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夏は車窓からやってくるもの。

タバコの煙で空気が濁る。
車内のカーステからモーニング娘。が流れて、
じわじわと鳴く蝉の声が車窓の外で響いている。
入道雲、広大な畑、線香と仏花の匂い。
12歳、夏休み、僕はまた東北に来た。

毎年、祖父の家がある東北に帰る。
僕が3歳の頃からの我が家にとっての習慣だ。
昼は欲しくも無いのに虫を捕りに行っちゃったりして
スイカを縁側で食べて、種をとばして笑った。
夜は星が大きな三角形を作っていて
花火をちょっと危ない飛ばし方して、怒られたっけ。

東京育ちの僕には、何もない田舎道路が珍しくて
車窓から海が見えたり、向日葵が見えたり。
高速道路からビル群を抜けた先にやってくる
夏の象徴が僕の目に入る。

トンネルを抜けた先は、高く澄んだ青い空。
夏を感じたのは、それを見たときだったんだ。
今の僕に、夏休みはもう無いんだけれども
青空を見ると思い出す。

あの日の夏の幸せを。


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