AVヨウヤクセイフモ

公開講座『AV出演を強要された彼女たち ようやく政府も動き出した』に参加してきました

NPO法人「女性の安全と健康のための支援教育センター」による公開講座
『AV出演を強要された彼女たち ようやく政府も動き出した』に参加してきました。

PAPSの宮本節子氏と、弁護士の角田由紀子氏によるトークです。

微妙に迷ったのですが、ほぼ記録用として、記します。


【内容】

1、宮本氏の自己紹介
2、相談の概要
3、“被害者の意識”について
4、宮本氏の、相談の聞き方のスタンスについて
5、質疑応答

【1〜4まで、内容ごとのポイント】

1、
・“フリーのソーシャルワーカー”を名乗っている。
・「コミュニケーションさえ取れれば、ソーシャルワーカーなんて誰にでもできる仕事だ」と思われているけれど、専門性が必要。プロである必要がある。

2、
・まだ「AV出演強要被害」について相談を受けています、と提示していない時に、自力で相談機関(PAPSやライトハウス)にたどり着き、賭けのような気持ちで相談してくれた被害者(たち)がいた。そのおかげで、今社会問題化するにまで至れている。

・被害内容での被害者の記号化をしたくないという思いがあったが、「AV出演強要被害」ということで、「自分のことだ」と思ってくれた人たちがいた。「性暴力」「性被害」という言葉では響かなかった。

3、
・AVへの出演に関しては、女性(←注;被害者と言いたかったのだと思われる)自身の意思と行動の関与があるため、「私も悪かった」と思ってしまいがち。

・被害者は「誰にも言いたくない、言えない」という気持ちと「誰かに言いたい、話して解決したい」という自己矛盾を抱えている。

4、
・「言いたいこと以外は言わなくていい」というスタンスで聞いている。ストーリーを作らず、本人のしたいこと、本人の思いを尊重する。


【質疑応答、その他発言で特に気になったもの】

・同意、合意の基準がこの国には実質ない。
・成年/未成年/児童 の間、それぞれの隘路を狙われている(法律の境目)
・裁判をするには、被害者が費用を負担しなければいけない。「被害を受けたのは私なのに、なぜ私がお金を払わないといけないの?」という被害者の声が少なくない。
ゆとりを持って生活できる人件費が、継続的に必要。そうでないと、支援員は十分な支援ができない。
・所轄の警察に行くときには、警視庁などから一報入れてもらってから行くなど、“権威を使う”ことがある。
今ある法律をちゃんとすれば、解決するものもたくさんある
婦人相談所が機能しなかったのはなぜなのか、きちんと分析すべき
・支援者(のメンタリティ)の支援も必要。
・日本社会として、女性の貧困をどうするか。
(“貧困”は経済的条件だけで決まらない……教育機会、文化、人間関係など)
・みんな契約に弱い。弁護士でも「契約しちゃったんでしょ?」とか言う人もいる。市民として「悪法は法ではない」と声を上げるべき。
・「AV出演強要問題が契機となり、風俗からの相談も増えるのでは?」と思っている。
・AVを楽しんでいる男性が、AV出演者を差別する、という“社会構造”がある
・学校の性教育で、男女が対応と学んで欲しい
(現在は、男尊女卑が目に見えないメッセージとして常に発信されている)

などなど。でした。


【ざっくりとした感想】

一番頷いて聞いたのは、宮本氏のお子さんの話でした。
「男らしく、女らしくといった育て方はしていなかったのに、『なぜ男なのに家事をしなきゃいけないの?』と言われ、キレたことがある」という。
で、その話をしたところ
「子どもは家庭の中だけで育つわけじゃない。家庭の中でどれだけしてもダメ、ヨソで学んできてしまう」
と言われた、という話です。

以前「性教育、誰がすればいいんだ問題について思うこと」という記事を書きましたが、
子どもの世界って、一か所で完結しないんですよね。
家庭で過ごす時間、学校で過ごす時間、そのどちらでもない場所で過ごす時間、があって、
それぞれの中で、それぞれに、いろいろなことを学んでくる。
それぞれの環境、特に家庭環境による影響は非常に大きなものになるとは思うのですが、
家庭だけでどうにかするのって無理があるなとは思います。
家庭・学校・第3の場所、で、それぞれが補い合えるといいんですけどね……。

あとは、「支援の継続には人件費がいる」という話。
そうそう、「食っていけない」「カツカツすぎて生きるのに余裕がない」ような状態では、安定した良質な支援を行うのは難しいですよね。
十分な人件費が、継続して用意できないといけない。
(職にあぶれる不安、お金の不安は、大変なものですよね)

私自身、いま稼ぐ力に非常に乏しい生活をしているので、どれだけ意味があると思えることでも「無償で**やって」って言われたら、現実問題として多分頷けないだろうな……と思いました。


【雑感】

今日の話をどうまとめようか、迷いました。
正直なところを言ってしまうと、満足とは言えない講座だったからです。
会場の雰囲気も含め。

たとえば、自己紹介で「無職です」と言った時、
また、相談者たちが使う言葉として「身バレ・親バレっていう言葉があるみたいなんですね」という説明があった時に、
なぜ、会場で笑いが起こったのか。
ネタのようにそれを言えるのか。
「えっ、全然笑えないんだけど、私が気にしすぎ?」って、一瞬揺らいでしまうくらいの扱い。

あとは、言葉尻の問題と言われそうですが
「(被害の中でも)強姦が極めつきですが」と、被害の大小を規定してしまうような発言があったり、
「(AVではない)“普通”のエンターテインメントもあつかっている」という、AVをアブノーマル扱いする発言があったり。

あと、私は講座の「ようやく政府も動き出した」の、政府の動きの部分について主に聞きたくて参加したので、そこの話がほとんど、丸っとスルーされていたのが一番の不満ポイントでした。なぜそうなった……?

また、講座の頭の方で、AV出演強要について知ったHRNの弁護士が
「ブログで、“安易にAV出演の勧誘に乗ってはいけない”」と書いてくれた、という話が好意的にされる場面があったのですが、
これって、被害者が抱えてしまう自己矛盾を強化する言説だと思うんですね。
「“安易に”勧誘に乗った私も悪いけど」って思っちゃったり。
これも「単に言い方の問題」って言えないこともないかもしれないんですけども。

気になったので、そこのところ「PAPSさんでは、そのような文言に対してどのような配慮をしていますか?」と質問用紙に記入してみたところ
「質問の意味がわかりません」で終了してしまいました。
(ただし、これは私の質問の仕方も悪かったです)
(もしいつか機会があれば、その時にまた聞いてみます)

なお、上記以外で私、もういくつか質問をしているので、
せっかくなので以下に記しますね。


Q、(AVに出演したことが被害者のダメージにならないためにも)たとえ「“安易に”出演したのだとしても問題ない、大丈夫だ」という環境を作れたらと思うが、そのためには(法律、業界努力、社会的スティグマの解消など)どのようなことが必要と思うか?
 A、業界の努力次第。

Q、女性以外からの相談はあるか?
 A、男性、セクシュアルマイノリティからの相談もある。男性は、女性以上に被害を言語化しにくいようだ、と感じる。

Q、仕事自体は続けたい、という人にはどのような対応をしている?
 A、「したいならすれば?」などと突き放すことはしない。また、言われた要求のみ聞く。本人の選択にはどうこう言わない。

あとちょっと記事で書きにくいので省きますが、
配布された資料の項目が不明瞭だったので、その点についても質問しました。
(AV出演強要被害についての資料のはずが、タイトルに『及びその周辺の性風俗関連の相談』とあったので、AVではない相談事例も件数に含まれてしまっている資料なのでは? という懸念からでした)
(こちらも、私も質問の仕方が悪かったため、疑問解決できませんでした)

そして、最後になりますが

今回、深く語られることはありませんでしたが
AV含め風俗産業について、そもそもその存在自体を問題にしているのだな、というのは伝わりました。
「“性を買う”ことへの社会的認識が、ヨーロッパ(※)とは違い、日本では議論もされていない。性を買える環境が、空気のように普通にある」という話がありました。
「性を買うことに、社会的制裁がない」とか
「性を売ること、それは尊厳としてどうなのか、論ずる必要がある」とか
「風俗は必要悪なのか(存在すべきではないのでは)?」といった発言がありました。

(※)
いわゆる“北欧型”の国のことと思われます。
“北欧型”とは、売春者を処罰せず、しかし買春者は罪に問おう、という感じの話です。
アムネスティインターナショナルによる提言、また各国のセックスワーカー当事者団体、研究者たちからは、北欧型はセックスワーカーへのリスクをさらに増大させてしまうものであると言われています。賛否はあるようです。


その点に関し、私はアムネスティの提言セックスワークの非犯罪化の主張)を支持しているので、全く賛同はできないのですが
PAPSさんたちのような支援者や、私のような(支援者ですらない)第三者がどのような信条を持っていようと
それによって、相談者が抱えている問題の解消の質が左右されてはいけないので
注視なりしていかなければならないのかな、と思いました。

宮本氏の語っていた“ソーシャルワーカーとしての姿勢”については
聞いている限り忠実というか、
お手本のよう、プロだな、と、私は感じました。
だから、信条が違っていてもプロとして相談者に対応しているのだろう、と思うのですが
しかし宮本さんに限らず、人間はミスをします。
ヒューマンエラーみたいなものって、絶対に、誰にでも起きるので
“支援者の抱く道徳観”が漏れ出てしまっていないか、など、近くで見て指摘してくれるような人がいたらいいのかな……というようなことを思いました。
(“道徳観”の内容がどうであれ、支援者はそれを前面に出してしまってはいけないものだと思うので)


おわり。

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