見出し画像

8月32日(7)

 お母さんが僕の背中を勢いよくたたいた。
「さ、早く準備をして。今日は朝早く出て、A山に行わよ」
 隣の県にそびえたつA山は僕が小学校に入学したときに、お父さんとお母さんが連れて行ってくれた山だ。道が曲がりくねっていて車酔いしそうだけど、山頂付近に草原が開けていて、とてもきれいな場所だ。
「わかった。すぐ準備する」
 僕が準備を終わって部屋を出るときに、ユニットバスの洗面台にテレビのリモコンがあることに気づいた。
「お母さん、あんな場所にリモコンがあるよ」
「あれ? どうしてあんなところに置いたのかしら。朝起きてすぐシャワーを浴びちゃったから、寝ぼけてたのかなあ」
 お母さんはそう言ったけど、なんとなく空々しい言い訳のような気がした。もしかして僕にテレビを見せたくないんじゃ……。
「行くわよ」
 お母さんは半ば強引に僕の手を引っ張った。
「フロントで精算してるから、あなたは早く車に乗ってなさい」
 お母さんはそう言って僕に車のキーを渡した。それから追い立てるように、僕を車に乗せた。
 しばらくしてお母さんは戻ってきた。
「ねえ、お母さ……」
 僕が訊ねようとしたら、お母さんは僕を押しとどめた。
「さあ、目的地までちょっと遠いから、急いで行くわよ」

(続く)

さてここで問題です。
主人公(僕)の身に降りかかる不可解な現象。
いったい、彼とお母さんはどうなってしまったのでしょうか?
「意味が解ると怖い話」のように、まったりと考えていただければなと思います。
(実はアイデア募集だったりして(≧▽≦))

小説が面白いと思ったら、スキしてもらえれば嬉しいです。 講談社から「虫とりのうた」、「赤い蟷螂」、「幼虫旅館」が出版されているので、もしよろしければ! (怖い話です)