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MXR M80 bass d.i.+の修理

プリアンプ、DI、ディストーションと多機能の定番ですね。雑誌やSNSの写真でも結構な割合で使用されているのを見かけます。こちらのペダルは「スイッチの切り替えができず音が出なくなった」とのことで修理を頼まれたものです。

症状を確認すると、distortionのランプはつきますがeffectのランプが点灯しません。そしてスイッチの設定によらず楽器の信号は一切出力されていません。XLR出力も同様に機能していないですね。

  • effectのon/offによらず音が出ない

  • onにしてEQのつまみをいじってもバックグラウンドに乗っているサーッというノイズの音色の変化が感じられない

  • distortionチャンネルでgateもonにしたときにgateランプは楽器からの入力に応じて消える、つまりgateの回路までは信号が届いている

以上から、outputの直前の部品に問題があると考えられます。ぱっと見で破裂したコンデンサや焦げたチップなどはありません。

基板はこんな感じ。左上の部分はclean volumeノブ、colorスイッチ、outputジャックなどが裏表両側から取り付けられていて適当な順番を踏まないとうまく外せないです(が、sansamp bass driver DIほど面倒ではありません)

まずはよくあるプッシュスイッチの寿命を疑いますが、effect側のスイッチの機械的な挙動に異常はないようです。二つのプッシュスイッチは他のMXR製品でもよく使われているDPDTのものですが、トゥルーバイパスを作っているわけではなくon,offはともに入力バッファを通った2系統の信号をIC8を使って電気的な制御で切り替えています。次に怪しいのはこのIC8(HEF4053BT)でしょう。SPDTスイッチが三回路入っているチップです。

今回の故障の原因、effect on/offスイッチのIC8(U8)

これを新しいものに交換すると正常に音が出るようになり、effectのランプも点くようになりました。その他の部位は問題ない模様。若干ガリのあったポットを洗浄して完了です。

この機種は通常のフォンアウトを使ったときに通過するものだけでもeffectスイッチ、colorスイッチ、distortionスイッチ、gateスイッチと複数のスイッチで制御されており信号のルートがちょっと複雑です。回路中信号の通り道の条件分岐は以下のようになります。

今回は一番右のeffectスイッチの故障でした

colorセクションはeffectがonの状態で

  • distortionをonにしたときのクリーンシグナル

  • distortionをoff、colorをonにしたとき

に作用する部分です。筐体デザインを考えてもSansamp Bass Driver DIを意識したであろうEQ特性で、ステージ上で扱いやすい良い音です。今回の個体はノブが小さい初期の個体ですが、ノブが7角形になった後期の個体ではロゴの下に「bass innovations」と印字され、MXRが2010年あたりから作るようになったベースでの使用に焦点を当てたシリーズ(M288 bass octave deluxeやM82 bass envelope filterなど)に含まれる位置付けになっているようです。

ちなみにこのbass innovationsシリーズは公式のデモ動画でDarryl Jones、Tim Lefevbre、Juan Aldereteなどの名手が演奏していて、言葉で説明しすぎないミニマルな構成を含めて個人的に結構好きです。

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