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チェックポイント

Nadimは日本では見かけないくらい砂塵で曇っている車に乗り込む。その助手席に座る。

砂の舞う細い道を抜けて幹線道路に向かう。右に行けばヘブロン。左折する。道路は渋滞している。ゆっくりと走っていると右前方に舞台と見物の人たち。渋滞はこのせいだろう。

あれなに?難民キャンプの入り口でしょ?なにがあるんだろう。
あー、あれはイスラエル兵に殺された人を弔うイベントだよ。今夜それがあるんだろうね。今でも嫌がらせがあるだろう、それで揉め事が起きてそういうこともあるんだ。相手はこどもだよ。はー。

怒りでもない、ただ諦めのようなため息だった。確かに、難民キャンプの壁のいたるところに描かれている少年たちの絵。一瞬ウォールアートやストリートアートのように見える。しかし、殉職したこどもたちなのだ。

キャンプの入り口を過ぎる。組まれた櫓に少年の写真。入り口の建物にはヤーセルアラファトの似顔絵。また少し過ぎると遠くに見える。日の丸の描かれた建物。日本政府支援で作られたクリニックだ。

ここを抜けると渋滞も解消された。やはりあの櫓だった。
Beit Jalaのバス停の少し手前で車を停める。

ありがとう。また連絡するね。
OK!!君はファミリーだからね。いつでも帰ってきて。

握手をし彼らと別れる。

わたしは横断歩道を渡り午前中に降りたバス停から同じにバスに乗る。一番前の右側入り口のすぐ側に座る。後ろの席はもういっぱいだった。この分ならすぐに出発するだろう。

思ったより早くドアが閉まった。すぐに右に曲がりきた道を行く。いつもの道。登って登って左に大回りするように下っていくと右の方に見えるチェックポイント。高速道路の料金所のようだ。大きな機関銃を携えたイスラエル兵たちが談笑している。
バスは右レーンを走り、一時停止場に止まる。ドアが開くと当たり前のようにパレスチナ人たちが一斉に降りる。車内に残るのは外国人だけになる。右の窓から外を見ると一列に並んださっきまで一緒にバスに乗っていたみんながいる。2人組のイスラエル兵がゆっくりと歩いてくる。まずは車内に乗り込んでくる。ガサツに扱う銃がドアにぶつかり暴発しないのか気になってしかたない。

パスポート見せて。どこから?
日本よ。

パスポートとわたしの顔を一瞥して次の席に声をかける。

彼らはバスを降りるとならんでいるパレスチナの先頭の前に立つ。バスの中からはなにを言っているのかは聞こえない。

彼らはパレスチナIDとイスラエルの許可証を見せると、イスラエル兵がいちいち確認し手をバスの方に降って”行け”というような素振りをする。この光景を見ると、なぜ?どうして?おかしいよ、こんなの!と解決しない疑問が溢れてくる。見たくない光景だけどしっかり見ておこう。だって理不尽だから。

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