2つのパレスチナ
同じ国なのに別の国なんだ。
3月25日朝6時半に起きた。わたしはエルサレムの日本人宅にいた。
この日の朝5時過ぎ、わたしの起きた時間の1時間半前にガザからテルアビブ近郊にロケット弾が落ちた。
戦争が始まるかもしれない。
その前の週も同じことがあって、同じことを思った。
違うのは日本にいたことと、今エルサレムにいること。
エルサレムからテルアビブまでバスでも小一時間。距離にして65kmくらい。エルサレムからガザまで行ったことはないが車で3時間くらいらしい。テルアビブからアシュケロンまで66キロそこからガザまで10キロ程度。エルサレムからアシュケロンまで80キロ弱。
すべてがわたしのいる100キロ圏内の出来事。
福岡ー熊本が100キロちょっと。東京ー横浜は30キロ 東京ー前橋まで100キロ
ガザからロケット弾が飛びイスラエル人7人が負傷した。前回の被害者は0。今日中にガザへの大規模な報復があるのは間違いない。
午前中、わたしはベツレヘムに移動した。ベツレヘム最大級のデヘイシェ難民キャンプ。今もそこにいる。東エルサレムもパレスチナだけど、ベツレヘムはエリアAと呼ばれる自治も警察もパレスチナ政府が管轄している。とはいえ、イスラエル兵も見かけるし、入植地もある。
ここもまたガザから100キロ圏内。
デヘイシェの友人の家に着く。冬の名残か雨が降り出し気温は一気に下がる。乾いていた空気が湿り気を帯び体感温度はより低く感じる。
またガザからテルアビブにロケット弾が飛んだんだってよ?
まじ?
そう言って友人は手元のスマートフォンで情報を得る。
本当だ。南テルアビブにロケット弾。負傷者7人。だって。
わたしは今パレスチナにいる。エリアAで名実ともにパレスチナ。でもしていることは日本にいるときと変わらない。ネットで情報を探しガザの友人を心配し日常生活を過ごす。
ガザが気の毒だから、心配だからと日常を大げさに自粛する必要もないと思っている。100キロ以内で起きていることなのにこの遠さはなんだろう。熊本地震のとき、福岡にいた。揺れた。それくらいの近さなのに。
ここパレスチナは西岸地区と呼ばれるところ。西岸地区の人はガザには入域できない。わたしもそうだし、多くの外国人もそうだ。わたしたちは心を寄せていないのではないただただ遠いのだ。同じ国なのに全く別の国。日本とフランス以上の違いがあるかもしれない。関係ないと思っているのではなく、どうしようもできないのだ。
壁のもたらす心的距離の弊害を感じた。
夜、テレビとネットでニュースを見ていた。ガザに空爆が始まった。ガザの友人は動画をSNSにアップし空爆なうとツイートする。
日本からはわたし宛に心配のメールも届く。
西岸地区にいるわたしは空爆は遠い遠い壁の向こうのことで日本にいるときと何も変わらない。
夕方から庭で火をおこし料理をして、近くのスイーツ屋さんで激甘のワッフルを買ってみんなで食べた。
*
ふと考えた。
同じ出来事をテルアビブで経験していたらどうだろうか?
わからない。
わからないけど、国籍が信仰がどうだから心を寄せる寄せないということではない。
誰だって戦争はいや。(したい人がいるからこうなっているんだけど)
抑制(占領)がなければ抵抗はないのだからガザからのロケット弾が抵抗だとすれば
占領を終わらせるしかないのは?と思ってしまう。
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