もう少し読みたい友人へのオススメ仏教本

はじめに

前回の記事では、安全そうなルートで原始仏教の良さを伝えることだけを目指したので、紹介できる本に限りがありました。ここでは、

  • もっと仏教の教義について知りたい

  • 現代人として仏教の教えをどう捉えるか真面目に考えたい

  • 瞑想法を知りたい

といった人向けの書籍を紹介したいと思います。読んで良いなと思った本のみを簡単に紹介しようと思います。オススメ度の意味は大体こんな感じです。(2024.2.6)

  • *****:レジェンド級の歴史的名著

  • ★★★★★:幅広い人に超オススメ

  • ★★★★☆:トピックに興味がある人にはかなりオススメ

並びはジャンル別・オススメ度順にしました(2024.2.10)。
後日「そんなにオススメでもないな…」と思い直したものは更新記録にコメント付記の上で削除することがあります(2024.2.18)。

更新記録(追加順の書籍リスト)

2024.2.25
・瞑想でたどる仏教: 心と身体を観察する
2024.2.18
・言い訳するブッダ
2024.2.11

・ヴィパッサナー瞑想の教科書 マインドフルネス 気づきの瞑想
2024.2.10
・大乗仏教―ブッダの教えはどこへ向かうのか
2024.2.6

・禅の教室 坐禅でつかむ仏教の真髄
2024.2.4

・悟らなくたって、いいじゃないか 普通の人のための仏教・瞑想入門
・ブッダのことば-スッタニパータ
2024.1.31

・「律」に学ぶ生き方の智慧
・真理の探究 仏教と宇宙物理学の対話
2024.1.21

・ブッダが説いたこと
・マインドフルネスの歴史と展望
・ブッダという男 ーー初期仏典を読みとく
 →削除:面白いけど他の研究者への不当な批判があると思うので(2024.2.25)
・科学化する仏教 瞑想と心身の近現代
 →削除:良かったけどマニアックなので(2024.2.18)


仏教の教理

ブッダが説いたこと(岩波文庫) ワールポラ・ラーフラ (著), 今枝由郎 (翻訳) *****

西洋向けに原始仏教の教理を伝え広げた歴史的名著。説明が合理的でスッキリ整理されており、原始仏教の教理体系を学ぶのにとても役立ちます。非常に薄い本ですぐに読めます。現代人が仏教をどう生かして生きていくかという提案もあり、一冊目の入門書としても非常にオススメです。

ブッダのことば-スッタニパータ (岩波文庫) 中村 元 (著) *****

最古の仏典。読みづらい箇所もあるので、少し原始仏教に親しんでから読んだ方が良いと思います。しかし雪山に棲むもの(?)が友達の神と一緒にブッダに会いに行ってみる話はなんとも言えないかわいげがあり、「犀の角」のような美しい詩もあります。また、「八つの詩句の章」には素晴らしい人生訓がたくさん含まれています。

大乗仏教―ブッダの教えはどこへ向かうのか (NHK出版新書 572) 佐々木 閑 (著) ★★★★★

この本では大乗仏教の発展の歴史、特にその中での各宗派の思いが描かれており、大乗仏教の概観を分かりやすくつかめます。大乗仏教がどんどん原始仏教から離れていく過程が面白いのですが、それに対する「ブッダが説いたかどうかは問題でなく、その教えで救われる人がいるのであれば宗教として正しい」という視点が素晴らしい。

言い訳するブッダ (新潮新書)  平岡 聡 (著) ★★★★☆

仏典に見られる「言い訳」について解説した本。矛盾する二つの教えをどう整合させるか、戒律に対する言い訳、大乗仏教による自らの正当化などなど。終始ふざけたノリなので、真面目な本の箸休めに。個人的には面白い内容が色々見つかって良かったです。ノリが合うようであれば是非。

瞑想でたどる仏教: 心と身体を観察する (NHKシリーズ NHKこころの時代) 蓑輪 顕量 (著) ★★★★☆

瞑想=心身の観察を軸に原始仏教から日本仏教の各宗派までを理解していく本。念仏も心身の観察だというのに驚き。ほんまか?と思うけどそう言われればそうなのかもしれない。大乗仏教の各宗派も、心身の観察をしているという点で原始仏教と変わりないという視点が面白かったです。

現代人にとっての仏教

真理の探究 仏教と宇宙物理学の対話 (幻冬舎新書) 佐々木閑 (著), 大栗博司(著) ★★★★☆

素粒子物理学者の大栗博司さんと仏教学者の佐々木閑さんの対談。現代において科学と仏教はそれぞれ何を語れて何を語れないのか、という境界線を明確にする好著。ただ「ブッダは生きがいを自分で見つけよと説いた」という箇所は、佐々木さんの自説なのか事実なのか分からない。

「律」に学ぶ生き方の智慧(新潮選書) 佐々木閑(著) ★★★★☆

仏教が2500年も持続できた背景には優れた律(出家者集団のルール)があるといいます。仏教とオウム真理教の違いは律の有無だとする考察は非常に説得力がありました。また現代の科学者は「出家者」であるという指摘が面白く、自分の研究者としての心構えを見直す契機になっています。

瞑想

悟らなくたって、いいじゃないか 普通の人のための仏教・瞑想入門 (幻冬舎新書) プラユキ・ナラテボー, 魚川祐司 (著) ★★★★★

昨今は瞑想ブームですが、実は瞑想法ごとに目的と得られる結果が違うそうです。俗世の生活をうまくやりたい人が、ガチで解脱したい人向けの瞑想をやるのは必ずしも良くない。なるほど。瞑想を始めたい人は、本格的にどれかの方法を選ぶ前のガイダンスにぜひ読むと良いと思います。

禅の教室 坐禅でつかむ仏教の真髄 (中公新書) 藤田一照 (著), 伊藤比呂美 (著) ★★★★★

詩人の伊藤比呂美さんの素直な疑問と、曹洞宗僧侶の藤田一照さんの分かりやすい説明による素晴らしい坐禅の入門書。教義の押し付け感や周辺知識の要求なしに、禅宗として外せない思想をちゃんと説明しています。禅に限らず仏教の理解が深まる良い本です。

ヴィパッサナー瞑想の教科書 マインドフルネス 気づきの瞑想 バンテ・ヘーネポラ・グナラタナ (著), 出村佳子 (翻訳) ★★★★☆

上座部系の瞑想本。神秘要素を極力排し読みやすくする一方で、仏教の心の理解や倫理観についてはきちんと書かれています。集中と気づきのバランスや慈悲心を強調しており「生活をうまくやりたい人」に適した方法だと思います。自分は原始仏典を座右に置きつつこの瞑想をやっています。

大谷彰, マインドフルネスの歴史と展望. 心理学評論. 64, 228–243 (2021). ★★★★☆

マインドフルネスは仏教瞑想から派生したものです。この評論ではマインドフルネスの歴史、問題点、展望が数ページ分に整理されており、マインドフルネス入門に際してとても参考になると思います。仏教に興味はなくてマインドフルネスだけやりたいんだ、という方も是非ご一読を。

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