冬の、ある朝のはなし
「さむいかもしれない」
冬が来てもう随分と経つのに毎日、朝にびっくりしながら起きる。寝ているときはお布団に包まれてぬくぬくとしているのに、目覚めた瞬間寒く感じるなんて不思議だ。
眠気と寒さにもぞもぞと抵抗したあと、トイレに立ち、山盛りになった洗濯物が気になってついでに洗濯機を回す。
洗濯物を畳む行為は数ある家事の中で一番嫌いなのだけど、洗濯機が回る音を聞くのは一番好き。
ごうんごうんと頼り甲斐のある音を聞きながら、コップに水を入れて一口飲んで、もう少しだけとお布団に潜った。
そのままゆるゆるとしているといつのまにか二度寝していたらしい。出来上がりを知らせるピーという音でもう一度目が覚めて、お布団から抜け出して洗濯物を干す。
濡れた服をさわって冷たくなった手がいや。こんなに早く起きてしまってどうしようかなと、何の気なしにテレビをつけようとして、そのまま気まぐれに湯船にお湯を張ることにした。
いまいるおうちはお風呂に窓がついているところがすき。朝に入ると電気をつけなくていいからお得だし、なんとなくちょっとだけ露天風呂みたいな気持ちになれる。窓は天井の近くにあるから外が見えるわけじゃないけど。
お風呂に入ることはめんどくさいなと思うときのほうが多くて、ついついシャワーで済ませてしまいがちなのに、お湯に浸かったどっと溢れる声と、だんだんゆるくなる身体と、ほっとする気持ちにいつも感動してしまう。こんなに幸せなのに、どうしてずっとおざなりでいられたの。
そのままぐずぐずとお湯に浸かってぼんやりしたり、歌ってみたり、ふと考えごとをしているうちに、ああちょっと最近疲れちゃってたかもと気が付いたりする。
からっぽでいられる場所はもうお風呂にしかないのかもなあなんて少しだけ達観して、でもそれはちょっとさみしすぎるなあと憂いたあたりで湯船から出る。
濡れた身体をタオルで拭いて、乾燥対策に化粧水とクリームを全身に塗ったら、ありのままのわたしはもうおしまい。
お布団をたたんで朝ごはんの準備をする。
早起きしちゃったと思っていたけど、もう朝ごはんの時間はとうに過ぎていた。午後は何をしようかな。もう少しだけ、ゆっくり過ごしたいお休みの日。
もっともっと新しい世界を知るために本を買いたいなあと思ってます。