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物語の生まれるきっかけってなんだろう

小川洋子さんの『不時着する流星たち』。

最近読んだ本のなかでもなかなかに衝撃的な作品だった。するすると全てを楽しく読めたわけじゃない。なのに、毎話毎話のおしまいがびっくりすることだらけなのだ。

全10編からなる短編集。小川洋子ならではのちょっと不思議な、奇妙な、静かな世界が広がっている。

例えば、第一話の『誘拐の女王』は、ある少女のもとに、義父の連れ子にあたる年の離れた姉がやってくる物語。この姉は秘密めいた裁縫箱をいつも抱えていて、その秘密を聞くようになった少女はどんどん姉の話に引きずリこまれてゆく。

少女と同じようにぐうううと物語に引っ張り込まれて、終わりとともにぽんっと離されてしまう。

ああ終わってしまった、とさみしくなりながらもページを繰るとそこに書いてあるのは先ほど読んでいた物語に由縁のありそうな人物と来歴だ。

しかもなんだか実在していそうな。

いくつか読んでやっとわかったのは、小川洋子さんはこの実在する人物や事柄からインスパイアされて短編を書いたのだということ。

そこからは読みながらも、一体どれが実在している部分なんだろうと、新しい楽しみが生まれてくる。

とはいえ、これかなあれかなと考えながら読んでも意表をつかれるばかりで全然当たらない。「事実は小説より奇なり」という言葉はなるほどなあとつくづく思い知らされる。

それでも、小川洋子さんがその事実にインスパイアされて書いたこともまた事実なわけで。もし、もしも自分だったらこんな風に書けるのだろうかとふと考え込んでしまった。物語が生まれるきっかけってなんなのだろう。

どこからが小説で、どこからが事実で…。なんだかいる場所全てが迷宮のような気がしてくるような小説でした。

ちなみにブックデザインが好みすぎて、装画を担当したMARUUさんを調べてみた。

この本で使われたイラストが載っているのでぜひ見てみてほしいのです。


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