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ご紹介 ・ 詩 「生命は」 / 吉野 弘さん




生命は(いのちは)


自分自身だけでは完結できないように作られているらしい

花も  めしべとおしべが揃っているだけでは不充分で  
虫や風が訪れて  めしべとおしべを仲立ちする

生命は  その中に欠如を抱き  それを他者から満たしてもらうのだ


世界は多分  他者の総和

しかし互いに  欠如を満たすなどとは知りもせず  
知らされもせず


ばらまかれている者同士  無関心でいられる間柄


ときに  うとましく思うことさえも許されている間柄


そのように  世界がゆるやかに構成されているのはなぜ?

花が咲いている  すぐ近くまで  虻の姿をした他者が   光をまとって飛んできている


私もあるとき  誰かのための虻だったろう


あなたもあるとき  私のための風だったかもしれない




しばらく前に偶然見た映画の中で出会いました。とても好きな詩です。
ご紹介でした📖
お読み頂き、ありがとうございました。






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