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畑の隅

父方の祖母はとても苦労した人で、その当時にはめずらしく祖父と離縁して、女手ひとつで息子二人を育て上げたそうです。

農家の家なので米作りをはじめ、畑仕事、果樹栽培、部品工場の内職など、できる仕事はなんでもしてお金を稼いでいたとのこと。
そのバイタリティは子どもながらに目を見張るものがあったと叔父と父は今でも話しています。

祖母は本家に叔父家族と暮らしていました。

ひとつ屋根の下の従姉妹たちは祖母からかなり厳しく躾けられていましたが、私と兄に対しては普段生活を共にしていないこともあり少し遠慮があるように感じました。

それでも孫の中で一番年下の私は特段可愛がってもらえ、小さい頃は泊まりに行くといつも祖母と同じ布団で寝させてもらえました。
優秀な孫たちの中で落ちこぼれだった私だけが同じ布団で寝ることができたのは唯一の自慢です。

そんな祖母が亡くなって七年。

お葬式のとき、孫の中でとりわけ一番厳しく接されていた従姉妹の姉が、棺の中にお花を入れるときポツリと
「このグラジオラスばあちゃんが一番好きやったね。畑の隅にたくさん育ててた」と言いました。

あれだけ厳しくされて祖母を疎んでいた従姉妹もやはり心の中では愛していたんだなと当たり前のことを思いました。
それと同時に、花屋になったくせに祖母が好きな花の一つも覚えておらず、孫の中で一番可愛がってもらえたと自惚れていた自分が急に恥ずかしくなりました。

グラジオラスが入荷するたび祖母を、そしてあの時の従姉妹の言葉を思い出します。

本家の畑の隅には今、真新しいお墓とグラジオラスが。
それは祖母が育てていた時と同じ、まっすぐ、空へと高く。

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