅前にあった個人書店や5軒くらいの地方チェーン。 それらがどんどんなくなっています、なんて随分前から言われてることですがまだまだ続いている状態です。 理由は色々あって、この記事で挙げられているAmazonや電子書籍の普及はどちらかというと「欲しい本が町の書店まで届かなくなった」からAmazonや電子で買うという結果になったに過ぎず、その前にとにかく地方の書店まで本が届かなくなった、もしくは届くの

          地上波の仕事したんで供養お願いします

          お久しぶりです。 突然ですがテレビに出ました。 ……といっても関西ローカル、深夜、2分(!)というクセの強い枠なのですが。 「ハタチェ!〜トレンドお試し部〜」といって20歳のインフルエンサー女子2人に最新トレンドを専門家が教えるというタイプの番組。今回のテーマがコミックシーモアさんという電子書籍書店が主催してる「電子コミック大賞」だったので、専門家として自分がお呼ばれしてたんだけども……。 番組内容としては2本のマンガを2人に読んでもらって紹介するのを自分が補強する、と

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          それ俺の知ってるバブルと違う

          こないだたまたま続けて30歳くらいの男子とまた別に35歳の男子と同じ話題になったんだよね。 「WEBTOON、めっちゃバブルですよね!」 って言われて。 いまマンガ業界は確かにどこでもその話が多い。 いろんな会社が参入してきてスタジオ作って。 特にスタジオ側の人たちは制作依頼がバンバン降ってきてるから「バブルだ!」って感じてるんだろう。 でもね。 まずそもそもそのスタジオの人たちがめっちゃ苦労してる。 面白い原作を獲得して、作画のクオリティを上げて、週刊連載のペース

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          2022年冒険の準備:Fanza Adult Comic Award

          2021年やった主なこととして3つの報告をしているのですが、その3つ目がこのFanza Adult Comic Awardです。 Webtoon、縦スクコミックはアプリで展開されている都合上、強いレギュレーションで縛られています。GAFAによる規制の代表的なものなのですが、「刺激的な表現のあるマンガ」はマンガ文化とマーケットがここまで大きくなるにあたって重要な役割を果たしたことは間違いありませんし、これからも守っていくべきものです。 なかでも「エロ漫画」「アダルトコミック

          2022年冒険の準備:Fanza Adult Comic Award

          2021年のwebtoon②:ストレージ型読者とクラウド型読者

          近年のマンガ業界は電子書籍市場のおかげで大きく発展したのですが、少し解像度を上げて分析すると「ストレージ型読者」を攻略していった歴史であると言えます。 そもそもの始まりは紙の市場において「雑誌が売れなくなった」ことです。 マンガは様々な角度で2種類に分けることができるのですが、そのひとつが「雑誌で読むか/コミックスで読むか」です。 昔、雑誌が充分に売れていた頃は雑誌だけで成立しているマンガがたくさんありました。黒字の雑誌に載っているマンガ作品はそれだけでビジネスとして成立し

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          2021年のwebtoon①:UIよりもビジネスモデル

          二つ目は各所で話題のwebtoonに関する活動です。 ピッコマさんがSmartoonと呼んだりカドカワさんがタテコミで押したりしていますが、全部「縦スクロールコミック」ということで表現できるかな、ということでぼくたちは縦スクとか縦とかで呼んだりしています。対して今まで作ってきた普通のマンガは横スクであり横ですね。 そんな従来の横に読むマンガが縦スクロールにとってかわられる!韓国勢のマンガに日本勢が破れるのか!みたく散々煽られておりますが、つい10年ほど前に「これからは電子書

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          2021年冒険のまとめ:シュークリームさんを出版社にするお手伝い

          2020年後半に前職から離れて自由人になりまして、好きな人たちと好きなことをやって世の中に面白いを少し増やすという生き方を1年間やりました。 その中から特に面白かった3つのことをお話ししてみようかななんて。 まず一つ目は「FEEL YOUNG」「onBLUE」「moment」の3レーベルにこのたび「fromRED」が加わった女性向けマンガではお馴染みの編集プロダクション「シュークリーム」さんが出版社コードを取得して正式な版元になるお手伝いをしたお話を。 編集プロダクション

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          Amazonとの直接取引は異例でも衝撃でもないんだぜ

          というニュースの解説ですよ。 そもそも何でAmazonが直接取引(「e託」と名付けられています)をしたいのか、に実際の現場とメディアに齟齬が。 メディアはAmazonが取次を飛ばしたい、取次は飛ばされたなくない、と思っている、というポジションをとっています。だからか世間でもそう捉えられがちですが、まずここが違います。 Amazonも取次も出版社も普通に「自分たちのビジネスに有利な選択」をしているだけです。Amazonというかちゃんとビジネスしている企業はみんなロジカルに考

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          「もしも東京」展は地球を巡回してほしい

          浅野いにお/安倍夜郎/石黒正数/石塚真一/市川春子/岩本ナオ/太田垣康男/大童澄瞳/奥浩哉/小畑友紀/黒田硫黄/咲坂伊緒/出水ぽすか/萩尾望都/昌原光一/松井優征/松本大洋/望月ミネタロウ/山下和美/吉田戦車 20人の漫画家が「自分の脳の中にある東京」をテーマにイラストやマンガを描き下ろした展覧会「もしも東京」が東京都現代美術館で開催中。 メンバーが豪華すぎるのもそうだけど作家さんの「現役感」がすごい。萩尾先生みたいな巨匠もいらっしゃいますが大半が今まさに脂が乗ってます!

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