[ミステリ感想]『QED ベイカー街の問題』(著:高田 崇史)
『QED ベイカー街の問題』は2000年に発表されたもので、高田 崇史氏の歴史ミステリ『QEDシリーズ』の第三作目になります。
一作目が「百人一首」、二作目が「六歌仙」と、和歌をテーマにして、そこに隠された日本の歴史の謎を怨霊信仰(または御霊信仰)を基軸に、薬剤師の|桑原 崇《くわばら たかし》(通称:タタルさん)が暴いていくとともに、作中内の現代の殺人事件も解決するという形式のお話になっています。
三作目の『QED ベイカー街の問題』は、それまでと趣向を変え、|桑原 崇《くわばら たかし》が取り組む歴史の謎は、日本の歴史ではない(世界の歴史でもない)、なんと英国の小説家、コナン・ドイルが創出した史上最も有名な名探偵「シャーロック・ホームズ」の作中世界の謎です。
純粋な歴史好きの人は、なにがなにやらと戸惑うかもしれませんが、シャーロック・ホームズの作品が好きな方には愛着のある世界と言えるでしょう。
作者の高田 崇史氏によると、『このホームズネタは中学生の時に思いついた』のだそうです。
そして、驚くことに、世界最古のシャーロキアン団体『ベイカー・ストリート・イレギュラーズ』の唯一人の日本人会員だった長沼 弘毅氏に手紙をだしたところ、『話しとしては面白いがもっと本を読んで勉強してください』と返事をいただいたそうです。凄いな高田 崇史さん。
ちなみに『ベイカー街の問題』は『ベイカー街 no problem』と読むそうです😦。
■ベイカー街の問題=ホームズの謎とは?
さて、本作品では今までの作品でメインを占めていた日本の歴史の謎に該当するのが、シャーロック・ホームズ自身の謎です。
具体的には以下の謎です。
どう性格が変わってしまったか、桑原 崇が、ふたつの点を挙げます。
●『最後の事件』以前のホームズはヴァイオリンの名手だったが、三年の時をおいて復活した『空家事件』以降は、(唯一の例外1件を除いて)ヴァイオリンを弾かなくなってしまった。
●同様に、コカインを注射するという悪癖も止めてしまった。
一旦表舞台から退場する『最後の事件』までのホームズと、復活する『空家事件』以降のホームズは、まるで人が変わってしまったようだという謎がありますが、それ以上にもっと大きな謎があるとして、桑原 崇が、指摘します。
普通に考えれば、作者のコナン・ドイルも人間なので、3年もブランクがあったり、いくつものホームズ作品を書いて行けば、当然矛盾点は出てくるものなのですが、熱心なホームズファンであるシャーロキアンにとっては、ホームズは実在の人物であり、その事件は助手のワトスン博士の記録によって世に発表されている――、すなわちコナン・ドイルの創作ということは全く考慮されていないのです。
そんな熱心なシャーロキアンの集まり「ベイカー・ストリート・スモーカーズ」のパーティに、大学の二年先輩だった知人に誘われて出席した、桑原 崇と棚旗 奈々は、殺人事件にまきこまれます。
今までは歴史の謎と殺人事件の謎は7:3くらいで、歴史の謎のほうに比重が重くかかっていて、またそっちのほうが面白かったのですが^^;、本作は、ホームズ自身の謎と作中で起きる殺人事件の謎の比率は5:5になっているように感じました。
そしてホームズ自身の謎と作中で起きる殺人事件の関連性は今までの中で一番強いものでした(リアリティのある解決かというと、人によっては微妙だと思いますが)。
これらのホームズ自身の謎については、おそらくシャーロキアンの方々にとっては周知の謎なのでしょう。
その謎に対して、高田 崇史氏が新たに独自の解釈を提示したのがこの作品になると思います。
■感想
ホームズファンにとって、この作品の謎解きが受け入れられたのかどうか、発表当時の評価はわかりませんが🤔、ボクとしては、やはり日本の歴史の謎や闇を解いていく作風の方が好きですねー😃。
〇〇〇・ミステリ(ネタバレになりそうなので、あえて伏字で)のジャンルに属するだろう本作は、意表を突く真相で、面白かったですが(もちろん、あるジャンルの専門知識が必要なので、決して万人向けではないですが)、あえてQEDシリーズの外伝作品として発表してもよかったのでは、という気持ちをどうしても読後に持ってしまうのでした。
歴史ミステリ好きのわがままな感想ですが😓。
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