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戦場のガールズ・

この前、友人と雨宮まみの話をした。死んだからだ。私は、4年程前にある紹介記事で(呟きだったか、ブックレビューだったか、ブログだったか忘れてしまったが)雨宮まみの著作『女子をこじらせて』を知って、読んでいた。その後、最近の本やWEB連載などは読んでいなかったのだが、訃報を聞き、やはり思うところがあって、いろいろ彼女に関する記事を読んでいた。この友人と雨宮まみの話はしたことはなかったが、彼女は雨宮まみがAVライターをしている頃から知っていたらしく、お互いに短い間そのことについて、とりとめなく話した。

昨日、子供のために本を買いに本屋によった時、『女子をこじらせて』の文庫版が目に止まった。この本は家にあるはずだけれども、どこにいったかわからないし、久しぶりに読んでみるかと、絵本と共に購入。先ほど、ひとつの仕事が終わって、次の仕事に入る前に一休憩と思い、パラパラ読んでいた。

自分だけを自爆させるのは嫌なので、友人を巻き添えにして爆発させるが、私の周りにいる女性(特に大学時代に友人になった人たち)の多くは「こじらせ女子」だ。自分の女性性や社会から向けられる女性への視線を素直に飲み込んで、うまく生きている人は少ない。むしろ、抗いたいと思っているが、うまくいかないという人ばかりだ。(こうやって、友人を巻き添えにしないと書けないほど、痛い…色々心身が痛む問題なのだ。)世代的にも、「これを読んで共感するところがない女子はいるの?」と思ってしまうほど共鳴するところがある。

そんなことを思ってたな〜と思い出しながら、パラパラ読んだ。終盤に、久保ミツロウとの対談が載っているのだが、そこにある永六輔の「全国こども電話相談室」のエピソードは本当に笑える。「好きな人に告白する言葉を教えて」という子供の質問に、永六輔は「『あなたが好きです』という言葉は最悪な言葉です」と答え、

好きな人に「この子好きだな」と思われるには、「おなべをいっしょに食べて同じものをおいしいと思う」「夕やけを見て、両方が美しいなと思う」っていう、「きれいだな、おいしいな、うれしいな」ということが同時に感じあえる環境がいちばん大事だ

って言っていたらしく、それを聞いて久保ミツロウが「年度末決算みたいに告白して、ダメだったら撤収っていうやり方はもうやめようと思った」というところは何度見ても笑える。また、その後の「永六輔とか海原雄山とかから恋愛哲学を学ぼうとするところが間違ってるよね!」「じじいばっかりじゃん!しかも一人は架空の人物!」っていう掛け合いにいたる過程も最高。そうなんだよな〜、最近恋愛で悩んでいる友人に別の友人が言ってたけど、気が合う人とはご飯食べてたら美味しいし、気が合わない人とはご飯がおいしくないし、恋愛って身体で感じるものなんだよな〜と。そんで、こじらせている人って、ここでも書かれているけれど、「考えるな、身体で感じろ」が下手なんだよな〜って、やっぱり永六輔先生すげーなと思ったりしながら読んでいた。

そんなことで笑っていたのも束の間、文庫本で新しく挿入された上野千鶴子の解説にたどり着く。私はこれを読むのは初めてだった。そして、それを読んで、さっきまで笑っていたのに、泣きたくなり、怖くなった。上野千鶴子はいう、この本は「こじらせ女子の当事者研究」だと。まさしく。私は、最初にこの本を読んだ時、思ったのだ、木嶋佳苗だと、木嶋佳苗と同じだと。そのことは、なんとなく怖くて誰にも言わなかったのだけれど、上野先生がきちんと書いていた。やっぱりそうなのかと思うと、とても怖かった。ここらへんはあえてさらっと書く。そして、「性と愛とが分離可能であること、そのふたつが別なものであることを、この世代は早くから学んでしまった。(中略)性と愛が分離した状況へ、性とは何か、愛とは何かを知らないうちに押し出されるのも問題だろう。セックスのハードルが下がったために、かえって無防備なまま性欲の市場にさらされる若い女が増えたようにみえる。愛より前に性を知ってしまうこと、それもひたすら男によってつごうのよいセックスをAVを通じて学んでしまうこと…が、この世代の女にとっても、男にとっても、深刻な問題かもしれない。」に唸った。なるほど…。確かに、私は「欲望とは何か」を実際の人から学んだのだろうか。いや、その前にメディアなのだ。メディアを通じて、それを知った気になっていたのだ。つまり、私はまだ私の欲望が、相手の欲望が何かを知らないのだ。

雨宮まみが、最近書いていた大和書房のWEB連載「40歳がくる!」を読んだ、その後気になって。2016年5月から始まったもので、11月に書かれていたものもある。面白かった、と同時に読んでいて辛くなった。辛い。でも、その文章は私にとってキラキラしていた。私はこういう文章がやっぱり好きなのだ、魅かれてしまうのだ。紫原明子も好きなんだけれど、雨宮まみの文章が好きだ。そして、「12. 40歳で人生は始まる!」を読んで、いろんな思いがこみあげる。私の中にある相反するいろんな気持ちをどうしていくのか…うまく整理がつかなすぎて、書いてしまった。

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