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画角の話(7)


第7回

今回から「仕様表の読み方編」をスタート。まず「①画角」の項目から解説していきたい。

なお、これからしばらく続く「読み方編」シリーズでは、仕様表などの図表などを掲載していくが、そうした図表の一部は各メーカーの広報資料やホームページ製品紹介ページから画面キャプチャして(一部を切り取ったりして)使わせてもらっている。ここで各メーカーにお礼を申し上げたい。

①画角

 画角は写角ともいう。無限遠(∞)にピントを合わせたときに写せる範囲を「角度」であらわしたもの。
 そのレンズがイメージセンサー(またはフィルム)画面をカバーできる画角である。ということは同じレンズでも、フルサイズ判カメラとAPS-C判カメラにセットしたときの画角は異なる。

 ピント無限遠での画角に定めているのは、レンズによってはピントを会わせる位置によってわずかだが画角が異なるからだ。このピント移動のことをフォーカスブリージングという。
 ピント移動するレンズだと動画撮影中に画角変化し違和感が出る。静止画撮影ではほとんど気にならなかったのだが、最近のカメラでは静止画だけでなく動画の撮影もすることが多くなった。そこで交換レンズはだんだんとフォーカスブリージングをなくすような設計レンズが多くなってきている。

レンズの仕様表(スペック表)の一例。項目の順序や名称などは、
メーカーごとに異なるが基本的な項目はほぼ共通している。

 仕様表の表示画角は、一般的には画角数値1つだけが記載されている場合が多い。上記の富士フイルムのレンズ仕様表もそうだが、画角数値は「対角線画角」である(XFレンズではAPS-C判センサーでの対角線画角)。
 対角線画角はそのレンズのイメージサークルのほぼ直径画角と考えてもいい。

 なかには誤解をしている人もいるようだが、画面横方向の「水平線画角」ではないし、画面縦方向の「垂直線画角」でもない。
 ここは仕様表の画角を見るときには注意しておきたい。

対角・水平・垂直すべての画角はセンサー(フィルム)サイズ画面の大きさによって異なる。
同じ焦点距離のレンズをフルサイズ判とAPS-C判で使えば、とうぜんながら画角は違ってくる。

仕様表の画角数値は対角線画角が基本

 キヤノンやツアイスなどほんの一部のメーカーでは、対角線画角と水平線画角、垂直線画角の3種類を記載している。これはとても珍しいし親切な表記である。

 たとえば焦点距離50mmレンズをフルサイズ判カメラで使用した場合は対角線画角は約46°だが、水平画角は約40°、垂直画角は27°30″となる。

 ほんらいはキヤノンやツアイスの仕様表記のように、対角画角、水平画角、垂直画角の3つを明記すべきだと思うが、実際にはほとんどのメーカーは対角画角しか表記していない。
 さらに(不親切だと思うが)記載している画角が対角線画角であることの「注記」もしていない。とくにレンズに初心の人が誤解するのも当然だ。

もっとも一般的な画角表記で対角線画角だけの記載。対角画角であることの説明はない。
ニコンも対角画角のみの表記だが、FX(フルサイズ判)と
DX(APS-C判)のそれぞれの画角が記載されている。
マイクロフォーサーズ判での画角ではなくフルサイズ判換算での対角線画角を記載している。
OMシステムでは対角線画角だけだがそのことの注記をしている。
キヤノン(とツアイス)の仕様表では、どのレンズの画角表示にも水平画角、垂直画角、
対角線画角の3種を記載。他社もこれに倣って3種の画角表示をすべきであろう。

フルサイズ判画角とAPS-C判画角

 私たちは画像を見るとき、画面左右の角度や画面上下の垂直画角を示してもらったほうが参考になるはずだ。対角線画角なんてイメージサークルの直径の角度が知りたいときぐらいにしか役立たない。

 また、一部のインナーフォーカスやリアフォーカスタイプのレンズでは、撮影距離(ピントを合わせる位置)によって画角が少し異なるものもある。しかし仕様表にはそのことについての説明はどのメーカーもしていない。
 たぶん、マイナスイメージになるのと、記載数値が煩雑になるから避けているのだろう。

 35mmフルサイズ判用のレンズをAPS-Cサイズ判のカメラに使用したときは、とうぜん画角は狭くなる。
 フルサイズ判カメラにもAPS-C判カメラにも使えるレンズにもかかわらず、フルサイズ判の画角しか記載していないメーカーもある。ニコンやペンタックスなどの仕様表にはフルサイズ判とAPS-C判での両方の画角が記載されていて、これは親切。

「レンズ焦点距離=画角」の考え方

 ところで話は少し変わるが、「レンズ焦点距離=画角」ととらえて画角と焦点距離の関係を考えている人も多い。あるレンズの焦点距離を言えば、フルサイズ判カメラでの画角を経験的に記憶していて、そういう人は慣れ親しんだ「画角 ⇔ 焦点距離」で"自動変換"してレンズ選びをする。

 フィルムカメラの時代は35mmフルサイズ判を中心に考えていればよかったのだが、デジタルカメラ時代になってAPS-C判やマイクロフォーサーズ判、さらにもっと小さなイメージセンサー(撮像サイズ)を使用するコンパクトカメラも多数出てきた。そうなると今まで使い慣れてきた「焦点距離=画角」のセオリーでは適応できなくなり混乱してしまう。

 そこで、使用する撮像サイズごとに、いままで使い慣れてきたフルサイズ判画角を基準にして画角換算するようになった。
 たとえば焦点距離20mmレンズだとすれば使用カメラでの実際の画角を言わずに「フルサイズ判換算75mm相当の画角」などと言い換えるようになった。

 すでに皆さんはご存じのことだけど、焦点距離28mmのレンズをAPS-C判カメラにセットしたとすれば「約1.5倍」すればよい(キヤノンは約1.6倍する、約1.53倍するメーカもある)。28×1.5=42だから「フルサイズ判換算で約42mm相当の画角」となる。マイクロフォーサーズ判なら「約2倍」で「フルサイズ判換算約56mm相当の画角」ということになる。

 APS-C判用レンズやマイクロフォーサーズ判用レンズでは、仕様表の画角のところに「フルサイズ判相当」の説明と画角数値が併記してわかりやすくしているものもある。

フルサイズ判カメラで使用したときの対角線画角、水平画角、垂直画角とそれに対応するレンズ焦点距離を一覧表にした。仕様表など画角しか表示されていたとき、この表を参考にされるといい。

 次回の第8回では「②レンズ構成」について解説したい。


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