tiki

駆け出しの物書き。曲や風景や、その時浮かんだシーンから勝手に妄想膨らませて勝手な物語を…

tiki

駆け出しの物書き。曲や風景や、その時浮かんだシーンから勝手に妄想膨らませて勝手な物語を書いています。基本的には一話完結。お立ち寄りいただけたらとてもうれしく思います。

最近の記事

春風 RE:RE:Restart

「ユウキさんはまだアイカさんのことを好きなの?」 ユウキは唐突の言葉に何も答えられなかった。 リナもそれを察してかそれ以上の追及をすることもなく、ただずっと黙ったまま時間は過ぎた。一分?五分?十分?いや、いや、もっと短い?二人の沈黙を切り裂いたのはユウキだった。 「そんなことないよ・・・。」 どうにも歯切れは悪い。その反応をリナは敏感に察していた。 「・・・嘘。そんなの信じられないよ・・・。」 涙がにじむ声でリナはそう問いかける。 「見えるから、ユウキさんのこと、見てるから

    • 春風 RE:Connect

      とある晴れた日曜日の午前十一時。表参道のみずほ銀行前。 ユウキはガラスに映る姿を見ながら髪型のチェックをしていた。 「おはよ。」 後ろを振り返るとそこには少しだけオーバーサイズの春らしいトレンチコートを着たクロカワリナが立っていた。 「お、おはよ。」 ユウキは思わずさっきの前髪チェックを見られてしまったのだろうかとバツが悪そうに挨拶を返した。 「急にごめんね、誘ってしまって。」 「ううん、いいの。大丈夫。」 リナはニコッと笑ってユウキを見た。 穏やかな風が時折リナの髪の毛を揺

      • 春風 -altanative‐

        :0 何度目かの平成の年が過ぎ、いつしか最後の平成と言わるようになっていたころ。 そろそろ冬が終わる。平成最後の春が来る。そんな三月の初旬のこと。 柔らかな日差しにいつもよりも少しだけ気温が上がる。 ユウキは渋谷で東横線を降り、いつものように地上を目指す。 TSUTAYAの目の前に出る地下鉄出口を出る。 階段を上るたびに、だんだんと目の前は明るさに包まれていき、出口を抜けるとぱぁっとした光と共に多くの人が目の前に現れた。 「相変わらずいつ来ても人が多いな。」 ユウキはふと一瞬

        • Steps for being the heros -第五章:罅裂-

          (震えてる・・・。) リカは換装の手伝いをしながらも、トオルのその指先が微かに震えているのを見逃してはいなかった。 それでもあえて言葉はかけず、換装を進める。 「行けます。」 トオルはそう言うと、ヘルメットを装着した。 「今回は警察も一緒に行く。もちろん戦闘要員としてだ。」 未だ不服そうなトーンでハヤタはトオルに語り掛けた。 その言葉にコクン、と頷くと、トオルは車から降りて行った。 連なってハヤタも車を降りていく。 その姿を見送った後、リカはオペレーションブースに座り、ヘッド

        春風 RE:RE:Restart

          Steps for being the heros -第四章:資質-

          「ねぇ、あれ大丈夫なの・・・?」 「ヒーロー負けちゃうの・・・?」 「やっぱりあいつじゃダメだったんだよ。」 人ごみの中からざわざわと思い思いの声が漏れる。 人ごみを背にして、ハヤタは唇を噛む。 「あの野郎・・・っ!こんなところで終わんなよ!」 ハヤタはぼそっとバーサーカーに埋もれていくトオルを見ながら言葉を紡いだ。 さっきまで見えていたトオルの背はどんどんバーサーカーに埋もれ、 引きはがそうとする伸ばした手も波に埋もれてその山を出たり入ったりしている。 その人数の圧力と力を

          Steps for being the heros -第四章:資質-

          Steps for being the heros -第三章:自問-

          「トオル!五時の方から突っ込んでくるよ!」 『了解!』 トオルは顔を上げ、体を反転させるようにバーサーカーのタックルを回避した。 トオルはそのままバーサーカーの背を蹴り飛ばす。 「ぐうぅあああぁぁ!」 苦悶に満ちたような叫び声をあげてバーサーカーは壁沿いに置かれた植え込みに突っ込んだ。 「ぐううぅ・・・。」 唸り声のような声を上げ、バーサーカーは額から血を流しながらトオルを睨みつけtる。 「これで終わりだ!!!」 トオルは拳を振り上げて、バーサーカーへと向かっていく。 渾身の

          Steps for being the heros -第三章:自問-

          Steps for being the heros -第二章:選択ー

          「この前の恵比寿での戦闘、どうだった?」 小さな会議室にはアツシとコウタロウ、トオルの三人が座っていた。 静かにアツシはトオルへと尋ねる。 「全然うまくいきませんでした。不格好で・・・。」 「最初なんてそんなもんだろう。」 アツシは椅子に思い切り背をもたれながら天を仰ぐ。 「最初からうまく戦えたらそれこそヒーローなんていらないよ。」 ニカっとした表情でアツシはトオルに語り掛ける。 「は、反省会・・・じゃないんですか?」 トオルは呆気に取られて、思わず呆けた言葉を出した。 「反

          Steps for being the heros -第二章:選択ー

          Steps for being the heros -第一章:始動ー

          20xx年。ここはちょっとだけ未来の日本。 科学技術の進歩によって犯罪者もだんだん武装する人も多くなり、物騒になってしまった日本。 都市部では非合法のドラッグ『バーサーク』が蔓延し、狂暴化する人間も増えていた。 都市部での犯罪件数も多くなってきており、政府は自衛隊・警察に次ぐ、第三の防衛手段を模索していた。 「いやぁあああああ!!」 多くの人の避難誘導をする刑事の後ろで転ぶ人に向かって看板を振り上げる男。 その目には一切の理性を映さず、狂気の色しか見えなかった。 もう逃げら

          Steps for being the heros -第一章:始動ー

          想いが形になる、その意味を。 -Last scene-

          「れいちゃん?聞きたいことがあるの。」 レイナが一通り話すと、おばあちゃんはゆっくりとそう尋ねた。 「聞きたいことって?」 「その箱のことなんだけど・・・。」 「箱?」 レイナはまだ何のことなのかわからず呆けていると、おばあちゃんは立ち上がり、自分の部屋へと入っていった。 なんだろう、とレイナは不思議がりながらコーヒーに口をつける。 ミルクの優しい香りが鼻の中を抜ける。 少しして、おばあちゃんは戻ってきた。その手に小さな箱を持って。 「おばあちゃん、それって・・・。」 コトン

          想いが形になる、その意味を。 -Last scene-

          想いが形になる、その意味を。 -scene:4 A story before the last story-

          4月だけど少しだけ寒さを含んだ風が弱く吹いている。 見上げた目線にはシンボルとなっている時計台が見える。 桜はとうに散ってしまい、ほとんどが葉桜に変わっている。 レイナは揺れる髪を耳にかけ直して、一歩ずつ構内へと歩みを進めた。 『大学はどう?』 ヒロトからのラインを受信する。 卒業式のあのことはお互いに触れぬまま、何とも言い難いやり取りが続いていた。 お互い話したい時だけ話しかける。そんな都合のいい関係。 「やっぱり甘えてるや・・・。」 レイナはぼそっと呟きながら、携帯をコー

          想いが形になる、その意味を。 -scene:4 A story before the last story-

          想いが形になる、その意味を。 -scene:3-

          「ヒロトー!ご飯できたよー!」 母が呼ぶ声が響き渡る。 「あー、今行くー!」 ヒロトは読んでいたマンガをベッドの上に放り投げ、部屋を出た。 階段を下りてリビングに入ると、そこには兄夫婦(仮)が来ていた。 「あれ?兄貴、来てたの?」 「おお、ヒロト。久しぶり。」 「ヒロト君、こんにちは。お邪魔してます。」 声のするキッチンのほうを見るとそこには兄の婚約者であるアヤカさんが立っていた。 「あっ、いえ、こちらこそ・・・。」 ヒロトはアヤカのその言葉にうつむきがちでぼそぼそ返した。

          想いが形になる、その意味を。 -scene:3-

          想いが形になる、その意味を。 -scene:2-

          「ただいま。」 私はそう言い、リビングへと行くとそこにはすでにお父さんが待っていた。 「お帰り。あ、おや。」 「こんにちは。」 タクミはそう言うとペコリと頭を下げる。 「ようこそようこそ。」 父はそう言うと立ち上がり、キッチンへと入った。 「あ、お茶なら私が用意するからお父さんは座ってて!」 「これくらいさせなさいよ・・・。」 そう父は言いつつも、すんなりとソファーへと戻り、再び腰かけた。 「タクミ君も、座りなさい。」 「あっ、はい。ありがとうございます。」 タクミはそっと父

          想いが形になる、その意味を。 -scene:2-

          想いが形になる、その意味を。 -scene:1 ホンダシンゴの場合-

          中目黒駅を出て、新しくできた蔦屋書店を横目に見ながら、目黒川までたどり着く。 春の桜の季節になると、どこを見渡しても人で溢れかえるようなこの場所も 次第に冬に向かっていくこの秋という季節になると、人はまばらになっている。 桜の木たちもだんだんと葉を落とし始め、また咲き誇る季節を待つように冬支度を始めているようだった。 そんな目黒川を池尻方向へしばらく歩みを進める。 洗練されたアパレルショップやダイニングカフェ、少し古ぼけても絵になるマンション。 長くこの地を見てきたのだろう一

          想いが形になる、その意味を。 -scene:1 ホンダシンゴの場合-

          綺麗なバラには棘がある

          『今日20時に部屋に来て』 メールの着信音に気づいて、開くといつものメールが届いていた。 見たいようで見たくない、行きたいようで行きたくない、辞めたいようで辞めたくない。 答えは決まっているのに、それを口に出せない。 そのメールを見て、私はしばらくの間自問自答を繰り返していた。 ふと、シュンシュンと音を立てるやかんに気づき、火を止めて、インスタントコーヒーの入ったカップにお湯を注ぐ。 ふわっとコーヒーのいい香りが広がる。 いつも通りにミルクを入れて、かき混ぜながら私は給湯室を

          綺麗なバラには棘がある

          ヒトに感情は見えない。

          『吾輩は猫である。』 これは吾輩が生まれるよりもずっと前に生まれた言葉だ。 その言葉の通り、吾輩は、猫である。 今は、なぜかよくしてくれている人間がいるから、とりあえず日々生きていくことができている。 ただ、この人間は非常に人嫌いで、世間嫌いで、独りになりたがる。 猫の吾輩が言うのもなんだが、もう少し人に興味を持ったほうがいい。 独りでできることなんてたかが知れているのだから。 その日もその男はむくりと起きてきて、とりあえず、と言わんばかりにテレビをつけた。 いろんな人が

          ヒトに感情は見えない。

          君と僕とをもう一度 -sideB-

          なんでいつもこうなんだろうな・・・。 私はいつもいつも口に出して、その結果が出てから後悔してしまうことが多い。 今日だって、本当は何でもないことなのにイライラを彼にぶつけてしまった。 彼とは同棲を始めてそろそろ2年がたつ。 家事だってお互いに分担し合いながら、うまくやってきたつもりだった。 今日は、というかここ数日は仕事が急に忙しくなって、いつもの余裕がなくなっていた気がする。 休日だって、映画に行こう、なんて話をしていたのに、仕事のせいでキャンセルした。 ちょっと雲がか

          君と僕とをもう一度 -sideB-