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歯車ピアノ 制作中

今回は、目下制作中の新しい楽器「歯車ピアノ」について書こうと思います。最近、パソコンの中だけで完結するソフトな部分ばかりやっていたので、ハード面であるこの楽器の制作モチベーションが高いです。笑

目次
・デモ動画
・コンセプト
・仕組み
  純正律と平均律
・進捗
・ユニークな楽器と歴史
  テルミン
  アナログシンセ
  Anarchestra
  Marble Machine - Wintergatan
・まとめと今後の展望

デモ動画

まだ完成してないので、blender内で作ったシミュレーション動画です。

わかりやすくするためにギアは超低速で回してますが、実際には一番遅いところでも1秒間に3回転はする計算です。
Blenderでのシミュレーションは設計面のためだったので、音はありません。

こういう歯車とかが入り組んだ機械見るとわくわくするのはなんででしょう。笑

コンセプト

楽器の基準音を自由に変えられたら面白いんじゃないか

ということです。

本来、音(ド/レ/ミ…)は絶対的なものではなく、用いる音律や基本となる周波数の違いで変わってきます。

今日一般的にある楽器、例えばピアノなどは基本となるラの音を440Hzとして、平均律を使ってそれぞれの鍵盤に対応する周波数を定めています。

これは一つの鍵盤にはある特定の音が結びついているということです。そしてその音は当たり前ですが変えることができません。

この基準音である、440Hzを自由に変えられたら面白いのではないかと思いました。440Hzが決まっているからピアノが音を正しく奏でる楽器として機能しているのですが、あえて、この基本を崩すことによって、新しい楽器の可能性、曲の可能性が広がるのではないかと考えました。この考え方は以前のnoteで紹介した図形楽譜の考え方に似ていて、楽譜がある種音楽の形を規定してしまっているところがあるように、現在ある楽器が、音楽の形を規定しているのではないかと考えたわけです。

この歯車ピアノでは、歯車のまわす速度によって、基本となる周波数をリアルタイムに変えることができます。すなわち、早く回せば、高い音が出ますし、遅く回せば低い音が出ます。

仕組み

基本的な考え方は、

1秒間に300回同じ音が聞こえると、その音は300Hzに聞こえる はず

ということです。

ピアノの鍵盤を押すと鍵盤の先についているピンがテコの原理で上方に上がります。そのピンが歯車の歯と接触し、音が発生します。

つまり、20歯の歯車が1秒間に3回転し、ピンに当たれば60Hzの音に聞こえるはず。

まだ実験してないのでちゃんとそう聞こえるか分かりませんが、理論的にはあってるはずです。

演奏者は楽器左側にある歯車を回します。そうすると、全ての歯車が連動して動きます。全ての歯車は純正律の周波数比になるように歯数を定めているため、どんな速さで歯車が回ったとしても、隣の音との関係性は維持されます。

現在ピアノで広く使われている平均律は周波数比が簡単な整数比とはならないため、歯車で再現することは不可能と考え、今回は純正律を用いることにしました。

したがって、

歯車ピアノでは、基本となる音を歯車の回すスピードで定めて、純正律を使ってそれぞれの鍵盤に対応する音を定めています。

純正律と平均律

音律とは簡単に言えば、音の関係性の決まりのことです。

平均律が広く広まったのは19世紀頃で、その前まではその他の様々な音律が用いられていました。その一つが純正律です。

純正律とは

周波数の比が単純な整数比である純正音程のみを用いて規定される音律

のことです。
純正律の基本音との周波数比を示すとこのようになります。簡単のために黒鍵は除いています。

平均律の場合は、一つ上のドの音になると周波数が2倍となるという関係性は変わらず、あいだにある12音の関係性を等分します。つまり、隣の音との関係は2の12乗根となります。計算したくありません。笑

これが上に述べたとおり、今回、純正律を用いた主な理由です。

純正律と平均律の違いに関しては、以下のサイトがよくまとまっていたので、興味がある人はどうぞ。

進捗

他のプロジェクトが締め切り間近なので、あまりこちらに時間がかけられていませんが、3Dプリンターを使って作っています。先日、プリントが終わったということなので受け取りに行ってきました。3Dプリントしたのは初めてだったんですが、コンピューターの中だけで作っていたものが現実になると、なかなか嬉しいものがありました。

まだ試作段階なので、5鍵盤のみでプロトタイプを作る予定です!


楽器の開発と歴史

ここで、近年の新しい楽器の開発とその歴史をみていきたいと思います。後述するAnarchestraのAlex Ferrisは本来の音楽とは発明であり発見である。と語っています。この言葉が象徴しているとおり、今まで様々な楽器が開発され、それらは音楽の表現の可能性を拡張してきました。ピアノも例外ではありません。長い歴史の間で少しずつ改良、拡張されて現在の形に至りました。ここでは、20世紀以降に発明された特徴ある楽器について書きます。

テルミン(1919)

テルミンは1919年にロシアで開発された世界初の電子楽器です。下に出てくるモーグはこの楽器に多大な影響を受けました。この楽器の電子的な音と楽器に触れないという不思議な演奏法はアメリカ、ヨーロッパの人々を引きつけました。TEDに演奏と簡単な紹介があったので記載しておきます。

アナログシンセ (1960s)

現在あるようなアナログシンセサイザーの歴史は1960年代まで遡ります。実際の祖先は1900年ごろまで遡るのですが、その頃はまだ単独で曲を奏でられるような装置ではありませんでした。1960年代に技術者モーグと作曲家たちの間で電子音楽楽器への探求が始まりました。これがモーグシンセとなります。初期のシンセサイザーは実験音楽の場でのみ使われていました。この状況を変えたのがアメリカの作曲家ウォルター・カルロスが1964年にコロンビアレコードから発売したSwitched on Bachです。このアルバムは世界中でヒットし、これ以降シンセサイザーがポップ・ミュージックに用いられるようになりました。

そのアルバムがsoudcloudで聞けるのでぜひ聞いて見てください。このアルバムはバッハの曲をモーグシンセで奏でた作品です。知っている曲も多々あると思いますが、シンセで奏でられるとなんとも面白い音になります。当時の人からしてみれば、この音は衝撃的なことだったのでしょう。この辺りの電子音楽の始まりは、なかなか面白いので別記事で書きたいと思います。

Anarchestra(2002)

新しい楽器について調べているときに見つけた活動。造形的な楽器がたくさん出てきます。というのもAnarchestraの中心人物であるAlex Ferrisはもともと彫刻家だそうです。このAnarchestraの楽器は音楽に疎い人でも簡単に音の世界を楽しめるように、プロのミュージシャンが新たな音を発見できるようにということを考えて作られています。

Marble Machine - Wintergatan (2016)

新しい楽器といえば、真っ先に出てくるのがMarble Machineじゃないでしょうか。Wintergatanはこの他にもDIY心をくすぐるような様々な楽器を開発しています。

そのほか以下のサイトに面白い楽器がたくさん紹介されていました。

まとめと今後の展望

このような感じで目下、制作中です。最大の懸案は理論が正しいかどうかですね。笑 イメージができないわけではないんですが、イメージできる部分とそうじゃない部分があってなかなか考えてるだけじゃわからないです。早くプロトタイプを完成させて検証したいと思います。

そこがうまくいけば、今度は音色探しです。見た目が面白くても、音がしょぼかったら楽器として成り立ちません。そこに時間がかかりそうだなと思っています。

なかなか今回の内容は、物理的なところと、音楽史的な部分が多くあったので書くのに少し苦労しました。間違ってることがあったらすみません。

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