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品格、ユーモア、そしてエディタ

開発者向けのドメイン、「.dev」の登録受付が開始された。timakin.devはちゃんと俺が取った。みなさんも取りましょう。

で、昨日vim.devのドメインが個人によって取得され、そのリダイレクト先がEmacsのサイトになっていたことで、物議を醸した。HackerNewsにも載ってた。

この行為に対し、観測範囲では

・「やりすぎだ、同じデベロッパーとして辟易する」という人
・単に"エディター間の宗教戦争"に関するユーモアあるネタだと受け取る人

の二極化が見られた。ちなみに僕はそこまでエディタ戦争に関心はないし、結構あとあと迷惑になる行為かなーと思うので、どちらかといえば前者寄り

僕の話は置いておいて、前者はOSS開発者やカンファレンス主催者などが多い印象を持った。だから前者の意見が偉いとかそういうわけではないのだけれど、おそらく以下の2つのポイントで認識が大きくズレているから、二極化を招いているんだろう。

1. ドメインの公共性

新規公開ドメインでも、命名に使われる要素がすでに広く認知されているものは、ある種の公共財として扱われるべき、という考えがある。Vimとかはまさに。

開発者コミュニティの運営者とか、メンテナ・コントリビュータークラスの人だと、「プロダクトに興味を持った人が適切に情報にアクセスできるか」に非常に敏感になる。そのためにドメインは不可欠なツールだし、それを安易に個人が持つというのは、公共財を独占して大多数の人間に不利益を被らせることに他ならない。

そうすると、普段宗教戦争としてネタでなじりあっていても、ドメインをおさえるのはやりすぎ、となる。仮に一時的な冗談であったとしても、ドメインの移管作業は超面倒だから、そんな手間をかけてまで個人のネタに付き合うほど暇ではない、という考えだろう。なお、移管作業は面倒だけど、早めに取っておいて寄付するムーブメントだったら、カッコ良かった

2. エディターというプロダクトへの敬意

1つ目のポイントが認識の違いを産む大半の要因だと思うが、エディターというプロダクトへの敬意の念も、多少なりとも今回の見解の二極化に影響している。

なお、VimとEmacsの宗教戦争は長々と続いているけど、ぶっちゃけそこまで関心がない!僕はVim好きだけどEmacsはそんなに批判する気が起きない(なぜならそんなに深く使ってないから)。たまにSlackのリアクションのアイコンが逆に設定されてたりすると、「やっとんなー」くらいに思う。

が、ドメインを取ってまで揶揄するほどじゃないな、とは思う。VimもEmacsも使われてる時間の長さを考えれば、両方偉大なプロダクトだし、敬意を持ってれば流石にドメインはやりすぎだよな〜、となる。雪合戦してたら急に石投げてくるやつがいた、くらいやりすぎ度合いである

今回明らかに怒っている人は、「宗教戦争の延長で切れてた」わけではなく、「敬意があればやらないだろ。一利用者のデベロッパーとして恥ずかしくないのか」という想いを持ってる人だったように思う。

まとめ

個人がユーモアを意図してやったとしても、ドメインのような公共性の高い資産を使うのはよくなかった。その影響度を考えれば多くの人に不利益を産む可能性だってある。

そういった一線を超えるかどうかを決めるのは、プロダクトへの敬意をどれだけ持てるかという、個々人のデベロッパーとしての品格だと思う。


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