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つらいときに、思い出す人のこと。

人よりは恥が多いという自負がある。
ただ、ここ一年は「恥が多い」では済まされないくらい、「やってしまった」が多い。

たとえば、昔からタスクが積み上がると頭が混乱し、忘れっぽくなる。以前に聞いたことを忘れ「あの時話したけど!」みたいなことが何度もあった。

以前の経験では自分にとっては鬱の初期症状のようで、その後もっといくと真っ直ぐ歩いているつもりでも物にぶつかり続けたり、涙が止まらなくなったりする。

個人的に「引き受ける=自分の役目」という気持ちが人より強いようで、決めたことが遂行できないのが辛い。そして「忘れてた」は「やってない」より対処ができないので、ダメージがでかい。

最近そういうことがまた増えてきた。

みんながいるときは笑われたり励まされたりすることで少し気が楽になることもあるけれど、一人になるとそういうことを繰り返してしまうのがやっぱり悲しくて、自分が不甲斐なく消えてしまいたくなる日もあった。

ただ今は以前とは違い、消えてしまいたくなる日に思い出すことがある。
突然いなくなってしまった、ともだちのことだ。

学生時代に出会い、今まで細々ながら付き合いを続けてきた。わたしが地元に戻ってから、またちょこちょこ遊ぶようになった。

パートナーと子供たちに囲まれ、
仕事もわたしと同じ時期に新しい職場に就職し、順調だと嬉しそうに話してくれていたのだ。

発言や意見を述べるときはいつもクールで、くよくよしているわたしに「抱えてないで話し合わないとダメだよ」とピシャリと真っ当な意見を投げてくるような人だった。

でも、とてもあたたかい人だった。

わたしが引っ越す時も、頼る人がいなくてギリギリまで悩んでいたわたしに「手伝うよ」と声をかけてくれて、車いっぱいにわたしの荷物を積み、実家まで運んでくれた。

信頼する人には本当に優しかったし、「努力を努力と思わないこと」ができる人だった。
わたしはずっと信頼していたし、少し嫉妬もしていた。

完璧な人というか、自分にない幸せを持っている人だと思っていたからだ。

ある日、職場に子どもたちと一緒に会いにきてくれて、仕事をしながら話をした。
その日は休日で大きなイベントがあり特別忙しい日だったので、あまり長く一緒にいられなかった。
なんとなく疲れているように見えたけど、それを聞くことはなんとなく憚られた。

その2日後、わたしには持っていない「幸せ」をたくさん持っていたはずのともだちは、
そのほとんどを置いて、突然いなくなってしまった。
わたしはいなくなってしまってから一週間ほど後に、パートナーからのメッセージで知った。

LINEやSNSも確認したが返事はなく、電話をしても出てはもらえなかった。
そして、全て途絶えてしまった。

昔、ともだちが苦悩していたことについて、話を少し聞いたことがある。
内容は書かないが、耳を疑うほどのこともあった。それが影を落としていると言われても、おかしくはないことだった。

ただ、ともだちは何も諦めていないように見えたし、それぞれの道を歩む中で、愛する人に出会い、子どもができたと聞いた時、喜びと安堵の気持ちがあった。

いなくなった時、ともだちがどれだけの辛さを抱えていたのかは、今はもうわからない。
いなくなってから、ともだちについていろいろな事を聞いたし、その内容のほとんどは、知らない話ばかりだった。
でも昔と違うのは、どの話も本人から聞けなかった話なのだ、ということ。

ともだちはわたしにはなにもこぼさずに、いなくなってしまった。
たくさん助けてもらったのに、わたしは大事な時に助けてあげられなかった。
それは今も一番悲しいことだ。

わたしには「抱えるな」って、言ったのに。

あの時「元気ない?」と言えたならひき止められたのだろうか、とか、
わたしもそっけなく映っただろうな、とか、
何を考えてもしょうがなかった。

会いにきてくれた日のイベント写真は、何度見ても胸がきゅっと締め付けられる。その時のことを思い出すからだ。

一回パートナーがともだちを「探しにいくからついてきて欲しい」と言われたことがある。

行けなかったが、自分は離れるときには戻らない覚悟をするだろうし、そんな人を連れ戻したいとは思えなかったから、行かなくてよかったと今は思ってしまっている。

ともだちは今のところ、死を選んでいないと聞いた。それがわたしにとっては救いだ。
会えないままでいいから、生きることは最後まで諦めないでいて欲しいと思う。

人生において「諦めない」ことが一番すごいことと思う。すごく難しいことだ。
諦めきれない何かがあれば、人は生きていけるような気がしている。

ともだちが散々悩んだだろうけどできなかった、同じ場所で踏ん張り続けること。
助けてもらったわたしは諦めないように、つらいときにはともだちのことを思い出して、自分を奮い立たせるようにしている。

いつかまた会えたら「あなたのおかげで諦めずにいられた時が何度もあったよ」って伝えたいと思う。

そして、ひとつ思うこと。

相談してもらえなかった悲しみよりも、相談できなかった悲しみの方が、きっと深いと思う。
これからはちゃんと自分の気持ちを正しく打ち明けられるようになりたいし、打ち明けてもらえるような人間になりたい。

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