曖昧な「編集者」

「編集者」という職業は、実に「曖昧」である。

出版社に就職して、編集に携わる仕事をしている人は「編集者の○○です」と名乗る。でも、この人、いったいいつから、どうやって編集者になったと言えるのだろうか?

いわゆる国家資格のようなものがない編集者は、名乗った者勝ちの風潮がないわけでもない。著者が入れた赤字が正しく直っているかを確認するような、いわゆる校正業務をしている人でも、編集に携わっているという認識から「編集者です」と名乗ることすらある。「編集長」というポジションのように「いつから」がはっきりしているポストならいいのだが、編集者は駆け出しの1年目でも、ベテランの○十年目でも「編集者」だと名乗るのだから、そのクオリティーは実にバラエティーに富んだものとなっているのが実態だ。

・「て、に、を、は」の修正

・(昨今増えている)PCの変換ミスによる誤字の修正

こんな仕事をしている「編集者」も居れば、

・「この犯人は○時の電車で現場に行って殺人を犯し、○時の便でさりげなく戻って来たことになっているけれど、この時間の電車では乗り継ぎがうまくいかず、事実に矛盾がある」

といったような、いわゆるファクトチェックを行って、作品の精度をあげるために著者と喧々諤々やりあい、二人三脚で本を作ろうとする「編集者」も居るし、

・「一般人に分かりやすく解説するためには、もっと実例を増やして!」

などと「素人代表」として、プロの書き手に感想を言うことで良い本を作ろうとする「編集者」もいる。


実は出版の業界には「編集者」のほかに「校正者」「校閲者」などという人もいて、その棲み分けや、名称の違いも実に曖昧である。質の差こそあれ、とりあえず日本語が読める人たちが、勝手に「編集者」を名乗れるのだとしたら、誰でも編集者になれることになってしまう。漢字の誤りが分かる、正しい送り仮名が分かる、ちょっと難しい語彙を知っている、という程度で「編集者」になってしまった場合、その「編集者」はその後のスキルアップをどうしているのだろうか? 一方で、スキルアップをして、誰もが認める実力を身に付ければ、業界の「名物編集者」「カリスマ編集者」と呼ばれるようになるのだろうか。編集者にまつわるアレコレについて考えてみたいと思う。

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