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北陸新幹線延伸とその課題。

 今年3月16日に、北陸新幹線が敦賀まで延伸したので、見に行ってきました。
 私の住んでいる京都から敦賀までは、特急サンダーバードで行くことができます。もともとこのサンダーバードは大阪から富山まで行っていたのですが、北陸新幹線の開業に伴い金沢までに短縮され、さらに今回北陸新幹線の延伸に伴い、敦賀までに短縮されました。大阪から敦賀までは1時間半程度ですが、同じ区間を新快速が走っています。新快速は兵庫県西部(播州赤穂とか網干とか姫路とか)が出発点なので、特急料金を払いたくない人や、大阪で乗り換えたくない兵庫県民はこれに乗るという選択肢もあります。当然時間は余計にかかりますが。
 サンダーバードや、名古屋方面からきた「しらさぎ」は、今回新設された33・34番ホームに到着します。このホームは、新幹線ホームの真下の1階に到着します。ここから、エスカレーターやエレベーターを使って2階に上がり、乗り換え口の改札を通って、3階の新幹線ホームに行くことで乗り換えができます。この乗り継ぎ時間は8分程度で設定されていますが、高齢者や荷物の多い人はその時間で乗り換えが完了できるのかという点については、以前から指摘も上がっているところです。

 本当は九州新幹線の武雄温泉駅のように、真横のホームで乗り換えるというのが理想なんでしょうけど、色々考えてそれはできないということになったのでしょう。九州新幹線には「乗り換え改札」というものも存在しないですし。まだ、新幹線のホームの真下にサンダーバード・しらさぎ専用のホームを作っただけましです。従来の敦賀駅のホームは、今回できた新しい新幹線ホームからかなり離れています。どれぐらい離れているかというと、途中に動く歩道を2本はさむぐらい離れています。そこから乗り換えろというのはあまりにも傲慢です。強いて言うなら、この従来の敦賀駅のホームの上にサンダーバード・しらさぎ専用のホームを作るべきだったと思います。距離はあるといっても、垂直移動よりも水平移動の方が楽な気がするのですが。エスカレーターやエレベーターでお客さんも逗留しないですし。
 今回、北陸新幹線が延伸したことにより、従来の北陸本線は「ハピラインふくい」として分離され、第3セクターとなりましたが、そもそも、新しく新幹線ができると、並行在来線を第3セクターにしなければいけないというルールそのものが間違っています。第3セクターになることによって、地域が分断されるので、あまりいいことだとは思いません。佐賀県が九州新幹線の延伸をストップさせているのもこれが原因です。特に北陸の場合は、もともと関東からの需要より関西からの需要の方が多かったわけで。しかも同じJR西日本の管内なので、社内調整にも障害がなかったはずなのに、なぜこんなことになってしまったのかという気持ちは否めません。それに、JRの特急が第3セクターの線路を走ってはいけないというルールはありません。現に同じJR西日本の管内で、智頭急行という前例があります。京都・大阪から鳥取を結ぶ「スーパーはくと」や、岡山と鳥取を結ぶ「スーパーいなば」が智頭急行の路線を通っています。そのおかげで智頭急行は第3セクターの中で収益性がトップなんだそうです。(そのかわり、智頭急行は収益の98%が定期外収入なんだそうです)
 どうしても敦賀でぶつ切りにしたいのであれば、関連会社のJR西日本バスによって、高速バスを走らせるべきです。名古屋から福井や金沢・富山には、名鉄バスなどの高速バスが充実しているので、敦賀でぶつ切りにされてもあまり影響はないと思われます。時間はかかりますが、北陸まで1本で行けるし、新幹線よりも安いし、高速バスだと時々サービスエリアに立ち寄るので、需要はあります。なのに関西から北陸方面への高速バスはほとんどありません。今まではサンダーバードがあったからよかったけど、これからはないわけで。関西から北陸まで1本で行ける需要というのは確かにあるはずです。
 さて、今回敦賀まで新幹線が完成したことで、次にどこまでこの新幹線を伸ばすかという点に注目が集まっています。敦賀から若狭湾沿いに小浜まで行って、そこから一気に京都まで南下するという案もあるそうですが、あまりに荒唐無稽すぎて話になりません。需要もない上に、京都市内を縦断するルートになるわけで、景観としても台無しだし、何かが出土すればその時点で工事はストップです。まずありえません。次に今の湖西線のルートに作るという案もあります。とすると確実に今の湖西線は第3セクターにさせられるでしょう。それを滋賀県が受け入れるかという話です。これも可能性としては低いと思います。最後に、敦賀から米原をつなぐルートがあります。これはこれでややこしい問題があります。
 ご存じの方も多いかもしれませんが、東海道新幹線は東京から新大阪まではJR東海の管轄です。一方の在来線は、米原から東はJR東海ですが、米原から西はJR西日本です。つまり、新幹線の米原駅に接続するには、JR東海にお伺いを立てないといけません。それに、米原駅にはのぞみは止まりません。ひかりも一部しか止まりません。米原乗り換えが実現したところで、のぞみに乗り換えられないのであれば、効果は減少します。それに、敦賀をでて滋賀県に入るところには急勾配があり、在来線の線路をひくときに苦労したことが、敦賀の手前にループ線があることからも分かります。そこをまた新たに工事しないといけないということで、これはこれで大変です。
 また、敦賀の街自体、明治時代には東京からロシアを経由してヨーロッパまで行くルートの経由地点だった歴史がありました。東京から(当時は米原を経由して)敦賀に至り、ここからロシアのウラジオストクまで船で行って、そこからシベリアを経由してヨーロッパ各地へ向かうルートです。これでも2週間以上かかりましたが、船の場合は1カ月半かかっていたので、まだ早く着ける方だということで、利用者はそれなりにいたそうです。敦賀から先に延伸すると、敦賀が経由地ではなく通過地になるわけで、敦賀の人的にそれはどうなんだろうという気がしないでもないです。
 これらの問題を収めるためには、敦賀より先の延伸を諦めたうえで、1日数本でいいからサンダーバードを金沢まで(というかついでに和倉温泉まで)運転することと、「しらさぎ」をすべて名古屋まで運転させること。それしかないと思います。特急が敦賀から米原までのわずか30分程度の運転だと、特急料金を支払うのがばかばかしいですし、岐阜市方面から北陸へのアクセスも良くなります。関東方面へも、名古屋で乗り換えた方が利便性は高いです。あと、敦賀駅での乗り換え時間にはもうちょっと余裕を持たせた方がいいです。JR西日本は北陸新幹線が開業したからといって安心せずに、これらの対策を着実に実行していくことが求められます。
 まぁどうしても延伸したいのであれば、小浜~舞鶴~城崎温泉~鳥取~米子~松江~浜田(付近)~萩~山口(旧小郡ではなく)~下関までつなげれば、JR西日本の本気がみえていいと思います。そうなったらもはや「北陸」新幹線ではないけど。


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