帰りがけのできごと

 仕事帰りに駅を乗り過ごした。携帯端末で方方へ連絡をとっているうちに、乗り換え駅を通り過ぎていたらしい。終電も近く、帰宅できるかわからない。慌てて降りた駅で、外国人に話しかけられる。いわく、北千住に行きたいとのこと。英語の不得意と時間のない焦燥とが、私に退散を促す。とはいえ無下にはできないので、なけなしの中学英語で応対を試みた。何とか乗り換え順を伝えきると、その人は何度もお辞儀をしながら「Thank you very much.」と言って去っていった。私は「グッドラック」と返した。
 帰宅の目処がつき心に余裕が生まれると、さて私が電車を乗り過ごしたのはこのためだったか、などという考えが浮かび、我ながら酔狂なことだと思われ、そのまま空席の目立つ終電のシートの一隅に身を沈めた。

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