しま

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最近の記事

眼ざめる

すれちがう 花の香りの重さとて 行き交う人の 声もせで まみゆれば ああ いつになく 昨日のことを ただ思う 残りの空に藍染の むなしく響く 今日を載せ 儚い 暗い 人の世に 移りゆくのは 悲しみか 遠いところの 善きことか いまはただひとつ お願いを やすらかならん 死の顔を いつかは光る森の中 ひとひらの葉の上にいて この世の果てを見渡さむ ああ きみはここにありながら 眠れぬ床に留まりて やがて眼ざめる 新しき 赤子となりて 泣き叫ぶ 花が咲くまで 泣き叫ぶ

    • 不安な報せ

      突然の不安な報せ いまはまだわからず ただどうしたらよいのか 昨日までの日々が まったく別の意味に 塗り替えられた どちらを向いていればよいか じっとすべきか動くべきか 決断を迫られて 大きな未来が わたしをどこかに連れて行く

      • 雪の日には

        雪の日には車輪や足音が音をたてず 街々は冷たい吐息に閉ざされてしまった 近くで電柱工事の作業がはじまり 灯りのない夜にロウソクで過ごした 静かな時間に二人きりでいることが とても懐かしく、ぎこちない もらい物のワインを開けたら やっと肩を寄せ合うことができた 窓は結露して大きな滴が じぐざぐな線をえがいて下りた 月は出ていなかった 室内をとても広く感じた 「どう、寒い?」とあなたが聞く 指さきにあなたの手が覆い、 あなたの肌とわたしの肌がふれあった 「大丈夫」と答える。

        • 歌う人よ

          あなたの歌よ いま目ざめよ 人生のその時々の声で 空たかく響かせて 若さや悔いや 期待や不安を 使う言葉のしもべにして いつまでも 音がやまないように 口をとじることなかれ 舌は想いをよびさます舞台 恋は奇想を 苦悩は夢を つかまえやすくしてくれる さあ 豊かな日々が はじまらんとしている 歌よ 歌よ 歌う人よ 口々に言葉を音にかえて

        眼ざめる

          どうしたらいいだろう

          ひかりがまぶしすぎるなら 見るのをやめて しばらく目をつむることもいいだろう こえがおおきすぎるなら 聞くのをやめて しばらく耳をふさいでみることもいいだろう はなしたくないのなら 言うのをやめて しばらく口をとじることもいいだろう いきていたくないのなら 考えるのをやめて しばらく愚かになることもいいだろう しにたくないのなら 独りになることをやめて しばらく助けをもとめることもいいだろう

          どうしたらいいだろう

          おれは破滅した

          市役所から東へ歩き疲れて 鴨川の河川敷に接近した。 陽光のした 飛び石であそぶ大学生たちを眺める。 かつては豪奢な暮らしに憧れたが 陰謀家に貶められて 無用の役職に甘んじることになった。 椅子に腰をおろし、 椅子から腰をあげるばかりの日々。 俗物たちがてんやわんやになって、 くだらないお喋りに興じている。 ああ、おれは破滅した。 女の罠にはめられた。 だがそれはいつからのことだ? どうなろうがもう知らん。 一人くらいはおれを欲しがるさ。 何しろ、いまや部外者という奴だ

          おれは破滅した

          声がきこえる

          声がきこえる 耳をすませばあなたの囁くような声が どこかから 雨上がりに葉から滴り落ちる雫があれば 秋晴れの空が音楽の予兆にみたされる けものたちは長い休息に備えて 色づいた木の実を食べ 豊かな土を掘りかえして森を抜ける 巣作りに追われる親鳥は 水面を描く円い波紋に 時が止まる可能性を見つけられない わたしたちは枯れた木々を拾って 焚き火をした 冷たい空に灰いろの煙が立ち昇り あなたが見つけてくれることを祈る あなたの声に呼応するように わたしたちは歌う 言葉を使

          声がきこえる

          倦怠のゆくえ

          言いたいことを怯えつつ言うは、 肉の欲を肯定したがるは、 ひとりよがりな詩人の末路。 退屈な季節の永きこと! 霧の中でなら正義を貫く。 蝕まれた心に光を与えて、 我が罪と、醜き偏見と、不合理な錯誤とを数え上げ 脳髄を歓喜で満たそうとした。 懐疑、愚弄、享楽の連鎖はとまらず、 目隠しをして描く人物画は、世にも尊い。 見るものはまるで見えないから わたしたちは利息ばかりで本質を探ろうとする。 骸骨の朽ちる変化を見つめている 見捨てられた幼な子たちに 白い壁を昇れと命令し、悦

          倦怠のゆくえ

          海ぞいの街をみおろすふたつの影

          こんなにも深い眠りをあなたは信じたのか 潮の匂いの混じった風をからだで受けて 海ぞいの街をみおろすふたつの影 両足をぶらぶらと宙に遊ばせ 紙飛行機を遠くに飛ばすには至らない 弱々しい風が いま止んだら きっと昨日の午後に あなたと畳のうえでしたことを だれかに言いたくなってしまう わたしはあなたの真剣な眼差しと 脇腹の傷痕 そしてわたしの浴衣に付いた小さな鈴が ちろりん、ちろりん、ちろりん、 と鳴りつづけていたことを覚えている そんな予感がいとおしくなるのも 八月の

          海ぞいの街をみおろすふたつの影

          胸に載った女の腕

          魘されて夢から醒めた夏の明け方 胸に載った女のうでを持ちあげたら そこにほくろがあるのを男はみつけた 小さなからだはまだ寝息をたてているから 起こさないように気をつけて それをゆっくり舐めてみたのだ 昨夜の女の匂いがしたところに 舌さきをまるくうごかしていると まるで軟体動物のように 皮膚が波打ち、ひろがるのだった 白濁した鈍い眠気におかされながら 男は目をつむり 触覚だけをたよりにして 女の本心をたしかめているみたいだ それはおかしくも、かなしい行為だ べつの生きも

          胸に載った女の腕

          喜び

          空から落ちてくる一滴の雨粒に打たれるように ふいに佳いことが起きるのは非常にうれしい だが努力してやっと手にした勝利ほど 何物にも代えがたい喜びを 与えてくれるものはないだろう たとえそれが他の誰にも 羨ましいと思われないとしても それを獲得するまでに捧げた 時間や苦労や涙や汗が 喜びを黄金色にへと変えてゆくのだ

          わたしだけが知っている楽しみ

          はじめてその人の名前を呼んで 恥ずかしくて目をそらした日 呼び名が変わって いっしょに過ごすことがふえた日 もういちど呼び名が変わって 真剣におたがいの未来を話せるようになった日 それから呼び名はずっと変わらない 変わらないようにしている日がつづいている わたしはつづけられている このことを話す日は、たぶん、来ない 来てほしくない これは わたしだけが知っている楽しみだから

          わたしだけが知っている楽しみ

          せめて明日の朝までは

          夜の目にはつめたい蒼を 夏の雲にはあわい月のひかりを添えたい いまだけは 西の空から帰ってきた金いろの鳥に あの世からのたよりを訊ねたら ひろげた翼のいろが褪せた 満たされない想いがふいに消えるなら 全生涯はひと息に終わってくれてもいい 忘れられない甘い匂いが恋しくて いとしい背中に爪をたてた いつまでもつづく叫び声がかなしくても 傷つけずにはいられなかった この苦しみはわたしも経験した と詩人たちは言葉にする だが失意の同族は歴史上にあまたいるとしても かれらはわた

          せめて明日の朝までは

          赤いろの痛み、女の手つき

          赤いろが鈍い痛みをともなって揺れている 一日の終わりになると喪われた感覚が何であったかを 疲弊した人を見おろす鳥たちの啼き声が ぼくに思い出させるのだった その声はぼくのやわらかな眼球の奥まで響いてくる 凶暴さを隠そうとはしない 黒い翼の持ち主は もっとも美味な部分をさがしあててから 狙った獲物に死の匂いがしはじめるのを待って 鋭い嘴で啄んでくる 巨大なまるい輪郭が西の山際にきえるとき この惑星の半分は闇に覆われる 天空にはもうひとつの白い球体があらわれる 世界が切

          赤いろの痛み、女の手つき

          無限のひかり

          街灯のない県道は 真っ暗で何も見えないから 大声を上げて走って帰った 外に出るのが怖かった 明かりを消したら 夜空に星々がきらめいて 無限のひかりが ぼくを射るように落ちてきた あたたかな、金いろをした、鋭いひかりを ずるがしこい猿のような素早さで ぼくは拾い集めよう 隕石の破片が燃え尽きてしまわず ぼくをめがけて落ちてきたのだ だれかに盗られないように しっかりと手に持っておきたい

          無限のひかり

          首のながい黄色い猿

          あらゆるものを吹き飛ばしてゆく嵐がきて 巨きな木々や動物たちまで空を舞い 村の川が氾濫して 人家を汚水で濡らしたあの夜、 祖母がぼくだけに話してくれた。 「やがて国境を壊す首のながい猿が あらわれるだろう。 それはビルよりも巨大な、 恰幅のよい、 禍々しい目付きをした、 黄色い猿だ。 だれも信じないだろうがね。 言葉の詰まった人間の脳が大好物で、 頭を喰いちぎってすぐに捨てるから、 街は夕焼けのいろに染まってしまう。 顔のない人間があふれてしまう。 この国の東からあらわ

          首のながい黄色い猿