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ボードゲーム初心者でも楽しめる、頭脳戦(≒心理戦)の設計ポイント

「生ぬるい心理戦は、もういらない」をキャッチコピーにして制作した『MIND GAME』が、おかげさまでゲームマーケットでは半日で完売し、Amazon委託販売でも売り切れとなるほど、大好評いただきました。ご購入いただいた皆様、ありがとうございました。

 今回は、ボードゲームにおける頭脳戦(≒心理戦)と、設計する際のポイントについて書いていきます。

目次:
 ■ボードゲームにおける頭脳戦の3段階論
  1.ルールの理解度勝負
  2.確率や期待値の計算勝負
  3.相手の心理を読む勝負=心理戦
 ■ポイントは、第1段階と第2段階を簡単に越えられるデザインにすること

■ボードゲームにおける頭脳戦の3段階論

まず、頭脳戦は3つの段階に分けられます。

1.ルールの理解度勝負

 最初の段階は「いかに相手よりルールを深く理解するか」の勝負です。
 ゲームのルールを正確に理解すると、そのゲームにおいて「強い」とされる行動がわかります。オセロなら「角を取ったら強い」とか、チェスなら「ナイトでクイーンを取れたら有利」などというものです。初めてプレイするゲームでは、限られた時間でどれだけ深くルールを理解できるかが最初の勝負になります。

2.確率や期待値の計算勝負

 次の段階は、「限られた情報を整理して、どこまで可能性を計算できるか」の勝負です。
 プレイヤー全員にオープンになっている情報と、自分しか知らない情報から、伏せられたカードを推測したり、相手の手札の強さを計算したりします。例えば、テキサスホールデムポーカーのオッズ計算や、麻雀のアガリ牌読みなどが該当します。

3.相手の心理を読む勝負=心理戦

 最後の段階は「相手のことをより良く知り、理解できるか」の勝負です。
 ここまで来て、頭脳戦は心理戦に昇華されます。つまり、頭脳戦と心理戦は厳密には違うものです。頭脳戦は理解力や計算を含んだ戦いであり、心理戦はそれに加え、相手の心理を読む戦いになります。
 相手は定石通りに手を打ってくるか?裏をかいてくるか?安全策を講じるか?リスクを取ってくるか?勝つためにはひたすら相手を観察し、普段の性格、表情、言動、仕草などから、相手の心理を読む必要があります。

■ポイントは、第1段階と第2段階を簡単に越えられるデザインにすること

 個人的に、頭脳戦で一番楽しいのは3段目だと思っています。
 1段目で戦って勝っても、あまり面白くありません。「これってこういうゲームなのね」程度の感想しか出ず、ゲームを理解できた満足度しかありません。
 2段目で勝つと嬉しいですが、相手との勝ち負けというより、計算問題の答え合せに似た喜びです。これは、相手とのインタラクションを楽しむボードゲームの喜びとは異なるものです。
 ボードゲームの醍醐味は互いに相手の考えや心情を読み合う心理戦にあると思います。

 チェスや将棋など、歴史あるゲームは多くのプレイヤーにより、ルール上有利な打ち手が研究されており、熟練者に追いつくのは大変です。
 また、テキサスホールデムやブラックジャックのようなカジノゲームにおいては、限られた時間で非常にたくさんの計算を行う必要があります。これもまた、初心者にとっては敷居が高いです。

 つまり、プレイヤーに手軽に心理戦を楽しんでもらうには、第1段階と第2段階を簡単に越えられるように設計する必要があります。

■まとめ

心理戦とは、ルールの理解と、期待値計算の先に存在します。もしプレイヤーに心理戦を楽しんで欲しいのであれば、シンプルなルールと、シンプルなコンポーネントを心がけましょう。

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