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最大径x長さ/重さの話 (13)

「レンズ仕様表の読み方」編シリーズの第13回、今回は「最大径×長さ」と「重さ」の2つの話。

たぶん、皆さんの多くは「レンズの径や長さ、重さの仕様なんて興味がない(わかりきったことだ)」と思われるだろうけど、仕様表に記載している数値には、それぞれ表記上のこまかな約束や取り決めがある。
知っておいて決してソンはないと思う。

最大径x長さ(寸法)

 レンズ鏡筒(鏡枠)部のもっとも径の大きい(太い)部分が「最大径」である。「長さ」は、レンズ先端部からレンズマウント基準面までを言う。
 仕様表では「最大径×長さ」をまとめて「寸法」と表記する場合もある。

 記載される長さも最大径も、レンズフードや三脚台座、鏡筒表面から突起する部品などは除外して測ることになっている。

 固定の突起部品はそれを含まない最大径となる。固定突起物とは、たとえばAF/MFの切り替えスイッチや手ブレ補正ON/OFFスイッチ、三脚座や三脚台座などである。
 三脚台座など、取り外せても取り外せなくても、それらを含まずに測った長さや径が仕様表に記載されているというわけだ。

「長さ」と「全長」は区別している

 以前は「長さ」と「全長」とを区別して記載しているメーカーもあったが、現在ではほとんど見かけなくなった。すべて「長さ」の表記だけ。

 CIPA(カメラ映像機器工業会)のガイドラインによれば、「長さ」はレンズ先端部からマウント面まで、「全長」はレンズ先端部からマウント面から突起した部分まで、という具合に分けて規定している。

 一時期、タムロンが「全長」と「長さ」の両方を仕様表に記載していたが、今は「長さ」の記載だけになっている。

 以下の図や説明はCIPAが定めた『デジタルカメラの仕様に関するガイドライン(2023年7月制定)』と、『デジタルカメラの質量および寸法に関する測定法および表記法(2009年9月制定)』の中から「最大径×長さ」に該当する記載部分を抜き出して示す。

CIPAガイドラインによれば、(A)が「長さ」、(B)が「全長」、(C)が「最大径」となっている
(D)のように三脚台座は「最大径」は含めない、もし含めればその旨の注記がある
図はCIPAガイドラインから
長さも径(寸法)も測定するときは三脚座などの突起物は除外して測ることになっている
上記の寸法測定法はCIPAガイドラインから

 ちなみに ━━ レンズとはまったく関係ない話だが ━━ クルマの車検証などに記載されている“全幅”は、ドアミラーやフェンダーミラーは含まないで測った“幅”ということになっている。

 さらにまた話が横道に逸れるが、レンズマウント基準面(=ボディマウント基準面)から撮像面までの長さを「フランジバック」といい、レンズ後端の最終光学レンズ面から撮像面までの長さを「バックフォーカス」という。

 フランジバックもバックフォーカスも、一眼レフカメラからミラーレスカメラに移行したときに、盛んに言われるようになった。
 新開発のミラーレスカメラと新レンズの利点をアピールするときに、Zシリーズではニコンは「ショートフランジバック」と言うようになった。ところが、Zシリーズより少し後発だったキヤノンRシリーズでは「ショートバックフォーカス」と異なった言い方をするようになった(実質的な意味合いとしてはほとんど変わりはない)。

 これに限らず、ずっと以前からニコンとキヤノンは同じ機能や機構などの言い方を微妙に変えていた。そんな小さなことで張り合わなくてもいいのに、ユーザーが混乱するばかりじゃないか、と冷ややかに見ている人も多い。

重さ(質量)

 取り外しができるレンズフードや三脚座などを除いて測ったレンズ本体の重量が「重さ」である。レンズの「質量」ともいう。

「重さ」はレンズから取り外せないものはそのままで測る

 CIPAのガイドラインでは「工具がないと取り外せない付属品はつけたままの状態で質量測定器をもちいてその質量を測定する(硬貨などの工具の代用品も工具とみなす)」とある。

 それによると、組み込み式フードや、コインやドライバーなどの工具を使わないと外せないような付属品はそのままの状態で重さを測り、その重量を記載することになっているようだ。
 「長さ×最大径」の測定方法と微妙に異なり、少しややこしい。

重さ(質量)の測定は寸法測定とは異なり、
工具がないと取り外せない三脚座などは含めたままで測定する
上記の測定法はCIPAガイドラインから

 ここで、少しクドいとは思うが「長さ×最大径」と「重さ」についてまとめておく。
 以下の写真はペンタックス・HD DFA★70-200mmF2.8ズームレンズ、これを例にしてみる。三脚座は着脱可能、三脚台座は着脱不可なので「重さ」は三脚台座を含めて測る(三脚座は除く)。「最大径」は三脚台座も三脚座も含めないで測る。
 また、レンズ後端部のマウント基準面から後部に出た部分まで含めた長さは「全長」となる。

「重さ」は三脚台座を含めて測る(三脚座は除く)が、「最大径」はどちらも含めない
「長さ」はマウント基準面から後部に出た部分は除いて測る


 なお、三脚台座を取り付けて測定した重さの場合は、その旨を注記して表記することになっている。ところが三脚台座を含まないで測定した場合でも、「台座なし」と注記するメーカーと注記もしないメーカーがある。

ニコンの仕様表は三脚台座込みの重さと、台座を取り除いた重さの両方を注記ともに表記している
キヤノンの場合はとてもアッサリした表記で、三脚台座あり/なし、
の注記は仕様表欄外にもなにも記載がない(台座なしの「重さ」だと思われるが)

 なんだか重箱の隅をつつくような細かな話になってしまったが、仕様表に記載された「長さ×最大径」も「重さ」の数値のウラにはいろいろとコムツカシイ約束事があるのだなあ、ということを知っておいてもらえればいい。

「最大径×長さ」も「重さ」もカメラボディにセットで判断すべきだ

 レンズの大きさや重さは数値を読んでも実感しにくく、さらにレンズは必ずカメラとセットで使うものだ。
 大切なことは、カメラにセットしたときの「重量バランス」である。こればかりは仕様表の数値を見ても決してわからない。実際にカメラに取り付けてもって構えて「体感」してみないことには、レンズの重さと大きさの良し悪しはわかりにくい。

 もしカメラ店などで試すことができたら、セットするカメラボディの大きさや重さにもよるが、その時の「バランス」をしっかりとチェックしてほしい。
 レンズによっては、レンズ先端側が重いフロントヘビー、カメラボディ側に重心のあるリアヘビーのものがある。カメラの構え方や個人的な好みにもよるが、リアヘビーのほうが構えたときの安定性は良いようだ。

 次回もまだ「レンズ仕様表の読み方」編シリーズが続き、「絞り羽根枚数」の話を軽く。


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