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無受賞自主映画監督がアマゾンプライムビデオ登録

 哉司というインディーズ映画監督をご存じだろうか?大半の方は聞いたこともないであろう名前…読み方すら分からない。
 それもそのはず。映画祭で作品上映されることはあっても賞をとったこともない無冠の監督。インディーズ映画の上映会くらいでしか作品が流れないまさに無名監督中の無名監督である。
 そんな無名監督作品『やどかり珈琲モルモット』がAmazon Prime Videoに登録され配信されているのでそのことについて書こうと思う。

インディーズ映画の着地点

 インディーズ映画。大半は自主映画と呼ばれ監督の自己資金を中心に作られる映画であるが、年間何百本も作られている。そんなに作られているのに大半の方は目にしたこともなければ聞いたこともないだろう。
 普通に生活していて近年聞いたことがあるインディーズ映画は『カメラを止めるな!』くらいであろう。様々な映画館で上映され、金曜ロードShow!でも放送されたため見た方聞いたことのある方も多いであろう。

年間数百本も作られる他のインディーズ映画はどうしているのだろうか?

大半の作品は映画祭落選の後、終着点は監督のPCのハードディスクの中に眠っているかYoutube無料公開されるのが実情となっている。
 一本あたり100万円以上かけられることもあるインディーズ映画の執着地点として実に寂しいように感じる。もちろん『カメラを止めるな!』のように華々しく多くの人の目に触れる作品もあるがそれはごくわずか。多くの映画祭で選出され受賞した選ばれし監督作品のみ、お眼鏡かなって短観映画館で上映されたり次回作が商業映画となったりする。回収の目途がある作品はDVDがプレスされて販売されたりダウンロード販売されることもあるが、そんな作品は稀で大半は過去の霧の中に消えてゆくのである。大半のインディーズ映画は制作費など回収できないし、人目に触れることもないのである。

近年の着地点の変化

 そんなインディーズ映画であるが、近年大きな変化があった。Youtube、AmazonPrimeVideo、Netflix、U-NEXT、Hulu、dTVなどをはじめとしたストリーミング動画サービスの普及である。
 これはインディーズ映画監督としては非常に良い状況となった。映画祭で選出もされず自主上映も行われずハードディスクの中で全く日の目を見なかった作品でもYoutube公開を着地として、登録者・再生数次第では制作費も回収できる。少しお金に余裕があればVimeoのように高品質を売りとしたストリーミングサービスでネット上映や販売もできる。少し話はズレてしまうが、TwitCastingのような配信サービスを使って、ネット上映イベントも簡単に出来るようになった。
 そして何よりもAmazonPrimeVideoなどの商業作品が並ぶプラットフォームで取り扱ってもらえる可能性が出てきたのである。

ストリーミングサービスに作品を登録する方法

 一般的には登録業者と知り合い、そこを通してストリーミングサービスに作品を登録するのが一般的なようだ。少なくとも筆者の周りでは皆、間に企業が入ってくれて登録代行をしてくれている。
 では哉司監督も業者に頼んで登録してもらったのか?と言うと答えはNoである。業者だって暇ではないし営利目的なわけで、もちろんお金がかかるのである。無冠無名監督の哉司監督にはお金を払って回収できるあてなど無い。ではどうしたのか?
 業者がやる登録する方法を個人でやっただけの事である。中には「えっ?!」と思われた方もいらっしゃると思うのだがそれが可能なのである。とはいえ誰でもどんな作品でも登録出来るわけではない。AmazonPrimeVideoDirectと言うサービスから登録するのだが、サポートページにはこう書かれている。

一般的に、プロが制作した長編映画やTV番組で、劇場公開された、主要なテレビネットワークで放送された、あるいは主要な映画祭で選出されたものにライセンスが付与されます。タイトルにこれらの属性が1つ以上ある場合でも、Prime Videoはライセンスを付与しない場合があります。逆に、Prime Videoは、劇場公開されず、テレビ放送されず、主要な映画祭で選出されていない、少数のタイトルにライセンスを付与する場合があります。

 色々書かれているが嚙み砕くと「プロが作った映画や番組で上映されたり放映された作品はOK!有名映画祭選出作品もOK!でも全部がOKってわけじゃないよ!拒否する場合もあるよ!!あ、それ以外の作品でもたまにOKするよ!」と勝手に読み解いたのである。そして無冠無名インディーズ映画監督の哉司はこう思った。

「…ん?俺の作品もチャンスあるんじゃね?」

そんな軽い思いで申請へひた走るのであった。

※2021年6/1現在、ノンフィクションとショートフォームコンテンツの未承認ライセンスは受け付けていないようである

Amazon Prime Video Directに申請

 何はともあれ作品を申請するアカウントを作る。法人化していたり個人事業主登録をしている人間であれば問題なく登録できるであろう。配信して収入になるのだから個人であっても個人事業主となっておくことは当然の前提なのだろう。少し手間取ったのは税務関係である。『やどかり珈琲モルモット』は英語字幕を作っていないこともあり日本限定配信予定なのだったのだがアカウント登録時にヨーロッパと米国の税務情報も記入させられるのだ。税務番号が分からなくて戸惑ったがなんてこともなくマイナンバーの事だった…程度の手間取りである。
 それが終わればついに作品申請である。タイトル、カテゴリー、概要、ジャンルなどの映画情報やオリジナルの配信日(やどかり珈琲モルモットの場合はミニシアター上映日を配信日とした)、タイトル込みのキーアートや背景画像と言われる劇中写真を提出。少し困ったのがレーティング。映倫など通していない本作は公式なレーティングのないタイトルとして提出するも、「全年齢」「子ども」「指導が必要」「16歳以上」「大人」のどれに属するのかが不明であった。感覚で全年齢と子どもではないことはわかっていたが「指導が必要」が何を示しているのか分からず「16歳以上」とした。結果として手動審査と自動審査で「指導が必要」であるという指示が出たため「指導が必要」(13+)と判明した。
 あとは制作スタジオや監督や出演者を記入し、予告ファイルと本編ファイルをアップロードし、プライム上映OKか?販売・レンタルの有無、価格を決めて審査に出す。ドキドキの時間である。とは言え祈るほか何もできない俎板の鯉である。
 公開後『検索結果に出るまで24時間かかることがある』と書いてあるが、審査結果がどれくらいで出るのかは書かれておらず、いつまで俎板の鯉でいれば良いのだろうか?と考えてしまった。最終的には約10日間俎板の鯉だったが審査は無事通過し翌日には検索結果に出るようになり、インディーズ長編映画『やどかり珈琲モルモット』無事Amazon Prime Videoデビューとなった。

今後の無名インディーズ映画の着地点

 哉司監督率いる(?)映像制作団体Three.Pieces.Pictures.通称Three.P.s.は自主映画応援チャンネルとしてYoutubeチャンネルを収益化しており、3監督のオムニバス映画DVDを自主制作しSTORESにて自主販売、さらに今回Amazon Prime Video配信が長編のみのくくりはあるが配信出来たという事で、哉司監督同様に映画祭で箸にも棒にも掛からぬ作品であっても希望が持てる結果になったのではないでしょうか?
 Youtubeは収益化まで登録者1000人以上再生4000時間が必要。自主DVD販売は販売枚数によっては赤字もあり得る。AmazonPrimeVideoは審査がある。とハードルはあるが、せっかくお金と時間と情熱をかけて作った作品…そして多くの方に協力していただいた大切な作品は少しでも多くの方に見ていただきたい!と思うのは作り手の皆さん共通の思いかと考えます。この記事を読んで少しでもチャレンジへのきっかけになれば嬉しく思います。
 最後になりますが、無名団体Three.Pieces.Pictures.の無冠監督哉司作品『やどかり珈琲モルモット』を審査し公開配信としてくださったAmazonPrimeVideoDirect様の懐の広さと寛容さに驚いております。本当に感謝の言葉もありません。本当にありがとうございました。そしてこのような記事に興味を持ってくださり目を通してくださった皆様に感謝申し上げます。宣伝となりますが今回公開となりましたやどかり珈琲モルモットとSTORESにて自主販売中のオムニバス映画DVD、そして運営中のYoutubeチャンネルの応援どうぞよろしくお願い申し上げます。

©︎Three.Pieces.Pictures.

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