私はみずほ信託銀行にいた時、ストレスによって業務ミスがすごく、自分になんらかの知的・精神的障害があるんじゃないかと思っていた。

普通の人が出来ることが出来ない、
今まで出来ていたことがどんどん出来なくなっていく、
喉が詰まったようになって息が吸えない。

歯軋りも止まらなくて、一度歯医者に行ったら「姿勢直したら？」と一蹴されなにもしてもらえなかったこともあった。

課長に迷惑をかけた次の日にお詫びの少し良いチョコを買って行ったら、「受け取れない」と突き返された。

お客様に電話が繋がらないと、一人で21時過ぎまで残らされた。(出社は8時)

課長はいろんな人の悪口を言っている人で、ずっとイライラしていてずっと眉毛が上がっている人だった。
肌は浅黒く、首には何本もの筋が入っていて、猫背でクマが酷く、人のミスを指摘する時だけ目を爛々と光らせて口元を歪めた、笑顔のような顔をした。

他の人が同じことをしても許される。私だけが許されない。お酒を飲めばずっと泣いていた。私には抱えきれない理不尽だった。

辞めた後、同期には「ちなつ虐められてたよね」と言われた。

食堂に居る時間を少しでも減らしたくて、ご飯を盛らないで急いでたべていたら両手にフォークとスプーンを持っていることもあった。

初めて、歌をやめようと思った。

姿勢は悪くなる一方だし、毎晩の歯軋りで首と肩の凝りは最悪、声なんて出なかった。
良い声の出せない声楽のレッスンなんてストレスが溜まるだけだった。

毎朝目を覚ます意味がわからなかった。なんで今日も起きなきゃいけないんだろう。消えたい。居なくなりたい。支店に隕石が落ちないかな。爆発しないかな。空間が切り取られないかな。殺したい、全員殺したい、居なくなってほしい、幸せになってほしい。幸せになって私を苛めることから興味を無くしてほしい。夢中になれることを見つけてほしい、それがあるだけで笑顔になれるものを見つけてほしい。

推しでもパチンコでもソシャゲでもジャニーズでもヤクでも彼氏でもなんでも良い、人を苛めるより楽しいことを見つけてほしい。お願いだから幸せになってほしい。幸せになる努力をして欲しい。

人の価値を下げようとしても、人の価値が下がらないことに気付いて欲しい。自分で自分の価値を上げることしか方法は無いことに気付いて欲しい。毎日もっと楽しそうな笑顔でいて欲しい。負のオーラに絡め取られないで欲しい。明るく生きて欲しい。

こんなにあなたの幸せを願っている人、この世の中に私しかいないんじゃないかな？

そんなありがたい私が、残念なことにみずほ信託銀行を辞めることになった当日。
応対・接遇マナーの抜き打ち調査で、私の支店が、地域で1位になった。

抜き打ち調査をされた時の担当者は私だった。

浅黒い顔色の課長はいつも通り浅黒い雰囲気の朝礼を行い、浅黒い声で抜き打ち調査の結果を発表した。
そして浅黒いまま、
「有終の美ですね。」
と私の目を見て顔の下半身を歪ませた。

目はやはり爛々と輝いていて、今でも記憶の端っこにこびりついている。気持ち悪かった。

やめてから3年経ったけれど、辞めたことを後悔した瞬間が一度も無い。

原宿のアパレルに入ってから感じた銀行のメリットとしては、
・やはり銀行の新人教育はすごいということ
・やはり銀行に入れる人はある程度の基礎知識があるということ
・やはり銀行はちゃんと給料が上がっていくシステムが整っているということ
くらいでしょうか。

逆に、

・基本的にお客さんを速く捌いてなんぼなので、常に焦っていて必死なこと
・ミスが無くて当たり前の減点方式なので、雰囲気が暗くなりがちなこと
・窓があると情報漏洩の可能性が高くなってしまうので、従業員が座るところには窓があまり無いこと
・保守的な方が多いので、ジャニーズか野球かドラマの話題に落ち着きやすいこと
・「一緒に行動する」ことが良しとされること
・インテリアが基本灰色でテン下げ
・BGMが無いし、イヤホンで音楽聴くことも出来ない
・制服から着替える私服も制服みたいな服なこと
・みずほ内部の特別なシステムについて詳しくなる=仕事のレベルが上達する　という式なので、転職した後の知識の汎用性が少ないこと
・保守的な企業なので、IT分野が旧時代的なこと
・保守的な企業なので、出世している女性写真がヒステリック猛者のような方しか居ないこと
・既にfacebookなどのITに強い企業が金融に参戦してくる準備をしており、今でも投資信託などの手数料でなんとか持っているのに、手数料無料の投資信託のアプリなどが出来てしまったらどうするんだろう…という先行きが不安なこと
…
などなどデメリットは揚げるとキリが無いので普通に考えて辞めて良かったな、とは本当に心から思っている。

人生で一回行ったらネタになったし、転職する先には信用も高いからまぁ良いか、とは思ってるけど。

あの浅黒い顔は忘れられない。