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Facebook社に対する発信者情報開示請求

先日Facebookに対する発信者情報開示請求を行いました。まだまだ参考文献等も少ないところでもありますし,独特のルールを知らないと何度も手間をかけることになりますので,自分の備忘のためも兼ねて記事としておきます。

1 事前準備

まず,日本からFacebookについての発信者情報開示請求を行う場合は,Facebookアイルランド法人(Facebook Ireland Limited)を対象とする必要があります。

会社情報:本ウェブサイト(www.facebook.com)およびそのページ上のサービスは、Facebook Ireland Ltd. (Hanover Reach, 5-7 Hanover Quay, Dublin 2 Ireland)によって、米国およびカナダ国外の利用者に提供されています。Facebook Ireland Ltd.は、非公開有限責任会社としてアイルランドで設立、登録されています。会社番号は462932 で、利用者の個人情報を担当するデータ管理者です。
取締役:Sonia Flynn (アイルランド人)、Shane Crehan (アイルランド人)。

(https://www.facebook.com/about/privacy/other)

アイルランド法人のFacebookを債務者とするにあたっては,資格証明を手に入れる必要があります。

資格証明は,アイルランドの Companies Registration Office(https://www.cro.ie/)からウェブ経由で申込みをすることができます。

「Company Search」のところから,Facebook Ireland Limited の社名を入れて検索するか,Company Number (Facebook Ireland Limited は462932)を入れて検索すると,PDFで情報が取得できますが,裁判所からはサインや捺印が入った証明書を求められます。

これは,トップページの「Get a Duplicate Certificate」から申込みを行います。この申込みを行うには,アカウントを解説する必要があり,アカウントにクレジットカードからあらかじめデポジットをしておき,そこから発行費用が引き落とされるという仕組みになっています。クレジットカードは,Vpassなどの二段階認証がないと弾かれるようですので,うまくデポジットできない場合は,いくつかのカードで試してみるとよいでしょう。今のところ,12ユーロが手数料として必要なようですので,申請の都度12ユーロをデポジットすればよいでしょう。

私が確認したところ,申請は電子メール(postalenquiries@djei.ie)で行うようで,私は以下のようなメールを送信しました。英文としての正確性は保証できませんが,こちらの意図は伝わったようで,すぐに証明書を発送した旨の通知が来ました。

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Dear Sir/Madam

Good day.

I am writing to request the dispatch of a duplicate certificate with
original signature(s) for the company Facebook Ireland Limited (company number - 462932).

My CRO customer number is XXXX. I have already credited my CRO account with 12 euros for the certificate and authorise you to deduct this from my account. Please send the certificate to the following address (my name, title and other contact details are also included) in Japan:

XXXX XXXX (Attorney-at-Law)

XXXX Law Offices
XXX, XXX, XXX XXX-XXXX, Japan
Tel: XXX   Fax: XXX
Email: XXX    URL: XXX

Prior to making the aforesaid deduction for the certificate, I would 
appreciate it if you could let me know the cost of sending the requested
certificate to Japan? I will then top-up my account with the relevant
funds, which I hereby authorise you to deduct.

It is very important that I receive the certificate as soon as possible,
therefore, I would be grateful for you to dispatch this once you have
deducted the relevant funds - preferably in the first half of this week
- and send me an email to confirm the dispatch.

I look forward to hearing from you very soon about this.

Yours faithfully

XXXX XXXX (Attorney-at-Law)

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私の場合は申請から7-10日程度で証明書が届きました。送料についても確認しましたが,12ユーロで発送までやってくれるようです。


2 申立書の書き方等

申立書の書き方については,鬼澤友直/目黒大輔「発信者情報の開示を命じる仮処分の可否」(判例タイムズ No.1164),東京地方裁判所プラクティス委員会第一小委員会「名誉毀損訴訟解説・発信者情報開示請求訴訟解説」(判例タイムズ No.1360), 野村昌也「東京地方裁判所民事第9部におけるインターネット関係仮処分の処理の実情」(判例タイムズNo.1395)などが参考になるでしょう。

保全の必要性については,鬼澤友直/目黒大輔「発信者情報の開示を命じる仮処分の可否」(判例タイムズ No.1164)の申立書例においては,経由プロパイダのアクセスログについて,その保存期間が3~6か月であることを弁護士会照会によって疎明していますが,今となってはそのような記載がある各種文献を提示すれば十分でしょう。

悩ましいのが目録の記載方法ですが,Facebookにおいては,誰かのページのトピックにコメントする形で書き込んだ場合でも,当該書き込みは書き込んだ人物のアカウントに紐付いているとのことで,開示対象となるのは当該書き込みを行ったアカウントにかかるURLになります。また,個別の書き込みにかかるログは取られていないとのことですので,開示対象となるのは,ログイン・ログアウト時点のIPアドレス等になります。

また,以上の申立書,目録,疎明資料等については,英訳したものを事前に用意する必要があります。

なお,疎明資料については,開示対象となるURLのWhois情報を裁判所から求められますので,あらかじめ準備・提出しておくとよいでしょう。

また,該当する書き込みなどについては,申立てまでに削除されてしまう可能性が高いので,あらかじめスクリーンショットなどで保存しておく必要があります。コメントや記事については,「もっと見る」を押して,全文が確認できるようにしておきましょう。

さらに,Facebookにおいては個別の書き込みにかかるログが特定できないため,後に行う発信者情報開示請求の本訴において,個別の書き込みとFacebookから開示されたIPアドレスの関連性について釈明される可能性があります。問題となる記事は投稿後速やかに削除されてしまう場合も多いですが,必ず問題となった投稿がいつ行われたものか,特定できるタイムスタンプを表示させた上で,スクリーンショットを撮影するようにしてください。Facebookにおいては「●時間前」といった形で投稿時間が表示されていますが,マウスオーバーすることで,正確な時間がポップアップするようになっています。仮に問題となっている書き込みが削除されてしまった場合でも,前後の書き込みのタイムスタンプを確認するなどして,可能な限り投稿時間を特定できるようにしておくことが望ましいでしょう。


3 進行について

裁判官との面接が行われると,その場で内容が確認されるのは通常通りですが,審尋期日の日程が決められ(2-3週間後に設定されます),債務者であるアイルランド法人に対して呼出状の送付が行われます。

この呼出状を英訳したもの(裁判所で英訳したものをくれればいいのに,と思いましたが・・・)と,日本語版の申立書等,英語版の申立書等を,債権者からアイルランド法人に対して送付します。アイルランド法人に対してはEMSで送付します。

これらがアイルランド法人に到達したのち,日本国内の代理人から裁判所に対して連絡があります。多くは期日の再調整が必要になるでしょう。

審尋期日では発信者情報目録の記載方法等についての要望がされる場合もありますが,基本的にはそれに従った上で目録を修正すればよいでしょう。

ここまで来てようやく担保決定,発令となります。

なお,担保については,発信者情報開示のみの場合は10万円程度とされることが多いようです。






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