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家庭料理に対するこだわり

初めまして。荒井智子です。
私は、永田町で、家庭料理カフェ&ケータリングを提供する『tiny peace kitchen』を運営しています。

tiny peace kitchenのこだわりは何ですか?と問われたら、やはり家庭料理を作り続けることです、というのが答えです。
お店を続けていると「家庭料理」という言葉のイメージは、人によって大きく異なることがわかってきましたので、家庭料理に込めている思いを、少し書いてみたいと思います。

私の母は、料理が得意な人でした。ほとんどの期間を専業主婦として過ごしたので、毎日母のご飯が食卓いっぱいに並ぶのが当たり前の家庭で育ちました。私にとって、世界一安心するのが、そんな食卓を囲んでいる時間でした。だから、tiny peace kitchenを始めるときに、そんな食卓が再現したい!という明確なイメージがありました。

でも、中には「お母さんが料理をしない人だったので、家庭料理と言われてもイメージがわかない・・・」というメンバーもいました。

とてもハッとさせられたのを覚えています。そのメンバーとも、作り上げたいものは共鳴しあっていて同じチームにいるのに、キーワードである家庭料理という言葉がしっくりこないというのです。

そこから、メンバーと議論を重ね、tiny peace kitchenでは、家庭料理を「相手の心身の健康を願って作られる料理」と定義するようになりました。

具体的には、メニューを組んだり、食材を仕入れたりする時に、以下のポイントをtiny peace kitchenの家庭料理のスタンダードとして考えています。

・毎日でも食べたいもの(味が濃すぎない、油っぽすぎない、重すぎない、豪華すぎない)
・食べた後に、体が重くならないもの
・大切な人に食べさせたいもの、自分が食べたいもの
・毎日来れるようにメニューは日替わりで用意すること
・出来るだけ旬の食材を取り入れること
・化学調味料、保存料、白砂糖は使わないこと
・食材は可能な限り地産地消(肉魚は国産、野菜は関東野菜中心)であること
・バランスを考えてメニューを組み立てること(焼き物、揚げ物、和え物などの調理方法のバランスと、しょぱい、甘い、酸っぱい、などの味のバランス)
・野菜は自分たちの手で切ること(カット野菜を使わない)

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私は新卒入社してから4年間「営業職」で働いていました。その頃は、料理をする余裕がないことが多くて、外食や中食に頼っていました。
だけど、どうもそれらに頼り続けていると体が重くなるというか、だるくなるというか・・・味が濃すぎたり、油っぽすぎたり。一つひとつは美味しんだけど、毎日の自分の体を作るご飯としては、ちょっとバランスが悪いな〜とか、なんだか食べることに不安を抱えていました。

だから、tiny peace kitchenでは、自分でご飯を作る余裕がない人が、お母さんがご飯を作ってくれていた日常を思い出せるような体験をして欲しいと思っています。つまり、私たちの競合はお母さんです。笑 

時折、「素人料理」と批判されることもあるのですが、主婦であった私が「自分が自分と家族の心身の健康を願って作るようなご飯を気軽に外でも食べることができるようにしたい」と願って作ったものなので、仕方ないですね。笑

でも、家で作るようなご飯を何百食と仕込むのは、もちろん素人ではできないことです。なので私たちは、家庭料理のプロでありたいと思っています。ちょっと矛盾するような言い方ですが。

そのために大切にしていることは、こんなことです。

・シェフ感覚じゃなくて、主婦感覚で作ること
・ビジネス基準じゃなくて、家基準で考えること

子供が毎日ハンバーグを食べたがっていたとしても、バランスを考えて週に何回かはお魚を出したり、お肉ばっかりじゃなくて、野菜もあの手この手で食べさせようとしたり、お母さんは家族の健康を思って、色々と工夫していますよね。私たちもお客様の顔を思い浮かべながら、母のような気持ちでお店を運営しています。

「唐揚げの日って本当に売上いいよね〜」「焼き魚の日ってどうしても売上落ちるよね〜」「でも魚をメニューから外すことはしたくないよね〜」なんて会話が繰り広げられています。

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こんなことを自分たちの軸にしながら、もっとこうしたらいいんじゃないかとメンバーと議論を重ね、進化を続ける毎日です。正直いうと、これらのこだわりが、ちゃんとお客様が享受できる・認識できる価値に転換されないと、ビジネスとしては厳しいなと思っています。まだまだ反省する点ばかりです。

例えば、カット野菜。カット野菜を使おうが、自分たちで芋の土を落とすところからやろうが、お客さんには伝わらない場合も多いと思います。経済合理性だけを考えたら、カット野菜を仕入れて、人件費を減らした方が正解だと思います。冷蔵庫に下ごしらえした野菜たちをしまうためにパズルのようにやりくりする必要も無くなります。かぼちゃが切れない!と女子たちが奮闘して腕を痛めることも無くなります。野菜の仕入れ管理もしやすくなります。

それでもtiny peace kitchenでは、カット野菜を使わず自分たちで下ごしらえをします。

私たちも一度だけ、カット野菜を仕入れてみたことがあります。だけど、その一度以降カット野菜を仕入れることはありませんでした。。なんだか違和感を感じてしまったのです。「自分が食べたくないな」って思ってしまったのです。それはもう、使い続けることはできないのです。私たちの軸が歪んでしまう。信頼出きる業者さんに、薬剤についてもご説明いただき、納得した上で使ってみたのですが、それでもやっぱり拭うことのできない違和感があった。だから私たちは、現時点では、カット野菜を使う選択肢を手放すことにしました。

これは作り手にとっても、実はとても大切なことなんです。栄養士として働いていたメンバーが、「食を通して人々の健康をサポートするために栄養士になったのに、カット野菜と冷凍食品を組み合わせて、コスト重視で食事を機械的に用意する現実に疲れてしまった。そんなとき、食べる人のことを第一に考えるtiny peace kitchenにたどり着いた。」と言っていました。また、他のメンバーも「自分が提供したくないものを提供しなくていいことが、tiny peace kitchenで働いている一番の良さだ。」と言ってくれていました。納得感があるものを、作り続けること。お客様にとっても、メンバーにとっても大事であると信じています。

私たちは完全オープンキッチンで、仕込んでいる様子や、使っている食材も丸見えなので、伝わっている方には、伝わっています。でも、そんなに食べ物に関心がある方ばかりではありません。そんな方々にも、なぜ私たちが500円ではなく、1000円のランチを提供しているか、どんな形であれば伝えていくことができるのだろうかと、いつも頭を悩ませています。

でも、これだけは胸を張って言える。
私たちは、大切な家族に食べさせたいものしか提供しない。ここだけは絶対に揺るぎません。外食が続くと体が重く感じられるとか、なんだか罪悪感が生まれちゃうという方、ぜひtiny peace kitchenにご飯を食べに来てください。

私たちのご飯は素朴だし、地味かもしれません。でも、忙しいあなたの毎日に寄り添うご飯です。更に美味しく、お客樣に喜んでいただける料理に進化させながら、自分たちの軸だけはぶらさず、「お客様の心身の健康を願って作る料理」を用意してお待ちしています。

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