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1度目の起業失敗から、AI領域で会社を立ち上げた理由

はじめに

はじめまして、FastLabel株式会社の共同創業者の鈴木健史です。
先日資金調達したことを発表致しました。

FastLabelでは、AIへ学習させるデータ(教師データ)の作成を支援するプラットフォームを提供しています。
今回このnoteでは創業経緯について書きたいと思います!
前半は個人的な話、後半は市場機会や事業の方向性の話をします!
以下のキーワードに少しでも興味ある方、ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

AI、機械学習、教師データ、アノテーション、Deep Learning、SaaS

私の経歴ですが、大学、大学院で機械学習のアルゴリズムの研究をして、新卒でワークスアプリケーションズへ入社。ソフトウェアエンジニアとして働き、その後AIプロジェクトをいくつか経験しました。

いつか自分が考えて作ったプロダクトを世の中の人に使ってもらいたい、社会へインパクトを与える仕事をしたいという思いから漠然と起業を考えて幅広く仕事をしてきました。
ワークスアプリケーションズで5年ほどたち次のキャリアを考えていた頃、大学の友人から起業に誘われ、タイミング的には30歳という年で起業(共同創業)しました。

1度目の起業〜順調な滑り出し

アイデアもない段階で、アイデア出しから始めました。
丁度日本でUber Eatsが流行り始めたころでした。一方、フードデリバリーの法人向け領域ではまだテクノロジーを十分に活用した企業がなく、何かチャンスがありそうだと思いこの領域に絞ってアイデアを検討しました。

結果、「AIが選んだあなたお好みのランチを毎日オフィスフロアまでお届け」というコンセプトで、オフィスで働くビジネスパーソンをターゲットにしたサブスクリプション形式のフードデリバリーサービスに決定しました。

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↑は当時のLPです。少し恥ずかしいと思う状態で出すのがスタートアップの鉄則なので、このLPでリリースしました(笑)
リーンスタートアップ的に開発を進め、必要最低限のアプリをリリース。結果、毎日使ってくれる熱狂的なユーザも獲得でき「なくなったら困る」というフィードバックももらえ、これはいけるぞという自信がつきました。

そして、事業を加速すべく資金調達を見越してスタートアップのアクセラレータプログラムへ応募し見事採択されました!
ここまで特段大きな問題はなく一見順調な滑り出しでした。

事業撤退

事業も教科書的にすすめ、初めの壁は乗り越えた感覚でしたが、さまざまな面で事業が思うように進まなくなりました。

・アーリアダプター以外のユーザ層が取れない

・法人営業、導入が進まない

・リアルなオペレーションが複雑かつ大変
など

さらには、アクセラレーターのメンターの方からも「本当にこれがやりたいのか?やり切れる自信はあるのか?」というフィードバックをもらい、徐々に事業に対する自分自身の熱意に疑問を持つようになりました。
CEOも同じく悩んでおり、2人で何度も話し合い2ヶ月くらい考えた結果、1年続けた事業を閉じることを決めました。
事業撤退して少し経過してから、「自分が熱量を持ってできる事業は何か」をゼロから考えるため、共同創業した会社を辞め独立することに決めました。

AIの教師データ領域へ賭ける

「熱量を持てる事業」とは何か?
過去やってきたことを振り返る中で、私自身がAI開発で実際に経験した苦痛、教師データをひたすら作っていた作業を思い出しました
以下は、教師データを作成している動画です。

この動画のように「これは車、これは猫、これは飛行機」というようにひたすらAIへ教えるデータをつくる作業をしていきます。この作業をアノテーションと呼びます。

私のプロジェクトでは、「この伝票は配賦仕訳です」というように会計伝票を見て、ひたすらタグをつける作業を1ヶ月かけて行いました。

他にも3つほどプロジェクトを経験しましたが、この作業にコリゴリになり、しばらくAIとは別の技術領域に逃げていた時期がありました。

他の会社のAI開発者にもヒアリングしたところ、このプロセスは厄介であり自分と同じような課題を抱えていることがわかりました。この事業領域であれば、解決すべき、解決したいと思える課題があり、自分自身の集大成をぶつけることができる、そんな確信を得ました

共同創業者 上田との出会い

前回の起業経験からも仲間は重要だと感じていましたし、創業チームがある方が成功確率が上がるという情報もあります。
共同創業者を探そうかなというタイミングで、たまたまワークスアプリケーションズで後輩だった上田と話す機会がありました。ワークスアプリケーションズ時代、約900名新卒採用した年があったのですが、その研修を断トツのトップで卒業した優秀な奴でした。
丁度、上田はAIベンチャーで1年ほど実務を経験していて、この領域に同じような課題感を持っていました。今考えると奇跡ですが、すぐに意気投合し共同創業に至りました。

初めての資金調達へ

かなり途中経過を端折りますが、資金調達までの道のりはまた別の機会で書きたいと思います。
いろいろ困難はありましたが、創業してから、1年経過し、今回初の資金調達を実施しました。
それまで、アプリコットベンチャーズのFLAP、進藤さん率いるAIアクセラレーターなどの起業家支援プログラムへ参加しました。
そして、インキュベイトファンド主催のキャンプへ応募し、473社エントリーした中の15社へ選んでいただき決勝プレゼンへ参加することができました!


ここで投資家のジェネシア・ベンチャーズ 田島さんと運命の出会いをはたし、無事に結ばれることになりました。

AI開発の大きな変化〜アルゴリズムからデータへ

前置き(実は本筋?)が、長くなりましたがここからは個人的な話とは別に事業領域についてのお話をしたいと思います!長くてすみません!この領域めちゃくちゃ面白いので専門用語出てきますがお付き合い下さい。

AI市場は急拡大

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Grand View Researchによると、2020年から2027年にかけて世界のAI市場は約10倍伸びると予想しています。それに伴い、教師データの市場も急拡大が予想されます。

今AI開発の現場で起きている大きな変化

AIはDeep Learningなどのアルゴリズムに教師データを与え、学習させることで開発されます。
つまり、こんな感じです。

AI=アルゴリズム+教師データ

Deep Learningが登場したばかりの時点では、各企業はビジネスユースケース(文書分類、OCRなど)に合わせてDeep Learningのアルゴリズムを拡張、実装していく必要がありました。
しかし、ここ最近その前提が大きく変わり始めています。
様々なDeep LearningのアルゴリズムがGitHub上(ソースコードの共有サイト)に徐々に公開されるようになり、幅広いユースケースをカバーするようになってきました。
それにより、多くの開発現場ではアルゴリズムをゼロから開発するというよりは、公開されている最先端のアルゴリズムから適したものを選び、それを利用して開発を進めるようになりました。

一方で、アノテーション(教師データを作る作業)は、未だにアナログに行われているのが現状です。

システム基盤が未整備
Excel、無料のアノテーションツール、Google Drive、メールなどのツールを駆使して教師データ作成プロジェクトを実施
専門の人材がいない
事務スタッフの空き時間に作業をお願する、アルバイトを雇う、クラウドソーシングで外注するなどで対応

このように、アルゴリズムが利用しやすくなった反面、アノテーションはいまだに多くの企業でシステム基盤がなく、アノテーション専門人材が不在なため、高品質な教師データを大量に作れなくAIの実用化が困難な状況です。
事実、データ要因でAIの実用化が進まないという調査もあります。

海外で起きていること

AI開発の最先端である海外のAI開発事情について少し紹介します。
テスラでは、自動運転AIの開発を、エンジニア300人に対して、教師データ作成部隊1000人という体制で進めようとしてます。
現状、エンジニア200人、教師データ作成部隊500人から上述のような開発体制へ進めるとのことです。

また、海外では上述したようなAI開発の変化を受けて、アルゴリズムを得意とするエンジニアの採用より、データエンジニア(どうアノテーションするか、どうデータを管理するかを考え、システムを構築する人材)の採用により力を入れるようになってます。

そして、この領域では複数の有望なスタートアップが存在し、1社はすでにユニコーン(時価総額1000億円以上)になっています。

AI開発の未来〜アノテーションとは何か

ここでは、アノテーションとは詰まるところ何なのか、どういう世界を目指しているか、を紹介したいと思います。
この事業をやっていると、以下のような質問がよくきます。
「アノテーションって結局単純労働のようなものだから、最終的には全て自動化されますよね?」
我々の答えはNOです。
我々は、むしろ企業がAIを開発する上で究極的に残るプロセスはアノテーションだけになると考えています。そして、このアノテーションは単純労働ではないです。

アノテーションは次世代のコーディング技術

我々はアノテーションをシステム開発におけるコーディング技術のようなものだと考えています。
AI開発とシステム開発のサイクルを比較した図が以下です。

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システム開発はコーディングして、テストしてバグを見つけてコードを修正すると言うプロセスを繰り返すことで、徐々に意図したシステムが出来上がってきます。
一方、AI開発は、AIへ教える行為(アノテーション)をして、どこでAIが間違えるかをチェックして、AIが間違ったところを教えるというプロセスを繰り返すことで精度の高いAIが徐々に出来上がってきます。
このように、システム開発のコーディングに相当する部分がアノテーションだと考えています。
実際、「Building the software 2.0 Stack」という講演でテスラのAIヘッドであるAndrej Karpathy氏が以下のように語っています。

They are literally programming the autopilot
彼ら(アノテーションする人)が自動運転のプラグラミングをしているんだ

あらゆる分野の専門家がAIを開発できる基盤を

アノテーションがシステムにおけるコーディング技術だとすると、そのための開発基盤とアノテーションができる人材がいればAI開発ができるということになります。
我々がつくるのは、まさにそんな開発基盤です。
例えば、今はある少数の医者しか判断できないような症例も、その医者の方々がアノテーションしていくだけでその医者の目を代替するAIが簡単にでき、その恩恵を誰でも簡単にうけられるようになる、そんな世界です。
これはまさに、人の知をマシーンに乗せて、多くの人に配れる、印刷技術、インターネットに次ぐ大きな発明になると考えてます。
そんなことが実現できたら、SFみたいな世界が本当にくると思いませんか?!
もちろん、AIにとってアルゴリズムは非常に重要なことは変わらないですが、企業がAIを開発する上では、システム開発におけるデータベースやサーバーのようなものになると考えています。

最後に

人材不足などの背景から日本ではますますAIの活用が進むと考えられます。
しかし、AIを開発し、ビジネスへ適用する上でまだまだインフラが整ってないのが現状です。
FastLabelのミッションは、これから起きる、今まさに起きているAI革命のインフラになることです。
この「AI革命のインフラになる」というミッションに共感してくれる仲間を募集してます。

採用ページはこちらです。
ワクワクする未来を一緒に作っていきましょう!
最後まで読んでいただきありがとうございます。具体的に何しているの?というところは近日上田のnoteが公開される予定です!お楽しみに!

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