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〜不定期連載・取材後記〜「2022October取材後記:デャンフレス・ドウグラス・シャガス・マトス

燦々と照りつけていた日差しもひと段落した頃のある日の日立台ー。

練習を終えた「ドグさん」ことドウグラス選手にインタビューを打診しました(ちなみにこの呼称、我々記者陣は「ドグさん」と呼ばせていただいておりますが、細谷真大選手らは「ドウグ」と呼んでいたりします)。

すると、ドグさんは、「今日はすぐインタビューがあるから、インタビューのあとでいい?ここにまた来ます。それでいい?」と完壁な日本語で返答してくれたのですが、当日の取材時間の関係上次週以降にリスケジュールとなりました。

そこから2週間後のまたある日の練習終わり。取材エリアで待機していると、どこからともなく、ただならぬ「フォース」を感じて、視線を移すと、早川エジソン正吉通訳を伴ったドグさんが「今日はどうですか?」とインタビューに応じてくれました。

ゆっくり話してみると、一問一問丁寧な返答が印象的でした。サーヴィオ選手もドッジ選手も、アンジェロッティも丁寧な対応をしてくれたのですが、きっとこちらの質問を聞き取れている上に、一度咀嚼してから応えてくれるドグさんの返答の1ターンは彼らを凌ぐものがありました。こちらとしては腕をまくって早川通訳からの翻訳を待つのみという恵まれたシチュエーション。

過去には「モンちゃん」ことレアンドロ・モンテーラ選手も日本語を聞き取れて、話すことができましたが、ドグさんはそれ以上のクオリティでコミュニケーションが取れたのです。

ただ、今回は念のため、メディア対応ということで、ポルトガル語で対応いただく形式となりました。

時間が許す限り、色んなことを聞かせてもらいました。このところ他媒体でのインタビューも散見しましたが、また一味違ったドグさんの魅力に迫れていたら光栄です。

さて、またしても前段が長くなりましたが、今回の「不定期連載・取材後記インタビュー」ではドウグラス選手へのインタビューをお送りいたします。
(2022年10月日立台にて収録。Special thanks: Edson Masayoshi Hayakawa -Translator-)

いつも気さくなドグさん、エジソン早川氏とパチリ

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◆ドグさん、今日はわざわざありがとうございます。お話できてうれしいです。まずは昨冬の出来事かと思いますが、柏レイソルからのオファーが舞い込んだ頃のことなど聞かせてください。

ドグさん:お待たせしたね!レイソルからのオファーか…あれはブラジルでのバカンス中のタイミングでオファーが届いてね。「このオファーは柏レイソルからのものだ」と聞いて、自分の中でレイソルは歴史あるクラブというイメージがまずあって、さらに「常に強いメンバーを揃えて、強いチームを作って、全ての大会に全力で臨む」というイメージがあった。私も日本でのプレーが長い選手、自分なりにレイソルのクラブの規模や価値、レイソルからオファーをもらうこと自体の意味を理解していたつもりさ。だから、とてもうれしかったし、レイソルと私の間でオファーの合意に至るまで、そんなに時間はかからなかったね。話は順調に進んで、トントン拍子でサインまで至ったよ。

レイソルの最前線で強烈な存在感を放つ存在

◆レイソルへ在籍した多くのブラジル人はレイソルでの居心地の良さ、快適な暮らしについて話してくれることも多いんです。日本での暮らしも長いドグさんから見ても、レイソルでの居心地は良いですか?またそうだとすれば、どのあたりが快適な理由となるのか、興味があります。

ドグさん:私もとても快適だね。レイソルというクラブはブラジル人選手と共に歩んで来た長い歴史があるクラブ。レイソルはピッチ内外でブラジル人たちとどう共生していくのかをよく知っているし、私たちのことを熟知してくれている。また、ネルシーニョ監督やディオゴフィジカルコーチがいて、メディカルにはファビアーノもいたりと、ブラジル人が多く在籍しているので、コミュニケーションの面でスムーズな環境かあるんだよ。過去には私たちブラジル人以外の国籍の選手も在籍していた歴史が証明しているように、レイソルには外国人選手を快く受け入れる文化や土壌がある。数々のクラブでプレーをしてきた私からしても、そのあたりの懐の深さには感謝しているんだよ。時にはクラブでブラジル人が私一人ということもあったからね。そこからチームに馴染んでいくという苦労を経験している分、このレイソルの文化は本当に素晴らしい文化だと思うんだ。

ドグさんの日本語は練習中でも会話するほど卓越している

◆徳島から始まった異国での長いキャリアはとても印象的です。様々なクラブで結果を出し続けるコツみたいなものがあれば聞かせてください。

ドグさん:まずは「プロフェッショナルとして、真剣に自分の仕事と向き合うこと」が大切だと思う。また、秘訣は必ずしも一つであるとは思わないし、様々な要素があるものだから、一つには絞れない。ただ、何事に於いても、「準備をする」ということはすごく大切なことで、トレーニングでも、試合でも、自分が持っている力を出し切るために、日々真剣に準備をして取り組んでいく、その積み重ねは大切なことだと思う。そして、やはり、「学ぶ」という姿勢だね。この先、年齢を重ねていくことになるけれど、サッカーでも、人生でも、「まだまだ、学ぶべきことがたくさんある」と向上心を持って、自分の置かれた環境下で、周囲の人たちの助言を聞いて成長していくことは常に念頭に置いているね。そのあたりを疎かにしていれば、今と真逆の状況が生まれてしまっていたと思うし、成功の道を歩むなんてことはできないはずだからね。

◆なるほど。今、頭の中でピンと来たことがあります。以前ドッジ選手がこのインタビューの中で「ドウグラスは私たちを導いてくれる存在だ」と話してくれました。例えば、ドッジ選手のような日本での経験を蓄える時期にある選手に対してはどのような助言をされるものなのでしょう?

ドグさん:ドッジとはよく話しているね。主にサッカーについて話す機会が多い気がするね。その中でプレーに対するアドバイスを求められる時もある。その時は自分の経験の中からできる限りのアドバイスをしているよ。今覚えているのは…例えばドッジは初めてブラジル以外の異国でプレーしている選手だから、日本のJリーグでプレーするにあたっては、「冷静に臨むこと」であったり、「目の前の目的にフォーカスすること」、「自分の仕事に集中すること」、概ねそのようなアドバイスをしたことがあるかな。幸いにもドッジは私のアドバイスを理解して、快く受け入れてくれていたと思うし、その後の自身の向上に繋げているように思う。彼がまだ若く、サッカー選手として豊かな将来性があり、クオリティや才能に恵まれている選手でもあるけど、日常の生活や雑談の中からも常に学んでいるタイプの若者だし、ピッチ内外で適応するために様々なことをピックアップして考察している。ドッジの相談はそのような姿勢の表れているんだ。

実はこの2人、「ドウグラスとドウグラス」だったりする

◆天気も不安定な中、インタビューが長くなりそうですが…

ドグさん:うん。全然大丈夫!次は?(即答&日本語ペラペラ)

◆ドグさんはブラジル人グループの最年長選手。レイソルには現在サーヴィオにドッジ、アンジェロッティが在籍していますが、ドグさんから彼らをプレゼンテーションしてもらいたいなと思うんですけど?

ドグさん:みんなを自分がプレゼンテーションするのは難しいよ。なんせまだ私はまだ彼らと過ごす1シーズン目の立場だがら、それはまたの機会にしようよ(笑)。ただ、彼らに共通して言えるのは、「とても真面目なブラジル人である」ということでいいでしょう。これはすごくいいことだからね。彼らは自分たちがやるべきことに集中している選手であるし、きっとその中で葛藤もあったはずたけど、ブラジル人独特の明るさで、目の前の景色を変えてきた選手たちだね。そこはみんな似ていて、真面目ではあるけど、明るさや喜びを周囲に発信しているブラジル人らしさはすごく持っているね。

レイソル在籍歴を尊重したあたりもドグさんらしい

◆ドグさんから見て、現在のJリーグや日本のサッカーがどのように映っているのか興味があります。日本のサッカーでどうですか?

ドグさん:すごくいいと思うね。日本のサッカーの中にいて感じるのは、「選手たちのテクニックの向上」が著しいことが挙げられる。私が初めて徳島へ来た時からテクニックが素晴らしい選手はいたし、リーグ全体にも素晴らしいテクニックを持つ選手はいた。でも、近年のJリーグで目立っているのは若年層の選手にもとても良いクオリティやテクニックが備わっている選手がいることなんだ。若くして世界レベルでも渡り合えるような選手も続々と出てきているし、Jリーグを見渡してみても、同じようなことが起きているね。日本代表を見ていれば、その傾向はさらに顕著で、欧州各国のリーグ活躍している選手が代表チームの中心になって久しい。それが素晴らしいことであるのは事実だけど、それらの事実はJリーグや日本のサッカーに於けるテクニックの向上という努力や裏付けがあってのことなんじゃないかな。きっとまだ続いていくはずだよ。

J通算100ゴールも視野に捉える「クラッキ」の1人

◆レイソルで云えば、細谷真大選手が「あの域」ヘ迫ろうとしている気配がします。コンビを組む機会も多いドグさんから見て、細谷選手に感じていることなんかはありますか?

ドグさん:マオは今、まさに「成長過程」にある選手。マオが持っているクオリティはパリ五輪代表やEー1選手権のA代表選出という実績が証明していると言っていい。レイソルに於いても貢献度がとても高い選手の1人だと思っているし、私も共にプレーしていて、まだまだ内側に秘めているであろう潜在能力も素晴らしい選手だと感じています。だけどね、どんなに素晴らしい活躍をしようとも、マオはまだ「若い選手」であることに変わりはないんだ。例え、優れた良い選手だとしても、過度な期待やプレッシャーをかけ過ぎず、マオの成長をじっくりと見守る必要があると思うし、今はまさにその時期だ。どんな素晴らしい選手にもその選手に適した「時/タイミング」というものがあって、それぞれにいずれは訪れる。マオは今はまだ「その時」ではなく、「成長過程」にあるように思っているし、まだ成長するべき余白が残されている。いずれはさらに成長して、上を目指していくことが考えられるとしても、今はしっかりと向上していくその過程を見守る時期でもある。これはマオだけではなく他の若手選手たちにも当てはまることだね。

進化するリーグの中で今も危険な存在で在り続ける

◆ありがとうございます。そうしましたら、最後の質問になります…

ドグさん:あのさ、せっかくの機会だから、自分からもう1人、レイソルの素晴らしい選手についても話してもいいかな?

◆もちろんです。誰だ誰だ、聞かせてください!

ドグさん:マオもとても頑張っているけどね、やっぱり古賀太陽さ!太陽もマオ以上にとてもタレントに恵まれた、とても将来性のある選手だと私は思っているんだよ。太陽もいずれ「その時」が来たら、再び日本代表のユニフォームを着てプレーする選手だと確信しているんだよ。太陽という選手はそう思わされる素晴らしいクオリティを持った選手だよ。

◆もちろんそうです。ドグさんのような選手からの素晴らしい評価は古賀選手うれしいでしょうね。すぐに伝えておきます(瞬く間に伝達)!

ドグさん:ね?そこで約束して欲しいんだけど…太陽に「その時」が来たら、「確かあの時、ドウグラスが太陽の将来を予言してたな!」って思い出して欲しいね、分かったかい(笑)?太陽はそのくらい素晴らしい選手なんだよ。

ご家族とのセレモニーショット

◆ドグさんは「古賀・細谷推し」とメモりました!…さて、こうやって頻繁に取材機会をいただきながら過ごすことができた今シーズンもあと2試合。ドグさんもファンサ写真など撮らせてもらってありがとうございました。残りのシーズンの展望をお聞かせください!

ドグさん:確かにそうだね。長かった今シーズンも最終盤を迎えているね。長いシーズンの中ではうれしいことも辛いこともありました。そして、どんな時も私たちにはサポーターのみなさんがついてきてくれていた。彼らが発する私たち選手やクラブへの思いやその表現には「感謝」という言葉以外は見つからない。私たちに残された福岡戦と湘南戦ではサポーターが納得して、また喜んでもらえるように日々準備をしています。まだ制限はあるかもしれないですが、サポーターのみなさんと少しでも喜びを分かち合えたら私は幸せです。

ゴール裏でたなびいていたドグさんを讃えるゲーフラ

◆ドグさん、今日はありがとうございました。

ドグさん:はい、ありがとうございます。

◆あ…ドグさんって、背も高く、顔も風貌も迫力があって凛々しいから、役者として、「スターウォーズ」や「マトリックス」や「007」シリーズに出ていたというウワサがあります。まぁ、主に私が流しているウワサなんですけど…

ドグさん:映画?映画がなんて出ていないよ(笑)!

◆えー、そうなんですか!じゃあ、あの「フォース」はいったい…見間違えかもしれないですが、ちなみに出演したい映画作品とかはありますか?

ドグさん:映画は見るけど、出てはいないよ(笑)!私はサッカー選手だからね!サッカー選手としてまた話しましょう!映画は出してくれたら、がんばります!はい、どーもっ!

今季ラスト2試合でもよろしく頼みます!

いかがでしたでしょうか?
最後は脱線してしまいましたが、話を聞きながら、今季レイソルがドグさんを迎え入れた意味がよく分かった気がしました。大人です。

May the FORCE be with you...

ドグさん、今回はありがとうございました。またこの続きをいつか!

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