見出し画像

おばあちゃまの好きなもの

細くて急こう配な、そして薄暗い階段を上る。まるで非常階段のよう。
階段の2、3段上るとその先にあるドアが開いて、さっき窓から顔を出していたお姉さんが笑顔で待ち構えている。

ウェルカム!今日はご馳走よ!さあ、入って。

見ず知らずの、まだ自己紹介もまだのわたしを招き入れてくれた。
玄関を入ると、すぐにリビングルームで白い壁に蛍光灯の明かりは反射しているのか、部屋の中はすごく明るかった。入り口側の壁ぎわにはテレビ台と大きなテレビがあった。その白い壁にはエルサレムの黄金のドームのポスターが貼ってあった。

NAKBA SURVIVOR

ホロコーストサバイバーという言葉を耳にすることがあって、ナクバサバイバーを耳にすることは少ないかもしれない、日本では聞くことはほぼないだろう。彼のおばあさまはナクバサバイバーだ。70年前のナクバを経てもなお生き残り故郷アッカに残ることが出来た。

何が好き?お肉?ごはん?お野菜?何食べたい?今日は色々あるわよ。そこに座って来てくれてありがとう。ゆっくりしてて。

半ば強引に、もちろんありがたくもありアラブのおもてなしを受けリビングルームで家族親戚に囲まれるようにど真ん中に座る。

おばあちゃまが一番好きだったものは?それを頂きたい!
マクルーバよ!知ってる?アップサイドダウン。
うん。わたしも大好き。
OK!じゃあ、マクルーバと他にもあるから持ってくるわ。

お姉さんが好奇心が溢れる顔で聞いたきた。

ねえ、イスラエルで何しているの?学生?イスラエルはどう?好き?

イスラエルなんだ・・そうよね、イスラエルよね。外部のわたしが勝手にセンシティブになってイスラエルとパレスチナを隔てていた。彼らはアラブ系のイスラエル人。国籍という意味では。

学生じゃないの、ただ旅行してるの。イスラエルもパレスチナも巡って。お料理が好きだから食べ歩きしたり作り方を聞いたりしてる。それを話してたらお邪魔することになったの。
そう。じゃあ、うちのお料理も楽しんでもらわないとね!わたしはファッスリーヤが好きなのよ。お母さん!ファッスリーヤもついてあげてよ!
はいはい。

そう言いながらお母さんがにこんもりとお料理が乗ったお皿をいくつも運んできてくれた。




あなたがサポートしてくれた分を同じだけ上乗せしてパレスチナのジェニン難民キャンプで使います!!もしジェニンをサポートしたいと思ってくださった方はこちらへ< https://thefreedomtheatre.org/donate/ >