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シンエヴァが賛否両論だったのはヘルシーな豚骨ラーメンだったから(仮説)

※この内容はシン・エヴァンゲリオン劇場版のネタバレを含みます。

ネタバレ厳禁の雰囲気も溶け始めてきたので、これまで書いてきた個人的な勢いの感想ではなく、シンエヴァを取り巻く反応について思ってきたことについてまとめてみたいと思います。

以降ネタバレ注意












まず、作品感想からすると、旧作からのファンである私にとっては素晴らしい作品でした。そう思って他の人はどうなのかといろいろと感想を見ると、好印象な意見がある一方で、認めていない意見も存在しました。単に、逆張りで俺かっこいい、みたいなレビューもあったのですが、同じ旧作ファンでも意見は分かれており、確固たる意志で疑問を投げかけたり、否定しているからと言っても嫌悪感を抱くことなく納得できる意見もありと、賛否両論あったので、その理由についての仮説を思いついたので書いてみたいと思います。
そもそもエヴァンゲリオンについて旧作ファンが、単なるアニメと考えず経験と結びつけているという背景がそこにはあると思うのですが、今回は、エヴァ=ラーメン、庵野監督=ラーメン屋店長することで例えられるのではないかと思い、シンエヴァが賛否両論になってしまった理由(仮説)を披露したいと思います。

今からおよそ25年前、醤油ラーメンしかなかった日本に革命的なラーメンが現れた。そう、ラーメン屋ガイナ家が作り出したエヴァンゲリオンラーメンである。それは脂たっぷりの濃厚な豚骨ラーメンで、次々と若者を虜にしていった。皆が毎週毎週通い詰めたが、25週目で異変が起こる。なんとラーメンに麺が入ってないのである。翌週もラーメンに麺はなく、戸惑う客を前にガイナ家はエヴァンゲリオンラーメンの提供をやめてしてしまったのである。店の前には顧客たちの戸惑いの声がこだました。
それから1年以上がたち、なんとガイナ家がエヴァンゲリオンラーメンを復活させることになった。客は当然復活したガイナ屋に殺到する。そこには、顧客の求めていた濃厚な豚骨ラーメンがあったかに見えた。しかし異変が起こった。それは一杯目を食べ終えようとしたときのことである。急に店員が現れ替え玉と追加のスープを入れたのである。一瞬面白いサービスと思う客たち。しかしそれは麺というには量が多く、スープとは言えないほどの濃すぎるスープであった。とても人間が食えるものではない、皆がそう思った。だが客は必死にそのラーメンとも料理とも言えない何かに必死でくらいついた。
そんなときで、店の奥から店長が現れ、客から丼を奪い投げ捨てると、店の外に追いやって扉をしめてしまったのだ。私もそのうちの一人で、閉められた店からおろされるのれんの揺らめきを今でも忘れていない。

それから10年ほどたち、あの店長が再びエヴァンゲリオンラーメンを作るため新たにラーメン屋を立ち上げた。その店の名前はカラー家といい、その前には4人の客がいた。
一人目は、エヴァンゲリオンラーメンとガイナ家に心酔する男(以降"心酔客"とする)。当時、日本初の豚骨ラーメンを生み出した斬新さと、料理ともいえないものを客に出し、客を店から締め出した店長の気骨に憧れている。
二人目は、10年前に店からたたき出された記憶を笑って友と話しながら、かつての美味しかったラーメンが今どうなるのか期待してきた客(以降"常連客”と呼ぶ)
三人目は、料理とも言えない料理を出し店を追い出した店長を恨む客。なぜ、恨みながらもここにいるのかは、あのおいしいとんこつラーメンを再び食べたいからだ。(以降"豚骨派"と呼ぶ)
四人目は、過去のガイナ家を知らない新規顧客。伝説のラーメン屋が復活すると聞きつけ集まったのだ。(以降"新規客"と呼ぶ)
復活したエヴァンゲリオンラーメン”序”は、かつてのラーメンを思い起こす豚骨ラーメンだった。新酔客はパンチのある脂の強さにに喜び、常連客は懐かしさに喜び、豚骨派はきっちり豚骨ラーメンが食べれたことに安堵し、新規客は初めて食べた豚骨ラーメンに感動した。常連客は昔とほぼ同じ味に懐かしさを感じるとともに少し物足りない気もしていた。前とそっくりなラーメンだったからである。ただし、そんな疑問もすぐに解消される。2年後に現れるエヴァンゲリオンラーメン"破"によって。第2弾”破”ラーメンは、これまでの豚骨ラーメンの良い部分を抽出し、誰もが楽しめるようなそんなラーメンだったのだ。4人の客はみな満足した。そして次の"Qラーメン"を楽しみに待った。
3年後、さらにおいしい豚骨ラーメンを楽しみに集まった4人の客に衝撃が走る。なんと次に現れたのは、豚骨ラーメンではなく、激辛冷やし中華だったのである。豚骨派はキレる。俺が食べたかったラーメンと違う。”破”ラーメンの進化の先が食べたかったのだ。豚骨ではないし、冷やし中華になっている。新規客も憤る。あの2杯つづけて美味しかった豚骨ラーメンを食べるために店に来たのにと。(あまりにブーイングが大きく、店長がしばらく店を開けることになる)
一方、心酔客は笑う。そう、こういう無茶苦茶な期待を裏切るのが店長のスタイルなのだ。あの武骨な精神を店長は忘れていなかったのだ。常連客も冷静だ、怒ることはない。なぜならガイナ家で出された料理ですらないあの替え玉を忘れていないのだ。これはラーメンではないが、完成された麺類が出てきたのだ。ありがたくその冷やし中華をすすった。かみしめれば、ほのかに豚の香りがする、と。

そして8年後、集大成として完成したシンエヴァンゲリオンラーメンの前に再び4人が集まった。
そしてそこにあったのは、脂っこさがまったくない洗練された昔ならの醤油ラーメンのような、健康嗜好ともいうべき豚骨ラーメンだった。今回は店長がそっと現れ、過去のラーメンに使っていた出汁は何だったかを丁寧に説明し、今回は何を変えたのか説明し、客が食べ終わるのをゆっくりと見守り、食べ終わった客が水を飲み、自分のタイミングで帰るのをじっくりと待った。
常連客は泣いていた、涙でラーメンの味をじっくりとは味わってはいないが、その店長の誠実で真摯な対応に感動していた。あの料理とも言えない料理を出し、店から追い出した店長が、こうも優しく好きだった豚骨ラーメンを丁寧に差し出してくれることに。健康志向のそのラーメンは、時代に乗った単なありきたりなものでなく、真摯に顧客に美味しく食べれるラーメンを出すためにたどり着いた結果だと感じていた。
新規客は店長の気遣いを気にもとめず、ただそのラーメンを美味しいと言って笑った。横で常連客が泣いている理由はよくわからなかった。
一方、豚骨派は物足りないと感じた。これでは豚骨ラーメンではなく、私が食べ飽きた醤油ラーメンではないか。俺の欲しい豚骨ラーメンではないと。
そして心酔客は心の底から絶望していた。料理やラーメンといった概念を超えたものが出てくると思ったのに出てきたのは昔ながらの醬油ラーメンのようなもの。毒か爆薬でも入ってくると思ったのに、あの荒くれ店長の変わり果てた紳士のふるまいに悲しみ、「気持ち悪い」とつぶやいて店を去った。

というのが、私がいろいろレビューを読んだファンが賛否両論になってしまった理由をラーメンに例えた話(仮説)になります。シンだけでなくQでの感想も巻き込んで書いてみました。求めるもの、経験とその捉え方の違いが賛否両論につながったのではないかと思います。
ちなみに、すべてのファンがこの4人のいずれかに属する訳ではなく、肯定派と否定派の代表格をピックアップしました。常連客にしてもいい思い出として二度とラーメン屋に来ない人もいれば、この次のラーメンはもはやないことに悲しむ人もいますし、じっくりまたラーメンを食べに来ようと思う人もいるでしょう。新規顧客の中にも店長の解説に心を打たれた人もいれば、物足りないと思った否定派もいると思いますし、5人目、6人目、その先の客もいたでしょう。

エヴァの旧作ファンが単なるアニメコンテンツではなく、青春や思い出という言葉で表すのは、この監督の個性やメッセージが強く表れた作品であり経験であるためだと思います。
美味しかった豚骨ラーメンだけでなく、一緒に通った仲間や店長との交流を含めてもともと肯定してきた人たちにとって最後の一杯に対して、豚骨ラーメンを求めるのか、単にラーメンを求めるのか、店長の変わらない姿を求めるのか、変わった姿を求めるのか、それぞれに応じて感想は違うのだろうと思い、今回はこのような話にまとめてみました。

おまけ:今回の話のまとめ

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